宮部みゆき「三島屋シリーズ」第5弾。おちかが結婚『あやかし草紙』あらすじとネタバレ感想

宮部みゆきさんの人気時代劇シリーズ「三島屋変調百物語(みしまやへんちょうひゃくものがたり)」の5巻の紹介をします。

このシリーズは厳密にはミステリー小説ではないのですが、宮部さんはミステリーも書かれますし、百物語の中で謎や不思議を扱っているので今回のご紹介となりました。

舞台は江戸時代ですが、とても読みやすくて、本自体は厚いのにあっという間に全ての物語を読み終えてしまうのです。

文句なしにおすすめの人気シリーズです。

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「あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続(ごのつづき)」書籍情報

固く封じ込めたはずのわだかまりが、どこまでも追いかけてくる。一歩を踏みだすために、人は胸につかえる秘事を吐き出し心の重荷をそっと下ろす。「語ってしまえば、消えますよ」「BOOK」データベースより

  • あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続 (2018年4月/KADOKAWA)
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第一話 開けずの間

「どんぶり屋」という飯屋の主人<平吉>は、女房が願掛けのために「塩断ち」を宣言したことから、温厚な彼が我を失うほど怒り狂ってしまった。なぜなら平吉には、幼いころ家族が塩断ちをしたことで生家が潰えてしまうという凄惨な過去があった。

 

塩断ちをしたことで「行き違い神」を家に招き入れてしまい、結果、家族に次々と不幸が襲い掛かってきます。運よく幼い平吉だけは生き残りますが、一度不幸の歯車が回り始めると行きつく所まで止まらない怖さがありました。

百物語の中には、救いのある話と救いのない話があるのですが、こちらは救いがない方でした。一家まるごと断絶は久々です。

三島屋の次男・富次郎がおちかと一緒に変わり百物語に聞き手となり、聞いた話を一枚の絵に表すようになります。このエピソードが表題に繋がっていきました。

第二話 だんまり姫

あやかしを呼び寄せるという「もんも声」を持つ<おせい>が、ひょんなことからお城に住む声が出せないお姫様に仕えることになった。お姫様のお世話をするうちに彼女は、お城に住み着く影「一国様(いっこくさま)」の存在に気づいてしまう。一国様は、ある事情によって若くして非業の死を遂げた少年だった。

 

凄惨な一話目の「開けずの間」から一転、こちらはホッとするようなお話です。あやかしを呼び寄せる声の持ち主、という設定なのでおどろおどろしいものかと覚悟して読み始めましたが、語り手の<おせい>さんのキャラがお茶目で、人から忌避されるような能力(もんも声)の持ち主でありながら悲壮感がまったくないところが、物語を明るいものにしてくれます。

一国様の死にはお家騒動が絡んでくるのですが、それが何とも言えず悲しい気持ちにさせられました。おせいさんの頑張りのおかげで、一国様にも希望が持てるラストになったと思います。

第三話 面の家

手癖の悪い少女<お種>が一年間の契約で奉公にあがった先は、災いをもたらすお面と、その面の番人をする屋敷だった。結局年季明けを待たず解雇されてしまったお種の語る奇妙な話。

 

手癖の悪い少女が語り手、という時点でちょっと私の中で拒否反応があったのか、実はあまり印象には残っていないお話です。お面が自らの意思をもって人に話しかけてくる、唆してくるのはじゅうぶん怪異なのですが、それほど怖い話ではありませんでした。

第四話 あやかし草紙

三島屋に出入りしている貸本屋「瓢箪古堂(ひょうたんこどう)」の若旦那<勘一>が語る、読んではいけない冊子にまつわる話と、そっくりな顔をした男6人と結婚した老女の話の2本立て。

 

表題作ということもあり、好きな話は「だんまり姫」ですが、一番印象に残ったのはこの百物語でした。生活費を稼ぐために書物の複製業(写本/昔はコピー機がないので手で書き写していた)をしていた浪人・栫井(かこい)が「読んではいけない本」の写本を引き受けた話と、その後が語られます。

写本をするということは、その本を読むということです。読んではいけない本には何が書いてあったのか、写本を終えた栫井の気迫がこちらにも伝わってきます。壮絶です。たしかに読んではいけない本でした。

この栫井のその後を聞いたおちかは、瓢箪古堂の勘一に告白をするのですが、なんだか唐突すぎて「彼女が勘一に恋心を抱くようなエピソードはあったかな?」と首をかしげてしまいました。メインストーリーが壮絶でそちらに気持ちが入っていたせいか、おちかと勘一の関係にはまるで気が付きませんでした。

そして富次郎が書き溜めた百物語の絵を収納する箱に、「あやかし草紙」と名前が付けられました。ここで富次郎に主軸が移ったような感じです。

第五話 金目の猫

奉公先から一時帰宅した三島屋の長男<伊一郎>が、弟の富次郎を聞き手に据えて語る、幼いころに経験した小さなふわふわしたものにまつわる不思議なお話。

 

おちかの祝言のために奉公先から戻ってきた長兄が、お酒を酌み交わしながら兄弟で語り合うという体のお話。猫だと思っていたものが実は違ったと後で分かります。聞き手を務める主人公が富次郎になりました。

その後おちかはあっさりと勘一の元へ嫁いでいってしまい、おちかが以前宣戦布告をした「謎の商人」らしき人が富次郎に挨拶にやってくることから、百物語の主人公が名実ともにおちかから富次郎へと引き継がれたようです。

 

三島屋シリーズは、5冊で27個の百物語が語られました。約1/3ほど物語が集まったところで主役交代。第一期完結とあるので、次からは三島屋の次男・富次郎が聞き手となった百物語が続くのでしょう。少し寂しい気もしますが、悲しい過去を持つおちかが自力で幸せを掴むことができたので、それはそれで良かったです。

次の新刊も楽しみに待ちたいと思います。