中山七里「刑事犬養隼人シリーズ」第3弾『ハーメルンの誘拐魔』あらすじとネタバレ感想まとめ

「ハーメルンの誘拐魔」のあらすじと感想をまとめました。子宮頸がんワクチンを接種したことにより、副反応で体に障害を負ってしまった人達及びワクチン問題を訴える人々VS子宮頸がんワクチン推進派という構図になっています。推進派の理由は本に書かれていることが本当かどうかは分かりませんが、読んでいてムカムカしてきます。

医療行為はボランティアだとは思いませんし病院は営利団体だと捉えていますが、被害者の存在を見て見ぬふりをし自分たちの利益だけを追求する姿勢には、ひとごと(小説ごと)ながら怒りが収まりません。そういう本でした。

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「ハーメルンの誘拐魔」書籍概要

刑事犬養隼人シリーズ3冊目となる長編もので、子宮頸がんのワクチンによる副反応を巡る誘拐事件が多発。犯人から要求された身代金は1人あたり10億、全部で70億円というものだった。

  • ハーメルンの誘拐魔(2016年1月/角川書店)
  • ハーメルンの誘拐魔 刑事犬養隼人(2017年11月/角川文庫)

 

15歳にして記憶障害を起こし通院している月島香苗が、病院からの帰り道に忽然と姿を消した。付き添いの母親・綾子が買い物のため十分ほど離れていた間の出来事だった。近所の交番の協力もあって周辺をくまなく探していくが、ちょうどその日は安養寺の結願法楽の日で参拝客で人が多くなかなか見つからない。2時間ほど探した挙句元の場所へ戻った綾子が思わずしゃがみこんだ時、視界にあるものが入った。香苗の生徒手帳だった。生徒手帳の下には、ハーメルンの笛吹き男のイラストが描かれた絵葉書が残されていた。

身代金の要求などはないが、警察は誘拐犯が残した犯行声明としてとらえ犬養が呼ばれた。

登場人物

  • 月島香苗:母子家庭で育つ15歳。子宮頸がんワクチン接種後に記憶障害を発症する。
  • 月島綾子:香苗の母。香苗の状況を綴るブログを持っておりネットでは有名。
  • 村本隆:医師。綾子とは彼女のブログを通じで知り合った。ワクチン反対派。
  • 槙野良邦:医師で日本産婦人科協会の会長。ワクチン推進派。
  • 槙野亜美:日本産婦人科協会会長の一人娘。
  • 槙野朋絵:槙野の妻で亜美の母。
  • 仮屋裕美子:高校生。子宮頸がんワクチンの被害者
  • 河村季里:高校生。子宮頸がんワクチンの被害者
  • 甲斐詩織:高校生。子宮頸がんワクチンの被害者
  • 大和田悠:中学生。子宮頸がんワクチンの被害者
  • 支倉優花:高校生。子宮頸がんワクチンの被害者

第二の誘拐

犬養を忌み嫌っている女刑事・高千穂明日香とコンビを組むことになった犬養は、月島家を訪れた。家の中には特捜班が待機しているが、犯人からの接触はないという。たとえ身代金の要求があったとしても母子家庭の綾子には用意できる金もない。記憶障害の香苗が家出を考えるわけがないし誘拐されるような心当たりもないと綾子は主張した。

事件に動きがない中、腎臓病で入院中の娘・沙耶香の見舞いに行った犬養は、娘から有力な情報を得た。月島綾子が本名で香苗の闘病記録を綴るブログを開設しているというのだ。アクセス数も多く、読む人が読めば彼女らの生活範囲や行動が予測できるほど詳細な内容だった。またブログの中で綾子は、香苗の病気の原因は子宮頸がんの予防ワクチンを打ったことが原因だと告発もしていた。綾子は、子宮頸がんワクチンの問題を訴え続ける人たちのリーダー的存在だった。

犬養は綾子と交流の深い村本医師を訪ねる。彼もまたワクチンが原因で娘を亡くしており、ワクチンを推進する日本産婦人科協会の槙野が名指しで綾子を批判していたことを教える。

また村本は、薬害エイズ問題以前から続く医師・製薬会社・厚労省の癒着を話して聞かせた。

香苗の誘拐事件に進展はなかった。そんな時、槙野の娘・亜美が友人との帰り道、忘れ物を取りに戻った先の神社で忽然と姿を消し、近辺に彼女のスマートフォンとハーメルンの笛吹き男の絵葉書が残されるという事件が起こった。

監視カメラの位置を気にしたのか、そこから犯人を辿ることは不可能だった。両親に尋ねても亜美が誘拐される心当たりはないという。2人の少女が消えてもなお犯人からの接触はなかった。

第三の誘拐

議員会館で子宮頸がんワクチンの副反応で障害を負った少女たちの会見がはじまった。5人全員がワクチン接種後に何らかの障害を発生し、車いす生活を余儀なくされているとマスコミの前で訴える。会見を取りまとめているのは月島綾子だった。

会見を終えた彼女らは、車いす専用のバスに乗りホテルへと向かう予定だった。別の車に乗ってホテルへと向かった保護者達から、子どもたちのバスが消えたと綾子の携帯に連絡が入る。綾子のそばで話を聞いていた犬養が議員会館内を探すと、トイレの個室に縛られていたドライバーを見つけた。ドライバーの足元にはハーメルンの笛吹き男の絵葉書がある。5人はバスごと誘拐されたのだ。

誘拐犯とのやり取り

7人もの少女を誘拐したところで犯人から身代金を要求する封書が届いた。ハーメルンの笛吹き男を名乗り、一人につき10億円、計70億円を日本産婦人科協会と製薬会社が支払えという内容だった。

事件が公になっている以上、名指しされた協会と製薬会社が誘拐事件とは無関係だと突っぱねて支払いを拒否するのは世間の批判を一身に浴びることに等しかった。聞こえの良い理由をつけて70億円は支払われることになった。

最初の誘拐から2週間が過ぎようとしている。警察の捜査は製薬会社をリストラされた人間や恨みを抱く顧客にまで広げられたが、一向に犯人に繋がる手掛かりは得られていなかった。

誘拐犯から封書が届いた。身代金の受け渡し場所は大阪の浪速区だという。70億円を赤くスプレーしたアタッシュケースに詰め込み、14名の警察官によって運ばれることになった。もちろん周囲には大阪府警の協力で100名近い警官が陣を敷いている。

だがその日は大相撲大阪場所の優勝パレードと重なり、ただでさえ人の多い道頓堀をはじめとする難波一帯は大勢の人間でごった返していた。犬養をはじめとする14人の警官と先導役を務めた高千穂は、被害者の保護者達と指揮官をのせた警察のワンボックスカーが見守るなか、犯人の指示により重い身代金を抱えたまま人ごみの中を2キロ以上走らされた挙句、悠々と70億円を奪われてしまった。完敗だった。だが走っている最中、まるで自分たちの動きを見ているかのような犯人の指示を犬養は疑問に思う。

なぜこの人ごみのなか、犯人は正確に警察の動きを把握できたのか。犯人が潜んでいそうな高層ビルなどは事前にチェック済であったにも関わらず、犯人は俯瞰しているかのように身代金を抱えた警官たちを動かしてみせた。

犬養はある人物の元へと足を向けた。

犯人は

単独犯ではありませんでした。普通に考えて7人の人質を抱えたまま70億円のお金(重いしかさばるので大阪から東京まで運ぶ手段も確保しておく必要がある)を受け取るのは、一人では難しいと思います。複数の人間をスムーズに攫ったことから、犯人が関係者もしくは関係者に近しい人物であるだろうことは読みながら予想がついてきます。

犬養が身代金受け渡し時の状況から見えたもの、気づいたことをぶつけて一つずつ犯人の逃げ道を潰していった結果、誘拐された7人の少女たちは無事に救出されました。

多くのマスコミが詰めかけるなか、人質の救出と籠城した犯人の逮捕によってようやく終焉を迎えようとした瞬間、思わぬ人物がカメラの前に飛び出してきた。その様子を離れていた場所から眺めていた犬養は、相方の高千穂に言う。あの人物こそが真のハーメルンの笛吹き男だと。

 

今回の子宮頸がんワクチンや切り裂きジャック事件など、犬養は医療系の事件を担当することが多いようです。短編のように、医療系以外の事件に挑む犬養の姿も見てみたいものです。