麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』あらすじとネタバレ感想

麻耶雄嵩さんの「友達以上探偵未満」のあらすじと感想をまとめました。

三重県伊賀野高校1年生の伊賀ももと上野あおの探偵志望の女子高生コンビが、遭遇した殺人事件を解いていくという短編集になっています。

犯人当て要素の強い内容なので、チャレンジしてみるのも良いかと思います。

「友達以上探偵未満」書籍概要

三重県立伊賀野高校の放送部に所属する伊賀ももと上野あおは大のミステリ好き。ある日、部活動で訪れた伊賀の里ミステリーツアーで事件に巻き込まれる。探偵に憧れる二人はこれ幸いと、ももの直感力とあおの論理力を活かし事件を解決していくが…?(「伊賀の里殺人事件」)。見立て殺人?お堀幽霊の謎?合宿中にも殺人事件…。勝てばホームズ。負ければワトソン。この世界に名探偵は二人も、いらない。女子高生探偵・ももとあおの絶対に負けられない推理勝負、開幕! 「BOOK」データベースより

  • 友達以上探偵未満(2018年3月/角川書店)

伊賀の里殺人事件

ミステリ研がないため放送部に入ったももとあおは、部長から1年生のノルマである取材レポートを言い渡された。週末に2日間に渡って開催される「伊賀の里ミステリーツアー」だ。

参加者はそれぞれが忍者や芭蕉のコスプレをして、初日は伊賀市内の名所でクイズを解き、二日目は上野城公園内でクイズラリー、上位入賞者には巻物と俳聖殿に自作の句が飾られるというものだった。今回の参加者は8人。会社社長の広小路正樹(芭蕉)、姪の広小路愛希(黒忍者)、甥の陽太(青忍者)、会社員の上林佑紀(青忍者)、妹の上林絵梨子(黄忍者)、会社後輩の西大手清晴(芭蕉)、自称芭蕉の末裔の猪田道夫(黄忍者)の7人までは初日にインタビューできたものの、残りの茅町一郎(黒忍者)には彼が忍者姿でホテルにチェックインするところしか会えなかった。参加者たちの会話から佑紀が愛希にストーカー行為を働いており、今回も愛希がミステリーツアーに参加するのを知って追いかけてきたのを、ももとあおは知る。

二日目のクイズラリーは、公園内の全部で8か所あるポイントを全員がバラバラの地点からスタートし、ポイントにあるクイズを解くと次のポイントが分かるというものだった。あおが寝坊し一人きりのももは、正樹と愛希についていくことになった。賞品に興味のない愛希は正樹のサポートをするらしく3人で回り始めたものの、ほどなく愛希が足を痛めた。公園内のレストハウスで休憩をとっている最中、通り雨が降り雨宿りをしたあと、正樹のみがクイズラリーに復帰していった。まもなく正樹から愛希に電話がかかってきた。正樹の着いたポイントで人が死んでいたらしい。クイズラリーは中止となり、警察がやってきた。

被害者は黒忍者。遺体のそばには煙草の吸殻が3本落ちており、首を絞められた際にそばにあった蓑を握りしめていた。2人いる黒忍者のうち愛希はずっとももと一緒にいたので、必然的に茅町一郎ということになる。だが男の名前は丸山佐助という人物だと判明した。雨、蓑、猿(猿飛佐助からの連想)から芭蕉の俳句の見立て殺人だとももは考えた。ものの誰からもスルーされた。

クイズラリーの順番で行くと、被害者のいたポイントは本来愛希がクイズを解いている場所だった。同じ黒忍者姿で犯人は殺す相手を間違えたのはないかと考えた警察は、犯行時刻にアリバイがなく愛希のストーカーをしてた佑紀を容疑者とみて追及する。だがその晩、ホテルに泊まっていた関係者らのうち愛希が殺されて水を張った浴槽に遺棄され、側にカエルの置物が置かれていた。またも芭蕉の俳句に見立てたものらしい。警察の監視下にあった佑紀に犯行は不可能と思われたものの、見張りの警官が居眠りをしていたため完全に容疑が晴れる事はなかった。

ももが見立て殺人を推す中、あおは刑事であるももの兄から得た情報を冷静に分析し、犯人を絞っていった。

 

どちらも名探偵志望の女子高生、元気で気分屋なももと冷静沈着なあおですが、探偵役はあおとなっています。ももも探偵役をするのですが、注意力散漫で直感に頼る発言ばかりなので基本的にいい加減なのですが、時としてこの直感が事件の真実に迫ります。

出てきた情報を丹念に見ていくと誰が犯人なのか推理できるという構成になっているので、読者側もいちど立ち止まって犯人が誰なのか考えるという楽しみ方もできます。

夢うつつ殺人事件

伊賀野高校には17年前に三角関係の縺れから殺された女子高生の幽霊が水堀に出ると噂されていた。美術部1年生の初唯が噂の水堀の側で写生をしつつ転寝をしてしまった。するとぼんやりとした意識の中、男女の声が聞こえてきた。美術部2年生の愛宕匡司を幽霊の仕業にして殺そうという相談だった。気が付いて周囲を見渡した時、2人の男女が美術室がある特別棟の裏口へと向かって歩く後ろ姿しか見えなかった。水堀は特別棟の裏口からしか行くことができず、放課後に特別棟を出入りするのは美術部員のみ。つまりあの男女は美術部員ということになる。

初唯が怜美に連れられてももとあおの所へ相談にやってきた。夢の中で聞いた話なのでどこまで信じればいいのか分からなかったが、先日初唯の学生カバンにべったりと赤い手形が付いていたのだと言う。それは幽霊の噂話で出てきた呪いと同じものだった。男女の話が真実なら愛宕のカバンにつくはずの手形がなぜか初唯のカバンに付いていたことに怯え、ようやく初唯は怜美に相談したのだった。怜美と愛宕が付き合っていたため、初唯は今まで相談するのをためらっていたらしい。初唯によると男女の会話を聞いた後に美術室に戻ると女子部員は2年生が3人、男子部員は部長と愛宕しかいなかった。だが部長は顧問と協議中で出歩いてはいない。

愛宕匡司の遺体が発見され、学生カバンから絵具で赤く塗られてた手形が見つかった。後頭部を殴って昏倒させたあと絞殺され、水堀に投げ込まれたものらしい。学生服のポケットには美術室の鍵が入っていた。最後まで美術室に残る人間が鍵を管理することになっていた。その後美術室から血痕が見つかったことで、犯行現場は美術室だと特定された。棚にあったブロンズ像がなくっているため、それが凶器だと思われる。また左手の像から絵具の後が見つかり、これが愛宕のカバンに付けられた手形の正体だと思われた。あおは、右手の像も調べてほしいと刑事であるももの兄に頼む。右手は初唯のカバンへのいたずらに使われたのかもしれないからだ。

調べを進めるうち、愛宕は天才肌の同級生の才能を目の当たりにして己の絵に悩みを持ち始め、もともとは真面目だったものの最近ではわざとチャラく振舞うようになったことが分かった。

事件が起きたことで下校となり、無人になった放送室で、ももとあお、ももの兄・空の3人は改めて事件について検証した。

 

登場人物の行動と人間関係が入り混じって、なかなか理解しつつ読み進めるのが小難しいミステリーでした。男女の正体については、あおによって謎が解き明かされたあともちんぷんかんぷんでした。偶然起きた出来事が、その後の事件の方向を決めてしまったということでしょうか。男女の殺人の密談を聞いたことで、犯人は自らが犯人だと教えてしまう行動をとったのでした。

夏の合宿殺人事件

ももとあおの出会いは、中学2年の時にあおが転校してきたことだった。名探偵になるという共通の目標をもつ2人は意気投合した。あおは文芸部に入ったが、ミステリーは主にテレビからというももは本を読むのが苦手なので、文芸部には遊びに行くだけだった。ある放課後、病院のそばでひったくり事件が起こった。ももは茫然と立ち尽くすしかできなかったが、あおは状況を把握し観察していた。そして見事推理で犯人を見つけ出したのだ。何もできなかった自分を反省しつつも、ももはあおに対抗心を燃やした。

夏休みに避暑地にある合宿所に2泊3日で行くことになった文芸部に、ももも参加した。合宿所にはすでにバレー部が一週間の予定で合宿中だった。友生だけが遅刻して参加できなかったが、3階の会議室で部員の自作の小説をみんなで批評するという活動を行い1日目は終わった。

2日目のお昼前、開けっ放しのドアが気になって覗きに行ったバレー部の蓮池が、会議室で殺されているバレー部の西明寺香苗を発見し悲鳴を上げた。香苗は首にかけていたタオルで首を絞められており、出入口に向かって倒れていた。抵抗したときに付いたものなのか、ホワイトボードの文字がかすれ、香苗の手のひらに黒のマーカーの跡が残っていた。

あおの機転で3階への通路となる中央階段は封鎖され、犯人は3階にいる人間のみに絞られた。3階のフロアは中央に階段、その両側に東西に延びた廊下があり、廊下を挟んでいくつかの部屋がある。遺体発見現場は東側廊下の突き当りにある会議室だった。廊下に対して東側の部屋にいたのは、文芸部の高山、界外、バレー部の蓮池、西側の部屋はバレー部の荒木、文芸部の喰代、友生の6人。バレー部員の証言により、香苗は男関係にだらしなかったことが暴露された。

事件発生時のバレー部は中休み中で、自主練をする者も多かった。あおは、香苗が遺体で発見される数十分前、自主練を切り上げ険しい表情で合宿所内に入っていく姿を見ていた。

事件を担当することになったももの兄から、香苗の髪の毛が十数本はさみで切り取られていることを知ったももとあおは、それぞれがある仮説を立てる。

 

細かい事象の積み重ねで犯人像が絞られて行きます。パズルを1ピースずつはめていくような細かさで、犯人当てに挑戦しようとしたらメモ必須です。

直感に頼ったももの仮説は即却下、あおの推理も一見筋が通っている様に見えつつも、ももの指摘であっさりと崩れてしまいます。ですがそのももの一言で、あおはすぐさま推理を組み立て、犯人にたどり着きました。

今回はもも視点、あお視点で話が進んでいくので、それぞれが相手に対してどういう感情を抱いているのかが分かる短編となっていて、なかなか興味深かったです。

 

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ライトノベルっぽい軽さでありながらミステリー部分は本格的という、読みやすいのだか読みにくいのだか分からない一冊でした。ももとあおのコンビと相性が良ければ面白く読める一冊だと思います。

私はもも、あおともに何か引っかかって、少し距離を置いた場所から淡々と読んだ感じになりました。