今野敏の新シリーズ第1弾「エムエス 継続捜査ゼミ」あらすじとネタバレ感想まとめ

警察小説が得意な今野敏さんの新シリーズが、女子大を舞台とした「継続捜査ゼミ」です。テレビシリーズにもなった人気の「安積班」シリーズをもっともっと読みたいという気持ちを抑えつつ手に取ってみたら、あっという間に引き込まれて読了していました。

警察とは違うアプローチで未解決事件に挑む5人の女子大生と、元刑事の教授、彼らの周囲を取り巻く人々、全部が魅力的でおすすめです。

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「継続捜査ゼミ」書籍概要

コールドケース(未解決事件)を取り上げるという警察小説ながら、メインの登場人物は女子大生5人と彼女らの所属するゼミの教授。現役の警察官も交えながら、ゼミの演習として継続捜査となった事案に挑む長編小説。

  • 継続捜査ゼミ(2016年10月/講談社)
  • 継続捜査ゼミ(2017年11月/講談社ノベルス)
  • 継続捜査ゼミ(2018年10月/講談社文庫)

 

元刑事で警察学校の校長を務めていた小早川一郎は、幼馴染の学長に誘われ、退官を機に三宿女子大で教鞭をとることになった。准教授からスタートし今年から教授になり、ゼミも持つことになった。実際の捜査感覚を経験するのが目的というゼミの名前は「刑事政策演習ゼミ」、別名「継続捜査ゼミ」だ。

警察学校時代の生徒で目黒署の安斎の協力を得つつ、小早川はある未解決事件をゼミで取り上げることにした。

登場人物

【継続捜査ゼミメンバー】

  • 小早川一郎:継続捜査ゼミの教授。60代。元警察OBで「伝説の刑事」らしい。警察に顔が利き、ゼミ生を連れて事件関係者と面談することもある。
  • 安達蘭子:長身、ショートカット。法律が趣味というだけあり詳しい。バレーボール愛好会に入っている。
  • 加藤梓:歴史おたく。ゼミ生たちのまとめ役。
  • 瀬戸麻由美:世界の謎おたく。セクシー系で体の線が分かりやすい服装を好む。
  • 戸田蓮:控えめな性格。幼い頃病弱だったため、薬についての知識が豊富。
  • 西野楓:合気道と薙刀を嗜む武道家。

【大学関係者】

  • 竹芝教授:日本文学の教授。穏やかな性格で、学問一筋の誠実で天然な人物。

【警察関係者】

  • 安斎幸助:目黒署刑事総務係。独身。小早川の依頼で、未解決事件の資料を当時の新聞記事などといった差しさわりのない範囲で提供している。女子大に来たいのか、オブザーバーとしてしょっちゅうゼミに顔を出している。
  • 丸山達夫:警視庁特命捜査対策室(未解決事件の専門部署)の刑事。今回の未解決事件を担当している。ゼミの協力者。
  • 保科孝:特命捜査対策室の係長。小早川の後輩でゼミの協力者。

未解決事件について

15年前に起きた強盗殺人事件。今のように防犯カメラには頼れない頃の事件です。

  • 被害者は、閑静な住宅街の一軒家に住む老夫婦
  • 犯行時間は午後3~4時
  • 空き巣狙いで忍び込んだ犯人だが、老夫婦が在宅していて見つかったのに動転し、居直り強盗となったとされている。
  • まず台所の包丁で夫を刺し、物音を聞いて2階から降りてきた妻も襲ったと見られている。
  • 強盗は凶器をその場に残し、何も取らずに逃げた。
  • 5時頃、老夫婦宅を訪問してきた当時中学生の孫によって通報された。
  • 周囲の聞き込みを行っているが、逃走した犯人の目撃情報が乏しい。

当時の捜査の見立ては、単純な強盗殺人事件です。にも関わらず未解決となった理由を学生たちは考え始め、ゼミの時間を超えてこの事件に集中していきます。

実際の未解決事件を扱うものの、あくまで「ゼミの演習」なので事件を解決できなくても構わないと小早川は考えていますが、ゼミ生5人は警察とは違う視点で事件をとらえ、矛盾点や疑問点などを発言していきます。

ゼミの時間だけでは足りず、今後小早川ゼミの恒例となる飲み会へと場は発展していく土台ができました。

メキシコ料理屋が会場とはいかにも楽しそうな雰囲気ですし、安斎もうきうきしながら同席します。大丈夫なんでしょうか、この人と少し心配になるくらいです。

大学内の事件1

飲み会では、蘭子が持ち込んだバレーボール愛好会での出来事をとりあげることになりました。

更衣室でシャワーを浴びている間、バレーボールシューズが片方だけ無くなるという事件が3件起きているというのです。バスケットボールのサークルでも2件シューズが片方無くなる事件が起きているようだと連も続けます。

概要を聞き、翌日実際に更衣室周辺を捜査する小早川ゼミ。更衣室周辺をうろついていても不審に思われない男性は清掃業者の人、というゼミ生の意見はこの捜査によって崩れます。

3つの事件に共通することはなにか、小早川のヒントで無事事件は解決しました。またバスケットボールサークルの事件についても、「起きたのは2件であること、バレーとバスケの違いは付加価値」という小早川の推理によって、一応の解決を見ます。

大学内の事件2

小早川は竹芝教授から相談を受けます。小早川を見習って助言どおりゼミ後の飲み会を開いたところ、翌日におかしな写真を送り付けられて戸惑っているとのこと。竹芝のゼミ生の一人と竹芝がラブホテルから出てくる写真でした。全く身に覚えがない写真で、送られてきた後も恐喝などは一切されておらず、誰がどんな意図でこの写真を送って来たのか解明してほしいというものでした。

警察と同様、守秘義務を課している小早川のゼミ生5人に問題の写真を見せて相談したところ、UFOやUMAが大好きな謎おたくの麻由美が、即座に合成写真と見破りました。

そこから推理を重ねて、犯人に目星をつけていきます。動機や犯行目的は推理通りとはいかなかったものの、無事に犯人は見つかり一件落着。

未解決事件へ

再びゼミ生の意識は15年前の未解決事件へと向かいます。一見単純な事件に思われるものの、犯人が逮捕されなかったのは、警察の描いた犯人像が間違っていたからではないだろうか。

「空き巣に入った先の住人に見つかったのに動揺して包丁で刺した」にしては、あまりにも犯人の行動が冷静に思える、という印象を資料を読みゼミでの論議を通して5人は得ました。

警察官である保科・丸山の協力の元、ゼミ生たちは当時の事件関係者たちに直接話を聞くことになりました。

  • 被害者の孫で第一発見者の少年
  • 通報を受けて真っ先に現場に駆けつけた警察官
  • 被害者宅の両隣の住人

一通り関係者からの話を聞き終わった頃、ゼミ生を見て小早川は言います。「それでは、事件についてのまとめをしましょうか」。ゼミ生たちが結論を出した(=犯人が判った)ということでした。

犯人は

ゼミで結論した犯人が実際の犯人かどうかは小早川は問題にしていません。あくまで「警察捜査を経験すること」が目的であって、犯人を見つけることはゼミの本質ではないからです。

ですが後日、事件担当の丸山から、ゼミで指摘された人物が犯行を自白したと連絡を受けました。

 

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基本シリアスですが全然堅苦しくなく、終始明るい雰囲気に満ちています。女子大パワーでしょうか。

未解決事件を解決する、という警察小説の王道をいきながらも主役は女子大のゼミ。時効の撤廃や新法の施行、大学を取り巻く環境や問題点などをテンポよく取り上げつつ、小さな事件を通して成長していく女子大生5人が、最後は警察がてこずった未解決事件を解決するというスカッと鮮やかなストーリでした。

結果的に警察の鼻を明かすことになったにも関わらず良好な関係を築いているのも、小早川の人となりとゼミ生5人の明るさによるものでしょう。

一人一人の性格や得意分野を把握し、上手にゼミを回していく小早川のファシリテーターぶりも見どころの一つでした。良い先生です。こういう先生に出逢えたら、大学生活も充実するでしょうね。

まだシリーズとしては始まったばかりで2019年の春時点で発行は2冊ですが、これからも楽しみなシリーズです。