今野敏の新シリーズ第2弾「エムエス 継続捜査ゼミ2」あらすじとネタバレ感想まとめ

「継続捜査ゼミ2」は冤罪をテーマにしています。ゼミ内で冤罪を扱おうと決めた矢先、小早川教授自身が冤罪事件に巻き込まれてしまうのです。取り調べを行う剛腕刑事に一歩も引かない小早川の姿を見ていると、現役刑事時代の話も読みたくなってきます。

今作のあらすじと感想をまとめました。

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「エムエス 継続捜査ゼミ2」書籍概要

大学のゼミの演習でコールドケース(未解決事件)を取り上げる元警察官・小早川一郎教授をはじめとした5人の女子大生たちの活躍を描く長編小説。

  • エムエス 継続捜査ゼミ2(2018年10月/講談社)

元刑事で警察学校校長を務めていた小早川一郎の現在の職業は、三宿女子大の教授だ。小早川の初めてのゼミ生となる5人の女子大生たちと冤罪を扱った事件を取り上げることになった。ちょうどその頃、三宿女子大は学園祭「三女祭」の準備に追われていた。ミスコンも開催されるが、毎年実行側と反対派が衝突しているという。

登場人物

【継続捜査ゼミメンバー】

  • 小早川一郎:継続捜査ゼミの教授。60代。元警察OBで「伝説の刑事」らしい。警察に顔が利き、ゼミ生を連れて事件関係者と面談することもある。
  • 安達蘭子:長身、ショートカット。法律が趣味というだけあり詳しい。バレーボール愛好会に入っている。
  • 加藤梓:歴史おたく。ゼミ生たちのまとめ役。
  • 瀬戸麻由美:世界の謎おたく。セクシー系で体の線が分かりやすい服装を好む。
  • 戸田蓮:控えめな性格。幼い頃病弱だったため、薬についての知識が豊富。
  • 西野楓:合気道と薙刀を嗜む武道家。

【大学関係者】

  • 竹芝教授:日本文学の教授。穏やかな性格で、学問一筋の誠実で天然な人物。
  • 高樹 晶:3年生。ミスコン反対派のリーダーで小早川に議論をふっかける。
  • 谷原沙也香:2年生。女子アナ志望のミスコン優勝候補。ストーカーに悩んでいる。
  • 喜多野行彦:学務部学生課の職員。

【警察関係者】

  • 安斎幸助:目黒署刑事総務係。小早川の依頼で未解決事件の資料を当時の新聞記事などといった差しさわりのない範囲で提供している。女子大に来たいのか、オブザーバーとしてしょっちゅうゼミに顔を出している。
  • 保科孝:警視庁特命捜査対策室の第一係係長。前作にも登場する小早川ゼミの協力者。
  • 丸山達夫:警視庁特命捜査対策室第三係所属。同上。
  • 大滝係長:強行犯係の係長。
  • 菅井毅彦:地域課の巡査部長。刑事志望。

傷害事件と冤罪

小早川の授業でミスコン反対のビラを配っている学生がいた。注意をして退室を促したが、学生が残していったビラに目を止めた小早川に対し、発言をした人物がいた。反対派リーダーの高樹晶だった。授業を削っての議論を避けた小早川は、授業後の研究室に高樹を招き「性の商品化」について意見を交わしあった。別の日にも高樹は研究室へとやって来て自分の考えを小早川にぶつける。

高樹の退室後、ゼミの準備のためネットで検索している小早川の耳にサイレンの音が聞こえてきた。救急車のサイレンでどんどん接近していくると最も音が大きくなったところで止まった。刑事の習性が抜けないと自負しながら研修室を飛び出し教授館の外に出たところで蘭子と会う。高樹が怪我をしたらしく救急隊員がストレッチャーに彼女をのせて運んでいる。来ていた地域課の警察官・菅井の態度があまりにも程度が低く小早川と少々揉めたが、ゼミの開始時間が迫っていたため小早川はその旨を告げて現場を離れた。

ゼミにやって来た麻由美たちによると、高樹は頭部を殴られたらしいがそれほど深刻な容態には思えなかったという。ゼミの最中、安斎が強行犯の係長・大滝を伴ってやってきた。高樹が殴られる前に小早川の研究室にいたことを確認すると、傷害の容疑で目黒署へ同行しろという。任意同行なら断れるはずだというゼミ生に対し、一緒にいた菅井が公務執行妨害で逮捕すればいいという。現場で小早川に口ごたえされたことを恨んで大滝に小早川犯人説を進言し、菅井を可愛がり刑事に引き立てたいと考えている大滝は、菅井の実績を作るため小早川を犯人だと決めつけていた。

正論(法律の知識)で捜査の邪魔をする蘭子も公務執行妨害にできると脅してくる大滝らに対し、冤罪はこうして作られるのかと実感しつつも教え子を守るため、小早川は任意同行を受け入れた。

目黒署の取調室ではベテラン刑事の大滝が心理的なゆさぶりをかけてくるが、元刑事の小早川は警察の手法を熟知しているので言質をとらせるような返答はしない。一度自白をすれば起訴は免れないし、起訴された場合の有罪率は99%を超えることを知っているからだった。

小早川が高樹と二人きりになり男女の関係を迫ったが拒否され、大学に関係の強要を知られることを恐れ高樹の殺害をもくろんだ殺人未遂事件、という筋書きを大滝は小早川に当てはめようとするが小早川は断固として認めることはなく、本当に容疑者だと思うのなら逮捕すればいいと挑戦的に言い放つ。任意同行では多少の無理をするが、逮捕には二の足を踏むことを知ってのことだ。警察OBとはいえ一般人に挑発と取れるような態度をされ、大滝も意固地になった。何としても小早川を殺人未遂で逮捕しようと動くだろう。ミスコン反対運動について調べた方がいいという小早川の言葉に耳を貸すことすらしない。大滝VS小早川の構図が出来上がってしまった。

事情聴取という名の取り調べ中、安斎の連絡を受けて警視庁特命捜査第一係の保科と三係の丸山が乱入してきた。継続捜査専門だがこの事件を担当するといい、渋る大滝を階級と年齢でねじ伏せ小早川を取調室から連れ出すと、安斎とゼミ生5人を入れた総勢9名での会議を居酒屋で開催することにした。

捜査開始

大滝のように警察官の熱心さが冤罪を生むこともあると小早川はゼミ生たちに説明した。保科は、今回の傷害事件を手掛けるつもりだが人手が足りないのでと小早川ゼミに協力を要請する。また大滝に付け入る隙を与えることになるため、被害者の高樹とは接触しないよう小早川に頼んだ。

だが退院した高樹の見舞いに行った蘭子から、彼女が小早川に会いたがっていると連絡を受け、蘭子と2人で自宅に来てもらうことにした。

【高樹晶の話】

  • 教授館を出て大学構内を横断しているメインストリートへ向かう近道(人通りの少ない細い道)を使おうとした。
  • 高樹が近道を使うことは友人・ミスコン反対運動の仲間ならみんな知っている。
  • 後ろから突然殴られたため、犯人は見ていない。
  • 小早川が犯人というのはありえないと警察には言った。2基あるエレベーターのうち、乗る方とは別の1基は下っていく途中だったため、追いかけようとしても時間的に近道で襲撃できない。階段でも余計間に合わないとのこと。
  • 入院中に学務部の喜多野がやって来て、反対運動を自粛するよう促された(捜査中なので目立つ運動は辞めてほしいと言われた)。

警視庁に事件を取り上げられたと感じた大滝の態度がますます頑なになり、小早川をまるで被疑者のように扱っているが、元々優秀な刑事なのできちんと捜査も行っていた。小早川があやしいと感じたメディアソサエティ(ミスコン主催の実行部隊で、大学の実行委員会が依頼した外部団体)はシロだったという。ビジネスライクなサークルなので、高樹に対して思うところなどないらしい。このことはメディアソサエティに探りを入れるためにゼミ生たちが開いた合コンでも明らかになった。

だがミスコンの優勝候補・谷原沙也香がストーカー被害に遭っているらしいという新たな話も聞いてきた。ストーカーはミスコン中止を恐れて反対派の高樹を襲ったのではないか。小早川の言葉を受け、保科たちもストーカーについて調べることになった。

小早川が犯人でないことは小早川自身が知っている、メディアソサエティも無関係だった。何かを見逃しているとゼミ生たちは「何か」を探すことにした。

ようやくそれらを掴んだ小早川ゼミは、犯人をあぶり出すため学長と高樹に協力を仰ぎ、ミスコン中止の可能性を示唆する情報を広めた。

犯人は

小早川ゼミの罠にまんまと引っ掛かり、再びミスコン反対のビラ配りを始めた高樹を襲撃しようと近づいたところで周囲を囲まれました。往生際が悪く禄でもない人間でした。

 

今回の傷害事件と並行して、ゼミでも裁判で無罪を勝ち取った冤罪事件を取り上げ検証していますが、それも含めると長くなるのでその部分は割愛しています。こちらの事件も実に胸糞が悪くなる事件です。冤罪がというより無罪を勝ち取った男の人間性が酷すぎて、という意味でです。

こんな男でも優秀な弁護士がつけば無罪になるのだなと思うと司法制度に対し不信感を抱いてしまいそうです。最後は落ち着くところに落ち着いたようで安心しました。

 

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