中山七里「刑事犬養隼人シリーズ」第1弾『切り裂きジャックの告白』あらすじとネタバレ感想まとめ

「切り裂きジャックの告白」のあらすじと感想をまとめました。

犬養隼人刑事シリーズ第1弾です。警視庁の犬養が、「連続殺人鬼 カエル男」で主役を張っていた埼玉県警の古手川刑事と合同捜査という形でコンビを組んでいますので、カエル男事件後の古手川刑事の様子を知るのにも楽しい一冊となっています。

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「切り裂きジャックの告白」書籍概要

刑事犬養隼人シリーズ1作目となる脳死判定による臓器移植をテーマにした長編小説。

  • 切り裂きジャックの告白(2013年4月 角川書店)
  • 切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人(2014年12月 角川文庫)

 

東京で臓器がまるごと抜き取られた女性の遺体が見つかった。首を絞めて殺害したあとに開腹したものと思われた。被害者の名前は六郷由美香、都内信用金庫に勤める21歳だった。同居している両親には被害者が狙われる心当たりはないという。

被害者の体にはある特徴が残されていた。腹部切開に用いられた道具が非常に鋭利な刃物であり、おそらくそれは手術用のメスだろうということと、Y字切開法という素人には見られない方法で開腹を行っていること。

犯人は解剖の知識を備えた人物だろうと推察された。

登場人物

  • 六郷由美香:信用金庫勤務
  • 半崎桐子:電器店勤務
  • 具志堅悟:臓器移植を受けて回復後、競馬場へ入り浸る姿をマスコミすっぱ抜かれて叩かれる
  • 三田村敬介:音楽家志望。公園でトランペットの練習をしている
  • 高野千春:帝都大附属病院の移植コーディネーター
  • 真境名孝彦:帝都大学付属病院医師。臓器移植推進派。まじめ。
  • 真境名陽子:孝彦の妻で麻酔医
  • 榊原博人:帝都大学付属病院医師。臓器移植には消極的な姿勢。
  • 鬼子母志郎:脳死判定を受けドナーカードを持っていたためドナーとなり臓器を提供した。
  • 鬼子母涼子:志郎の母。パート勤務。まだ志郎が生きているかのように振る舞っている。
  • 犬養隼人:警視庁の刑事
  • 古手川和也:埼玉県警の刑事
  • 鶴崎管理官:切り裂きジャック事件の指揮をとる。あまり有能ではない

2番目の事件

帝都テレビ報道部に奇妙な手紙が送られてきていた。業務用のそっけない封筒だが裏の差出人名のところには「彼女の臓器は軽かった」という一文があった。ジャックを名乗る人物からの、六郷由美香事件に関する犯行声明ともいえる文書だった。警察に通報する前に公開された犯行声明は、お茶の前の視線を釘付けにした。1888年にロンドンで起きた切り裂きジャック事件を彷彿させるような報道に世間が湧いた。

犬養が帝都テレビから提供を受けて持ち帰った犯行声明からは、犯人の手がかりとなるものは何も見つからなかった。

埼玉県で、体が切り開かれ臓器が全て取り去られた女性の遺体が見つかった。被害者の名前は半崎桐子。遺体の状態は六郷由美香の時と類似点が多かった。埼玉県の現場にかけつけ検視に立ち会った犬養は、そこで古手川と出会う。合同捜査が決定したらコンビを組むことになる2人は、さっそく被害者2人の接点を調べることにした。

警視庁にジャックからの手紙と小包が届いた。荷物の中身は半崎桐子の腎臓の一部だった。2件の犯行を認める手紙から2件ともを同一犯と認定、正式に警視庁と埼玉県警の合同捜査が決定した。

駆けずり回ってもなかなか2人の接点が見つからなかったが、ようやく手ごたえを感じたのは由美香の両親に再度話を聞いた時だった。由美香は以前劇症肝炎を患って長期入院を余儀なくされ、臓器移植によって回復したというのだ。その話を持って桐子の母親の元を訪れた2人は、桐子が細菌性肺炎になり移植手術を受けたことを聞き出す。過去に臓器提供を受けた2人の被害者には、どちらも移植コーディネーター・高野千春が関わっていた。

早速高野千春を訪ねるが、コーディネーターの職務として正式な手続きを踏まない限り答えられないと突っぱねられて終わった。

3番目の事件

ようやく2人が犯人の手がかりらしきものを掴んだ頃、帝都テレビから警察に取材の申し込みが入った。切り裂きジャック事件での実績をもとに出世街道をのぼる自分の姿を想像した鶴崎管理官は、テレビ局の口車に乗せらせ生中継で犯人に対し挑発的なパフォーマンスをしてみせた。

そんな鶴崎をあざ笑うかのように三番目の被害者が出た。具志堅悟だった。彼はかつて腎不全を患い人工透析を受ける身だったが、臓器移植により健康体を手に入れた。だが思い描いていた生活が送れなかったことに倦み競馬にのめりこんでいた。彼の遺体は東京競馬場の近くで発見された。臓器がごっそりと取り除かれているという状況も前2件と同様であった。

競馬場のスタッフからの目撃情報で、殺害される前の具志堅が高野千春と会っていたことが分かる。2人が再度高野と接触しようとした矢先、彼女の方から警察にやってきた。

千春は、六郷由美香、半崎桐子、具志堅悟を含め4人の患者が同じ日に臓器提供を受けていたことを告げるが、臓器を提供した遺族からの承認が得られていないので4人目の名前はまだ教えられない、必ず承諾させるのであと1日だけ待ってほしいと懇願する。具志堅と会っていたことは素直に認めその時の状況を話した。

犯人から3回目の手紙と小包が届いた。小包の中身は具志堅悟の腎臓の一部だった。次々と犠牲者が現れ捜査本部に焦燥感が走る中、1日経って再び千春が警視庁を訪れた。遺族と連絡が取れなかったが4人目の名前を教えるという。名前は三田村敬介。彼を監視していればジャックを名乗る犯人がきっと現れる。千春は、ドナー情報をなかなか警察に公開しなかった理由の一つが、規則を破ってドナー提供者の遺族に臓器提供先の情報を教えてしまったためだと告白した。

4人に臓器を提供した鬼子母志郎の母・涼子は、パート休みを利用してある場所へと向かった。涼子はレピシエント(臓器提供を受けた人)と接触しないことを条件に、千春から4人の情報を得ていた。涼子は息子が生きているところを見たいと被害者たちの生活を遠くから見て回っていたが、3人とも死んでしまった。だが残る三田村敬介の心臓はまだ生きている。三田村の家を探し歩いていた時、2人組の男に声をかけられた。男の一人は警視庁捜査一課の犬養だと名乗った。

犯人は

メスの扱いに慣れた医療関係者なので、スーパーでパートをしている涼子ではありません。その後三田村敬介の協力を得て、更なる犠牲者を出すことなく犯行を未然に防ぐことに成功しました。

真犯人の余りにも身勝手で自己保身に走った動機や遺体から臓器を抜き取るという敬意のなさに同情の余地はありません。現実にこのような人間が存在しないことを信じるのみです。

 

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救いのないラストを持ってくることもある作者なので覚悟もしていましたが、最後は心が暖かくなるようなシーンで締めくくられ、ホッとしました。

凄惨な事件が描かれていた分、余計に沁みました。

東京と埼玉ということで中々難しいかもしれませんが、また犬養&古手川のアクセルコンビの話を読みたいです。