ここ何年か、中山七里(なかやましちり)さんという作家さんにハマっています。
読みやすくて引き込まれる文章、取り扱うジャンルの広さ、早い発行スピードなどハマる要素は多々ありますが、何よりも主役級の登場人物たちによって作品同士がリンクしている、という読んだ人にしか分からないマニアックな楽しみ方ができるのが一番の理由です。
それぞれの作品の主人公が、別の作品のレギュラーメンバーとして登場したり、競演したり、名前だけチラッと出てきたりと、とにかく登場人物がリンクしあっていて全体像が把握できないくらい複雑に入り組んだ作風なのが魅力です。
中山七里作品の主なシリーズを紹介
シリーズものと呼ばれているものは主に4つありますので、簡単にご紹介していきます。
1.岬洋介シリーズ
ピアニストである岬洋介が、音楽業界で起こる事件を解決するシリーズです。犯人を見つけ事件を解決するというミステリー部分と同じくらい音楽の知識やピアノの演奏シーンの描写が素晴らしくて、文字を追っているのに音楽を聴いているような気持ちになります。クラシック好きの人にもぜひ読んでほしいシリーズです。
- さよならドビュッシー(2010)
- おやすみラフマニノフ(2010)
- 要介護探偵の事件簿(2011)※「さよならドビュッシー」スピンオフ作品
- いつまでもショパン(2013)
- どこかでベートーヴェン(2016)
- もういちどベートーヴェン(2019)
- 合唱 岬洋介の帰還(2020)
2.御子柴礼司シリーズ
どんな罪状であろうと減刑、時には無罪を勝ち取るという冷静沈着な辣腕弁護士・御子柴礼司(みこしばれいじ)が主人公の法廷ミステリーです。こう書くと正義の味方の凄腕弁護士のようかもしれませんが、彼が過去に起こした重大な事件がシリーズの根底にあるためか、全体的に重苦しい雰囲気が漂ってます。が、読みにくくはありません。むしろ引き込まれてぐいぐいと読み進めてしまうタイプの話です。
- 贖罪の奏鳴曲 しょくざいのソナタ(2011)
- 追憶の夜想曲 ついおくのノクターン(2013)
- 恩讐の鎮魂曲 おんしゅうのレクイエム(2016)
- 悪徳の輪舞曲 あくとくのロンド(2018)
タイトルからして重苦しいです。「恩讐の鎮魂曲」は恩師の弁護(殺人容疑)、「悪徳の輪舞曲」は実の母親の弁護(殺人容疑)を引き受けるという内容で読後感が凄いので、ミステリー耐性のある人にはぜひ一度手に取ってもらい、このシリーズ全体を包み込む独特の空気感を分かち合いたいです。
3.犬養隼人シリーズ
警視庁捜査一課のベテラン刑事・犬養隼人(いぬかいはやと)を主役に据えたシリーズです。男の犯人に限って嘘を見抜くことができるという特技と、名前の通り犬のように執拗に犯人を追い続ける姿が人気です。沢村一樹さん主演でテレビドラマ化もしているので、知っている人が多いシリーズかもしれません。
- 切り裂きジャックの告白(2013)
- 七色の毒(2013)
- ハーメルンの誘拐魔(2016)
- ドクター・デスの遺産(2017)
- カインの傲慢(2020)
刑事ものですが、医療系の話が多い印象です。
4.ヒポクラテスシリーズ
臨床医を希望していた研修医の栂野真琴(つがのまこと)が、ある理由によって法医学教室へ入り、ご遺体の解剖を通して事件の真相に迫っていくという法医学ミステリーです。主人公より法医学教室の教授・光崎(みつざき)のキャラが強烈です。個人的には、光崎教授を見たいがためにこのシリーズを読んでいると言っても過言ではありません。
- ヒポクラテスの誓い(2015)
- ヒポクラテスの憂鬱(2016)
もっとたくさん出してほしいです。シリーズ以外の単発ものでの登場も多いので、嬉しい悲鳴ですがハマると大変です。
各シリーズを超えて登場
1.埼玉県警の古手川和也とその上司・渡瀬
『古手川和也』は、埼玉県警捜査一課に配属された若手刑事で、直属の上司の『渡瀬』とともに登場回数が最多ではないでしょうか。埼玉が舞台になることが多いせいか、しょっちゅう目にします。
- 連続殺人鬼カエル男(2011)
- 連続殺人鬼カエル男ふたたび(2018)
- 魔女は甦る(2011)
- 切り裂きジャックの告白(2013)【犬養隼人シリーズ】
- テミスの剣(2014)
- 贖罪の奏鳴曲(2011)【御子柴礼司シリーズ】
- ヒポクラテスの誓い(2015)【ヒポクラテスシリーズ】
- ヒポクラテスの憂鬱(2016)【ヒポクラテスシリーズ】
- ネメシスの使者(2017)
- 合唱 岬洋介の帰還(2020)【岬洋介シリーズ】
色々な作品に出張してますね。埼玉県警所属ですが合同捜査で東京の事件にも登場します。「カエル男」が初登場で、この中で彼は散々な目に遭い心に深い傷を負いますが、他の作品で元気な姿を見ることができるので安心です。
「テミスの剣」は上司の渡瀬が主人公になります。
2.警視庁刑事の犬養隼人
『犬養隼人』は警視庁刑事部捜査一課の刑事なので、基本的に東京の事件に登場します。
- 切り裂きジャックの告白(2013)
- 七色の毒(2013)
- ハーメルンの誘拐魔(2016)
- ドクター・デスの遺産(2017)
- 静おばあちゃんにおまかせ(2012)
- 合唱 岬洋介の帰還(2020)【岬洋介シリーズ】
- カインの傲慢(2020)
メインのシリーズを持っているだけあって、主にそこで頑張っているようです。
3.元犯罪者の辣腕弁護士・御子柴礼司
下記以外では、本人が登場せずともその存在を仄めかす描写が各所(各本)で見られる印象です。
- 贖罪の奏鳴曲(2011)
- 追憶の夜想曲(2013)
- 恩讐の鎮魂曲(2016)
- 悪徳の輪舞曲(2018)
- 合唱 岬洋介の帰還(2020)【岬洋介シリーズ】
4.岬洋介とその周辺の人々
岬洋介とその周辺の人物は、あちこちで見かけます。
『岬洋介』
- さよならドビュッシー(2010)
- おやすみラフマニノフ(2010)
- 要介護探偵の事件簿(2011)
- いつまでもショパン(2013)
- どこかでベートーヴェン(2016)
- もういちどベートーヴェン(2019)
- 合唱 岬洋介の帰還(2020)
『香月 玄太郎』は当初「さよならドビュッシー」で物語のはじめにだけに登場したのですが、スピンオフ以降に出た作品内では、元気いっぱい車いす生活を送っています。
- さよならドビュッシー(2010)
- 要介護探偵の事件簿(2011)
- 静おばあちゃんと要介護探偵(2018)
『高遠寺 静』は元高等裁判事で「静おばあちゃんにおまかせ」で探偵役として登場し、その後、要介護探偵とダブル主役などしています。
- 静おばあちゃんにおまかせ(2012)
- テミスの剣(2014)
- 静おばあちゃんと要介護探偵(2018)
- もういちどベートーヴェン(2019) 岬洋介ら司法修士生の指導教官として登場
『葛城公彦』は、警視庁捜査一課の刑事で、班は違いますが犬養の後輩に当たります。高円寺静の孫の女子大生・高円寺円の恋人です。
- 静おばあちゃんにおまかせ(2012)
- 切り裂きジャックの告白(2013)【犬養隼人シリーズ】
- TAS 特別師弟捜査員(2018)
シリーズものから読み進めていくのもおすすめですし、気に入ったキャラが出来たら登場する作品を中心に読んでいくのも面白いと思います。