宮部みゆき「三島屋シリーズ」第2弾『あんじゅう』あらすじとネタバレ感想

宮部みゆきさんの人気シリーズ「三島屋変調百物語」シリーズは、百物語というだけあってジャンルは怪談、ホラーあたりになるかと思います。

ですがミステリアスな雰囲気は十分にありますし、きっとミステリーファンも楽しめるシリーズですのでご紹介したいと思います。

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「あんじゅう 三島屋変調百物語事続(ことのつづき)」書籍概要

一度にひとりずつ、百物語の聞き集めを始めた三島屋伊兵衛の姪・おちか。ある事件を境に心を閉ざしていたおちかだったが、訪れる人々の不思議な話を聞くうちに、徐々にその心は溶け始めていた。ある日おちかは、深考塾の若先生・青野利一郎から「紫陽花屋敷」の話を聞く。それは、暗獣“くろすけ”にまつわる切ない物語であった。人を恋いながら人のそばでは生きられない“くろすけ”とは―。三島屋シリーズ第2弾!「BOOK」データベースより

  • あんじゅう 三島屋変調百物語事続(2010年7月/中央公論新社)
  • あんじゅう 三島屋変調百物語事続(2012年2月/新人物ノベルス)
  • あんじゅう 三島屋変調百物語事続(2013年6月/角川文庫)

第一話 逃げ水

「お旱さん(おひでりさん)」の封印を解いたことから、近づくと水が逃げるように消えていくようになった少年<平太>の話。

 

お旱さんの封印を解くまでが長かった気がします。解いてはいけない物を解き、村が干上がってしまうと追い出された平太が、三島屋では受け入れられることに安心しました。お旱さんは水を飲み干してしまうとんでもない神様ですが、姿は可愛いです。平太と三島屋の丁稚小僧の新太とのやりとりもほっこりします。

第二話 藪から千本

双子のうち養女に出した方の娘が亡くなり、生みの親・養い親たちは亡くなった娘そっくりの人形を作り本当の娘のように遇したことから起こる怪異。三島屋のご近所さん・針問屋のおかみ<お路>が語る話。

 

双子は片方がケガをしたら、もう片方にも同じ場所に傷ができると聞く事もありますが、今回はそれが人間と人形の間で起こります。亡くした娘を思う周囲の人間たちの強すぎる思いが、双子の片割れである少女に不幸となって降りかかってくるのが、なんとも不気味でした。

最後は生きている娘を救う選択をした両家の決断により、禍々しいものを断ち切ることに成功したわけですが、どことなく手放しでよかったねとも言えない気持ちになりました。

ここでお勝さんが登場しました。彼女は「禍払い(まがばらい)」というあらゆる魔を退ける力を持つ女性で、以降、おちかがスカウトして三島屋の女中になり、百物語では欠かせない存在となっていきます。

第三話 暗獣 あんじゅう

紫陽花屋敷に住む黒いあやかしと、その屋敷に引っ越してきた老夫婦との交流を語るのは、隠居した老夫婦の夫が開いている手習所の若先生<青野利一郎>だった。

 

表題作の「あんじゅう」は「暗獣」でした。とはいえ、むやみやたらに人に襲い掛かってくるような凶暴な存在ではなく、ひっそりと影の中で暮らすあやかしでした。このあやかしがけなげで可愛いのです。紫陽花屋敷に越してきた老夫婦も、彼(?)のことを「くろすけ」と名付けて愛で、人とあやかしの共存はうまくいくかのように思えました。

結局最後、老夫婦は紫陽花屋敷を去ることになるのですが、その理由がなんとも切ないのです。老夫婦がくろすけを思う気持ちにこちらまで同化してしまい、読み終わった後はしばし余韻に浸りました。

三島屋シリーズのほっこりNO1を争うお話でした。

第四話 咆える仏 ほえるほとけ

偽坊主<行然坊>が若かりし頃に訪れた隠れ里で起こった、村人たちを襲う悲劇の話。

 

手習所の若先生<青野利一郎>と<行然坊>は、「三島屋シリーズ」が初登場ではありません。同じく宮部さんの著書「ばんば憑き(改題「お文の影」)の中の短編『討債鬼』に主人公として登場します。二人の出会いのエピソードなどもあるので、気になる方はこちらもぜひ手に取ってみて下さい。利一郎が浪人となって江戸に流れ着いた経緯も分かります。

偽坊主の行然のキャラクターがいいのです。豪放磊落という感じで偽坊主の名にふさわしい。そんな彼が、若い頃にしばらく滞在することになった山里で目にした事件を語ります。狂気じみた集団心理の恐ろしさ、みたいなものを感じられるかと思います。

 

実家のある川崎で心に深い傷を負ったおちかですが、百物語の聞き手を務めることで少しずつ変化が表れてきます。その一つが手習所の若先生との交流です。はっきりとは書かれていませんが、どうやら利一郎に心を動かされているようです。

すでに5巻まで出ているので、この恋の結末は分かっているのですが、ふたたび恋ができるようになったらしいおちかにも注目しながら、次の百物語を楽しみたいところです。