法月綸太郎シリーズ第12弾『キングを探せ』あらすじとほんのりネタバレ感想

「キングを探せ」のあらすじと感想をまとめました。今回の長編は、一見何の繋がりもない4人の男たちによる四重交換殺人です。逃げる側、追う側両方の視点を楽しむことができるうえ、推理(パズル)としてもなかなか頭を使うので、紙とペンを用意して臨むのも面白いかと思います。

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「キングを探せ」書籍概要

安楽椅子探偵・法月綸太郎シリーズの12冊目となる長編ものです。

  • キングを探せ(2011年12月/講談社)
  • キングを探せ(2013年12月/講談社ノベルス)
  • キングを探せ(2015年9月/講談社文庫)

 

カラオケボックスに男たちが集まった。プロジェクトという名の交換殺人の結団式と詳細な打ち合わせのためだ。男たちはリーダー格のカネゴン以下、夢の島、イクル君、りさぴょんの4人。まずは誰が誰を殺すのかターゲット決めのくじ引きを行うことにした。それぞれのターゲットの頭文字が揃うトランプをくじ代わりに使い、その次に殺す順番をふたたびトランプを使って決めていく。

夢の島が引いたトランプは、スペードのAとハートのA。つまりターゲットA(安斎)をA(1番)に殺すことになっている。夢の島のターゲットである妻の妃名子(スペードのQ)は、2番目に殺される予定になっている。

登場人物

  • カネゴン:交換殺人を持ち掛けた人物。リーダー格
  • 夢の島:共犯者
  • イクル君:共犯者
  • りさぴょん:共犯者
  • 安斎秋則:吝嗇家。強盗殺人の被害者
  • 渡辺妃名子:うつ病療養中。首を絞めて死んだあと、自殺に偽装された
  • 上嶋悦史:ひきこもり。放火殺人の被害者
  • 古橋:保険調査員。妃名子の保険金調査をしている
  • 芹沢沙絵:妃名子の高校時代の友人

第一の事件

夢の島こと渡辺清志が担当するのは、イクル君の伯父・安斎秋則だった。イクル君からターゲットの情報と対策などを得ているので準備も万端だった。夜中に家を出て安斎宅に侵入すると寝ていた安斎の体の自由を奪い、強盗に見せかけるためタンス預金の隠し場所を聞きだした。1200万円分の札束が置いてある天井裏には安斎自身が作った警報装置の罠が仕掛けてあったが、引っかかることもなく400万円だけ持ち出すと、本来の目的である安斎の命を奪い逃走した。

翌朝、遺体発見の報を受けた警視庁の久能警部は捜査を開始し、被害者の遺産を一手に相続する甥・楢崎翔太に対し聞き取りを始めた。しかし怪しいと睨んでいた楢崎には死亡推定時刻には完璧なアリバイがあった。安斎の仕掛けた罠(天井裏の金は偽札だった)や警報装置のことも初耳だったようで、それらを話す時の表情などから久能は楢崎を容疑から外した。

だが楢崎翔太はイクル君だった。イクル君が引いたカードはスペードのJとハートの3。3番目の執行者だった。

第二の事件

渡辺妃名子が自宅で首を吊っているのが発見された。通報者は妃名子の夫である渡辺清志。うつを患っている妻から自殺をほのめかすメールが届いたので自宅へ人をやってほしいという連絡を受けて見つけたものだ。自殺を装っているが、首を絞めた後は明らかに他殺のものだったうえ、夫に届いたメールは妃名子の死後2時間以上経ってから発信されたというお粗末な偽装がほどこされていた。容疑者はかつて妃名子をストーカーしていたという男だったが、ネットなどから事件を知った男自身が弁護士を伴って身の潔白を証明するため警察へとやってきた。

捜査に行き詰った法月警視は息子の綸太郎に事件のことを話す。綸太郎は、妃名子の夫の前妻が最も強い動機を持つと指摘するが、前妻は清志が妃名子と再婚するよりも前に事故死していた。

妃名子の葬式が済んだ頃、彼女の友人だという芹沢が焼香のため訪ねてきた。自分が保険調査員にあることを話せば清志が妃名子の保険金を受け取れなくなると脅し20万円を要求した。清志は脅迫を受け入れ、芹沢に支払うため、安斎宅から奪った札束から20万円を抜き取った。

だが振込のためATMを捜査していた清志は突然激しく狼狽し、警備員の制止を振り切って道路へ飛び出し車に跳ねられ死亡した。清志が偽札を所持していたことを聞いた綸太郎が警察のデータベースに照合することを提案したところ、データベースに登録されていなかったにも関わらず偽札の出所が判明した。安斎の事件を担当している久能と繋がったのだ。

第三の事件

安斎の事件を通して楢崎と渡辺が繋がっているとみた警察が楢崎の家へ行くと、すでに逃亡したあとだった。だが慌てて逃げたのか通帳などと一緒にトランプが2枚残されていた。一方、渡辺の遺品の中にもトランプが2枚見つかっている。

♠A・♡A (渡辺清志)

♠J・♡3 (楢崎翔太)

単純な交換殺人と見ていた綸太郎だったが、もう一つ付け加えた。

♠A・♡A (渡辺清志)

♠Q・♡2 (???)

♠J・♡3 (楢崎翔太)

つまり、

♠A(安斎秋則)・♡A (渡辺清志)

♠Q(渡辺妃名子/妃をクイーンと見立てる)・♡2 (???)

♠J(第3のターゲット)・♡3 (楢崎翔太)

ということだ。消えた楢崎が狙う相手はイニシャルJの人物。調べた結果、該当しそうなのは4件だという。

  • 徐泰明(じょたいめい/鍼灸院の院長で刺殺)
  • 神宮寺優美(じんぐうじゆみ/専門学校生で絞殺)
  • 謝花さよ子(じゃはなさよこ/市民活動家・自宅に銃弾が撃ち込まれる)
  • 上嶋悦史(じょうしまえつし/引きこもりで放火による焼死)

上嶋が本命ではないかと法月警視は睨み綸太郎を伴って火災現場へ赴くと、そこには妃名子の死を調べていた保険調査員・古橋がいた。上嶋は古橋の同級生だったという。上嶋の弟・務とも懇意にしており、彼が犯人の筈はないと擁護しアリバイまで調べてきた。

だが上嶋務の周到ともいえるアリバイに作為を感じた綸太郎は、再び追加した。

♠A(安斎秋則) ・♡A (渡辺清志)

♠Q(渡辺妃名子)・♡2 (???)

♠J(上嶋悦史) ・♡3 (楢崎翔太)

♠K(第4のターゲット)・♡4(上嶋務)

トランプというカードの性質上、4番目のターゲットは「K」になる確率が高いという。次の犯行を未然に防ぐべくK=キングを探しだすため、警察(および綸太郎)は上嶋に対し、依然行方不明中の楢崎の名を語って手紙を偽造した。

Kは

偽の手紙を受け取った上嶋務ことりさぴょんはカネゴンに連絡を取り結団式を行ったカラオケボックスで顔を合わせた。二度と会わないという約束を違えたりさぴょんに対しカネゴンは怒りを露わにするが、りさぴょんは偽の手紙を利用して警察を出し抜くあるアイデアを提案し、2人はそちらへと方向転換することになった。

打ち合わせを終えカネゴンと別れたりさぴょんは警察へと自首した。一方、上嶋の共犯者を追っていた警察はカネゴンを尾行し正体を突き止める。関本昌彦というモデルガン専門店の経営者だった。任意出頭を求められた関本は犯行を自供した。Kと見られていた人物は、小出俊平。税理士で、関本は妻と小出の浮気を疑っていたそうだ。

よって事件の全貌は以下の通り。

♠A(安斎秋則/遺産目当て)   ・♡A (渡辺清志「夢の島」事故死)

♠Q(渡辺妃名子/保険金目当て) ・♡2 (関本昌彦「カネゴン」出頭)

♠J(上嶋悦史/兄に対する強い憎悪) ・♡3 (楢崎翔太「イクル君」行方不明)

♠K(小出俊平/妻の浮気相手だと疑う※未遂) ・♡4 (上嶋務「りさぴょん」出頭)

 

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本来ならこれで事件解決ですが、小出に対する殺意があまりにも薄すぎると不審を抱いた綸太郎は更なる仮説を組み立て、最終的に彼らが目論んでいた真の計画を暴くのですが、この先はどう書いても全てが露骨なネタバレになってしまうので、ほんのりネタバレ派の私がまとめるあらすじはここで終了です。

犯人も手口も作中で判明しているので、最大の謎は「もともと4人が立てていた計画」となります。偽の手紙が届いて急遽計画変更をしているので、不自然さ(ほころび)が生じたのです。

上嶋も関本もなぜ警察に捕まるような計画に方向転換したかというと、「実際に犯した罪よりも軽くすむよう警察を誘導したかったから」です。

警察もさんざん犯人たちに騙されましたけど、読者である私が一番作者に騙されました。物語を締めくくる最後の一文、非常にキレがいいです。