中山七里『嗤う淑女』あらすじとネタバレ感想まとめ

中山七里さんの「嗤う淑女」のあらすじと感想をまとめました。

この話は読みやすいですが救いはありません。ひたすら被害者が不幸になっていくだけで、彼ら彼女らをそそのかして自分の思うがまま操るほぼ詐欺師の「淑女」だけが一人勝ちするという身もふたもない話なのです。

それなのに面白いのです。次こそは救いのある話かもと思いつつ、やはり不幸で終わるストーリー展開が見事なせいかもしれません。

「嗤う淑女」書籍概要

美貌と才能で次々とターゲットを不幸に陥れていく女性・蒲生美智留と、彼女に関わってしまった人たちの話を短編連載形式でまとめた一冊。「野々宮恭子」「鷺沼紗代」「野々宮弘樹」「古巻佳恵」「蒲生美智留」の5編から成る。

  • 嗤う淑女(2015年1月/実業之日本社)
  • 嗤う淑女(2017年12月/実業之日本社文庫)
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野々宮恭子

ぽっちゃり体型で貧血気味の中学生の恭子はクラス内でイジメに遭っていたが誰にも言えず、胸の内では悔しさや怒りを燃やしつつ惨めな毎日を送っていた。そんな時、いとこの蒲生美智留が転校してきた。完璧なモデル体型と美貌の美智留へとイジメの標的が移りほっとすると同時に申し訳ない気持ちになる恭子だったが、当の美智留自身は平然としているばかりか、逆にイジメの首謀者を他人を使って貶め、転校させてしまった。

貧血だと思っていた恭子だったが、再生不良性貧血を発症し骨髄移植のドナーを待ちながら入院生活を送ることになってしまった。家族の誰もが恭子とは適合しなかったためだ。だが恭子と適合すると知った美智留がドナーに手を挙げてくれたため恭子は復帰することができ、命の恩人である美智留に心酔していく。

美智留は家族に問題を抱えていた。父親と二人暮らしをしており、その父から酷い虐待を受けているのだ。その現場を目の当たりにした恭子は美智留を助けたいと願い、2人で父親を自殺に見せかけて排除することに成功した。

鷺沼紗代

銀行員の紗代は、どんなに頑張っても後から入った男性行員に次々と追い抜かれ出世されていくことに強いストレスを感じ、高額の買い物をすることで気持ちを保っている状態だった。だがいくつものクレジットカードの支払いに追われ、借金が積み重なり身動きがとれなくなった時、高校時代の同級生、野々宮恭子から生活コンサルタントの美智留を紹介される。

美智留から一時的な避難処置として架空口座を作る案を授けられた紗代は、恭子の協力のもと行員という立場を利用して銀行からお金を引き出し借金返済を済ませることができた。思った以上に簡単にお金が手に入ることで気が緩んだ紗代は歯止めが効かなくなり、気が付いた時には横領額はかなりのものになっていた。

再び美智留に泣きついた紗代は、横領額をチャラにする手段として未公開株の売買を提案される。そのために必要な金額は大きなものだった。二億を超える横領に手を染め株の売却益が入るのを待つ紗代だったが、ある日架空口座からお金を引き出そうとして驚く。二億円以上あるはずの預金残高が三千円ほどになっていたのだ。慌てて恭子や美智留に連絡をとろうとしたものの、電話は不通、事務所も解約されていた。

ようやく2人に騙されて二億円以上ものお金を奪われたことに気づく紗代だったが、もはや自分ではどうしようもない。気が付けば駅のホームの最前列に立っていた。電車がやって来た時、紗代の身体は前へ倒れていった。

野々宮弘樹

89社の会社に落ち家業の産廃処理業をお小遣い程度のお金で手伝っている弘樹の家に、従妹の美智留がしばらく滞在することになった。美貌に磨きがかかった美智留は女性経営者としても成功しており、思うように就職できなかった弘樹に寄り添い、弘樹の本心に気づかせてくれる。次第に弘樹の中で、不本意に自分を家に縛り付ける家族らを疎ましく思う気持ちが育っていった。

そんな頃、美智留と姉の恭子のただならぬ関係を知った弘樹は、美智留からあれは恭子に強要された関係であり助けてほしいと囁かれるに至って、姉の殺害を計画する。部屋で眠る恭子と、物音に気付いてやってきた父を殺害後、2人を産廃処理用の焼却施設に放り込んで灰にした。

逃げ出した母親の通報で逮捕された弘樹だったが、遺体が灰になってしまったこともあり、捜査陣は頭を抱えることになった。事件当夜、ホテルに泊まって難を逃れた美智留から野々宮家の家族関係などの証言を得るものの、その後ぷっつりと美智留は消えてしまった。

古巻佳恵

長年勤めていた会社でリストラに遭い、再就職をするどころか小説家になると言い張って部屋に閉じこもって何も生み出さない夫と二人の娘の生活のためパートを始めた佳恵は、日々の生活に疲れ切っていた。パート仲間の女性から蒲生美智留という女性を紹介された佳恵は、1回目のコンサルタントが無料ということもあり面会したところ、佳恵の現状を的確に理解し共感されたこともあり、すっかり美智留に心酔してしまった。

生活相談を重ねるうち自分の中で二人の娘を守ることが一番重要で、2年もの間家で何もしない夫は必要ないと考えるようになった。資産価値を高めるために保険の見直しをするといいという美智留の言葉に従い夫の死亡保険金を3億円に引き上げた佳恵は、いつまでたっても死にそうにない夫に倦み、酒に酔った夫が運転を誤り車ごと海に落ちて死んだが助手席にいた佳恵は助かったというシナリオを描き、実行した。

全てがうまくいったかと思ったものの、車から脱出する際、死に物狂いの夫に足を掴まれてひっかき傷をつけられたのをきっかけに、佳恵は逮捕された。取り調べで佳恵は、蒲生美智留の存在を明らかにした。

佳恵の事件を担当した名古屋の刑事は、佳恵の素人じみた犯行から黒幕は美智留ではないかと考え警察のデータベースで検索したもののヒットはしなかった。

蒲生美智留

蒲生美智留を検索した記録から、警視庁の麻生から名古屋の刑事のもとに電話がかかってきた。東京でも2件、鷺沼紗代と野々宮弘樹が起こした事件に彼女が関わっているのだという。また時効になってはいるものの、美智留の父が自殺として処理された事件も彼女と恭子が手を下したものではないかと麻生は見ていた。

紗代が自殺したと思われる電車の飛び込み画像を調べた結果、美智留が背中を押しているのがはっきりと確認できたため、警察は佳恵に美智留を呼び出すよう求め、やってきた美智留を殺人容疑で逮捕した。

美智留が指名したのは民事専門の弁護士だった。美智留自身の美貌と相まってマスコミでも大きく取り上げられた裁判が始まった。

問われるのは、鷺沼紗代を電車に突き飛ばした件と野々宮弘樹をそそのかして恭子と父親を殺害させた件、佳恵と共謀して夫を殺害した件だった。

裁判で美智留ははっきりと無罪を主張し、弁護人もそれにならった。

 

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裁判で美智留と弁護士は、あっと驚く手を使って無罪を勝ち取ります。

そのあたりのやり取りは、さすが「どんでん返しの帝王」と呼ばれる中山七里さんの本領発揮といったところです。

明らかに犯罪を犯しているものの、警察や裁判官、しいては自身の弁護人すら欺いて自由を手に入れた美智留の手腕は悪人ながら見事です。終わってみれば全てが美智留の手のひらで踊らされていただけでした。