宮部みゆき「三島屋シリーズ」第4弾『三鬼』のあらすじとネタバレ感想

宮部みゆきさんの「三島屋シリーズ」の4冊目です。宮部さんはミステリー小説から入ったのですが、こちらの江戸時代を舞台とした人々の思いが引き起こす怪異や、あやかしとの交流など、推理はしませんが不思議がいっぱい詰まったシリーズも大好きです。

百物語というジャンル(?)なので、愉快なものや辛いもの、ほっこりするものなど色とりどりの短編がありますので、好きなお話が見つかれば幸いです。

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三鬼(さんき) 三島屋変調百物語四之続(よんのつづき)書籍概要

三島屋の黒白の間で行われている変わり百物語。語り手の年齢や身分は様々で、彼らは正しいことも過ちもすべてを語り捨てていく。十三歳の少女は亡者の集う家の哀しき顛末を、絶品の弁当屋の店主は夏場に休業する理由を、そして山陰の小藩の元江戸家老は寒村に潜む鬼の秘密を語る。聞き役に従兄の富次郎も加わり、怪異を聞き積んでいく中でおちかにも新たな出逢いと別れがあり―恐ろしいけど面白い三島屋シリーズ第四弾!「BOOK」データベースより

  • 三鬼 三島屋変調百物語四之続(2016年12月/日本経済新聞出版社)
  • 三鬼 三島屋変調百物語四之続(2019年6月/角川文庫)

第一話 迷いの旅籠

三島屋の黒白の間にやってきたのは、とある村の百姓の娘<おつぎ>だった。彼女は江戸に住むお殿様の前で、村人たちが行った「行灯祭り(あんどんまつり)」の顛末を話す予行演習としてやってきたという。喪に服すお殿様に祭りを禁じられた村人たちが、こっそりと始めた祭りの準備が思わぬ事態を引き起こしてしまう。

 

豊作を願う村の大切なお祭りを私事で禁止するお殿様もお殿様ですが、災厄の原因は逗留している旅の絵師でした。祭りをしたいという村人の気持ちをうまく唆して自分の野望を遂げようと誘導する姿は立派な詐欺師ですね。結局誰も幸せになる人はいなかった事件を、戒めとしてお殿様に話そうという村の人たちの姿に救いを見ました。

しかし一番毒のなさそうな青年が、最後に取った行動には驚かされました。人の良さそうな絵師が、実はろくでもない人間だったというのも、村にとっては不幸でした。

第二話 食客ひだる神

三島屋も贔屓にしている仕出し弁当屋「だるま屋」は、とても評判がいいのに何故か商売の手を広げようとはせず、夏場も丸々休業してしまう。その理由は何故か。だるま屋の主人<房五郎>が、旅の帰路の途中で取り憑かれた「ひだる神」の話を始める。

 

食いしん坊の「ひだる神」に憑かれてしまった房五郎ですが、特に祓おうともせず一緒に暮らしていく道を選びました。とはいえ、一緒に暮らしていくためのルールを設けて守るよう言いつける房五郎、その房五郎の言うことを素直に受け入れるひだる神も何だか可愛くて、「あんじゅう」を彷彿させるようなほんわかした話でした。

良い関係を築きすぎたのか、食べすぎが原因で太りすぎてしまったひだる神のために、房五郎はだるま屋の営業方針を変えたのです。ひだる神の正体は少し悲しいですが、今回の短編の中では一番ほっとする話です。

第三話 三鬼 さんき

表向きは嗣子問題で改易となった小藩の元江戸家老<村井清左衛門>が語るのは、若い頃に派遣された寒村で出会った鬼の話。閉ざされた山村・洞ヶ森村の過酷な環境と貧しさの中で諦めたように暮らす人々は、「何か」を恐れていた。

 

メインである洞ヶ森村での人々の暮らしぶりの過酷さもさることながら、清左衛門が村の山番士として送られる原因となった事件も、なぜ元江戸家老という偉いお武家様が町人(商人)の家で出向いてまで百物語を語ろうとしたのか、ラストで全てが明かされた時、胸が詰まるような思いがしました。

世間から見捨てられたような山村では、ケガや病気をしても医者一人呼べないのです。ただただ死ぬのを待つか、誰かが楽にしてあげるか……そういうところで鬼が生まれたのです。

基本救いのない話ですが、清左衛門の妹が幸せを掴んでいたのが分かったのは良かったです。さすが表題作といった重みを感じる話でした。

第四話 おくらさま

語り手は14歳で心の時を止めてしまったという老女<お梅>。彼女の生家、お香を扱う「美仙屋」には「おくらさま」という守り神がおり、お梅を含む3人の姉妹たちが毎日おくらさまのためにお香を焚いていた。お梅が時を止める原因となったおくらさまの正体は…。

 

「おくらさま」は美仙屋をあらゆる災難から守ってくれるという守り神ですが、その正体を知れば、誰もがおくらさまを守り、盛り立てていこうとは思わないはず。現に14の時、その正体を知ってしまったお梅は、自分の中の時間を止めてしまいます。そして美仙屋はなくなり、心を閉ざして引きこもったお梅は親戚中をたらい回しにされ、人々の口も堅く噤んでしまいました。

香具屋の評判の美人三姉妹という前半のきらびやかな話が、ある町火事を境に一気にどん底まで転落したギャップが凄くて、ジェットコースターのような話でした。

 

今回で手習所の若先生こと青野利一郎が江戸を離れることになりました。江戸の水に慣れてこれからおちかと…と思っていたのですが、あまり良い思い出もなさそうな故郷でもやはり捨てがたかったのでしょうか。そして新たに貸本屋の若旦那・勘一が登場です。飄々としていて掴みどころがなさそうな優男風ですが、お勝さんは「おちかと縁がある人」という気になる発言をしました。

続きが気になりますね。どう縁があるのかはシリーズ5冊目の「あやかし草紙」で明らかになりました。