真梨幸子『カウントダウン』あらすじとネタバレ感想

真梨幸子さんの「カウントダウン」のあらすじと感想をまとめました。

イヤミス(読後が嫌な気分になるミステリー)の書き手として有名な方とのことで、今回は比較的軽そうなものを選んで読んでみました。どのくらい読後感にも屋靄が残るのか楽しみです。

「カウントダウン」書籍概要

余命、半年―。海老名亜希子は「お掃除コンシェルジュ」として活躍する人気エッセイスト、五十歳独身。歩道橋から落ちて救急車で運ばれ、その時の検査がきつかけで癌が見つかった。潔く“死”を受け入れた亜希子は、“有終の美”を飾るべく、梅屋百貨店の外商・薬王寺涼子とともに“終活”に勤しむ。夫を略奪した妹との決着や、“汚部屋”の処分など、過去から突きつけられる数々の課題に直面する。亜希子は“無事に臨終”を迎えることができるのか!? 「BOOK」データベースより

  • カウントダウン(2017年2月/宝島社)

あらすじ

歩道橋から落ちた亜希子は、落ちた衝撃でか前後の記憶を失い搬送先の病院での検査をきっかけに喉に癌が見つかった。根治が難しい未分化癌で何もしなければ余命半年、治療をしても1年という事実を突きつけられ、癌と闘わないことを決め外商の薬王寺涼子の協力のもと終活を開始した。

まずは離婚した夫と暮らしていた三鷹のマンションの片づけから。ひょんなことから「お掃除コンシェルジェ」として本を出しテレビにも出演してと活躍している亜希子だが、だれも住んでいないマンションは汚部屋という言葉がぴったりの空間に成り果てていた。

元夫が絡むといつも亜希子は不運しかなかった。結婚を機に購入したマンションは、亜希子が最上階を希望したのに夫の意見で5階だった。住み始めて間もなく隣に次々とマンションが建ち始めて日が遮られ、日照のほとんどを奪われた。夫との仲が険悪になるにつれ部屋にゴミが増え始め、最終的に離婚した。その頃の話をブログに綴っていたところ評判になり編集者の目に留まり本にまとめることができた。本は大ヒットし亜希子の年収は7千万を超えた。離婚をきっかけに幸運を呼び寄せたのだ。今は「お掃除コンシェルジェ」として六本木に事務所、南青山に住居を構えるまでになった。

亜希子は外商の薬王寺以外には癌のことを秘密にしていた。実家の家族にも内緒だ。なぜならば元夫は亜希子の妹の美奈子と不倫していて、離婚後に美奈子と再婚し子どもまでもうけて亜希子の実家で幸せに暮らしているからだ。味方だと思っていた母親も初孫をきっかけに美奈子の味方になってしまった。亜希子が死んで喜ぶ人間たちに、まもなく自分が死ぬことは教えたくなかった。

一人で汚部屋の片づけをしている最中、亜希子は幼稚園の頃仲が良かった女の子の名前が書いてあるレコードを見つけた。つてを頼って消息を辿ったところ、突然引っ越しをしたと思っていたその子と家族は、借金を抱えて逃げる準備をしていたのだが亜希子のせいで夜逃げのタイミングが早まり、着の身着のまま逃げ出さざるを得なかったことが分かる。2人が通っていた習字教室の先生は女の子と連絡を取り合っていたものの、ここ最近は消息が分からなくなっていると話した。

だんだんと病状が見た目にも現れてくる亜希子のために、薬王寺は食べやすいおやつを用意するなど気配りが行き届いている。彼女との会話の中で、亜希子は大学卒業後に就職した印刷会社の同期・平河智子がイギリス人と結婚し人気のカリスマブロガーになっていることを知る。亜希子が懇意にしている出版社から近々本も出すらしい。

平河はブログ内で印刷会社員時代のことも書き綴っており、明らかに亜希子と分かる人物のことを仕事ができない、無能、化粧が濃いケバケバチームのリーダー格などと評していた。

亜希子は、妹の美奈子のブログをチェックしていた。彼女は自分の家族のことをブログ内で公開しているからだ。そして美奈子の短編が有名な小説の賞をとったことを知る。本として出版するため現在執筆中らしく、タイトルは「もったいないおばさん」。昔から美奈子は亜希子のことをそう揶揄して呼んでいた。ブログの内容から察するに、明らかに亜希子のことをあけすけに書いた短編に違いなかった。電話で探りを入れた母は小説家が夢だったらしく、美奈子のことを自分のことのように喜んでいた。

数か月後には自分はいなくなるというのに、周りはどんどん幸せになっていく。結局マンションの片づけを薬王寺に手配してもらった業者に任せた亜希子は、気持ちも荒んで薬王寺に八つ当たりしてしまい、彼女からの連絡も途絶えてしまった。

亜希子の汚部屋がネットにさらされた。どこかからか写真が流出したらしい。また週刊誌にも載るという。出版するのは亜希子が懇意にしている会社だった。担当の牛島に連絡するものの、部署も編集プロダクションも違うので抑えられないと言われる。こんなものが雑誌に載れば、お掃除コンシェルジェの亜希子の立場がなくなる。「有終の美」を飾るという亜希子の目的はどんどん遠ざかっていった。

指先が荒れているのに気が付き1年ぶりに行きつけのネイルサロンで施術を受けている時、ネイルアーティストから、あれから警察に言ったのかと尋ねられ首をかしげる。彼女によると亜希子は誰かにストーキングされていると言っていたらしい。歩道橋から転落して落ちる前の記憶をなくしていた亜希子に、ネイルアーティストは門前払いをしたけれど興信所の人間が亜希子のことを調べている人間がいると言った。

亜希子の訃報が新聞に載った。マンションの敷地内で倒れているのが見つかり、自殺の可能性もあるとみられていた。

亜希子の葬儀を見に行った平河智子は、薬王寺相手にしみじみと亜希子について語っていた。亜希子は知らなかったが、智子も薬王寺が担当していた。またこれから本を出す智子の担当も、亜希子と同じ牛島だった。ロンドンでは探偵の真似事をしていたという智子は、牛島相手に亜希子は殺害されたという噂があるといい、最も合理的に犯人に相応しいのは誰かと話し始める。牛島は5人挙げる。妹の美奈子、外商の薬王寺、印刷会社時代に亜希子と対立していた派閥の中林、亜希子行きつけのヘアーサロンのオーナーの嫉妬深い妻。中林は、身の回りのことをネタにする亜希子が自分の名前を忘れていた事に憤り出版社にアンチの手紙を送り続けている人物だった。

5人中4人を却下した牛島は、最後に智子を挙げる。言い訳をするなかで智子は、うっかりと亜希子を歩道橋から突き落としたことを認める発言をしてしまう。印刷会社時代、迷惑ばかりかける無能と蔑んでいた亜希子といつも比較されて負けていた智子は、亜希子を憎んでおり、智子自身が癌を発症したことをきっかけに長年の憎しみを晴らそうとしたのだ。智子は亜希子殺害の容疑で逮捕された。

亜希子の墓の前には牛島と薬王寺がいた。そして亜希子の汚部屋の写真を流出させたのが片づけを請け負った薬王寺の実の弟が金目当てに行った事、詫びの意も込めて亜希子の「有終の美を飾りたい」という求めによって智子が亜希子のマンションへ行くよう牛島と薬王寺が手を貸していたことが話される。

亜希子が殺されることにより、美奈子も小説を書くどころではなくなり本が出なくなること、何より病気で死ぬより殺される方が話題になって素敵だという、亜希子なりの「有終の美」の飾り方だった。

 

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最後に牛島の正体が明らかにされました。ミステリーというより、人間関係のどろどろや汚い部分を前面に出した小説、という印象を受けました。幼稚園時代、社会人時代、ブログで活躍して以降と様々な人間に恨まれ最後に殺されるとか、亜希子さんの人生はなかなか壮絶に思えてきました。

数十年に渡って憎しみ続けられる人間ってそう多くないと思いますが、結構な頻度でそんな人ばかりに当たっていました。読後感はそんなに悪くなく、むしろ恨まれすぎて作り物めいているな(小説らしい)と感じてしまいました。