法月綸太郎シリーズ第13弾「犯罪ホロスコープⅡ」『三人の女神の問題』あらすじとほんのりネタバレ感想

法月綸太郎「星座シリーズ」後半の1冊になります。短編でスラスラ読めるのに、難解なのです。ギリシャ神話が絡んで謎が二転三転して混乱してくるのです。そこがまた面白いのですが。

様々な事象が複雑に絡み合っているので過不足が多いですが、「三人の女神の問題」のあらすじと感想をまとめました。

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犯罪ホロスコープⅡ「三人の女神の問題」書籍概要

法月綸太郎シリーズ12冊目。黄道12星座とギリシャ神話をモチーフにした短編集で、後半の天秤座から魚座までの「宿命の交わる城で」「三人の女神の問題」「オーキュロエの死」「錯乱のシランクス」「ガニュメデスの骸」「引き裂かれた双魚」の6作品からなる。

  • 犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題(2012年12月/光文社カッパ・ノベルス)
  • 犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題(2015年1月/光文社文庫)

天秤座 宿命の交わる城で

都内で起きた2件の殺人事件の現場でそれぞれタロットカードが見つかった。犯行の場所や手口は異なっているが、片方はマルセイユ版の正位置の<正義>、もう片方はウェイト版の正位置の<正義>のカードだった。話を聞いた綸太郎の助言で調べたところ、2人の被害者にはそれぞれ過去に殺したいほど憎んでいた人がおり、その人物たちが殺された際に容疑者として名前が挙がったが強固なアリバイがあったため捜査が行き詰っていた。綸太郎は過去の2件の事件は、今回の被害者2人による交換殺人ではないかと推理する。だが、それならば交換殺人を実行した2人を殺害しタロットカードを残したのは一体誰なのか。

 

今回の被害者は、その前に起きていた殺人事件の加害者で…と人間関係が入り組んでいてややこしいですが、捻りがあって読み応え抜群の話でした。タロットカードさえ残さなければ被害者2人の接点は見つからず(もしくは見つかるのにすごく時間を要した)事件が暴かれることもなかったかもしれないと思うと、まさに策士策に溺れるというやつですね。

この話が一番面白かったです。

蠍座 三人の女神の問題

解散した往年の女性3人組アイドルユニット「トライスター」の元所属事務所社長・折野が殺された。犯人は安田玲司という「トライスター」の元ファンクラブ会長という筋金入りのトライスター命の男で、解散して10年が経つ今でもファンサイトのブログを運営していた。安田はブログに犯行を告白する文章をのせたあと青酸カリで自殺しており、状況からみて自殺に間違いないとのことだった。だがブログをアップする1時間半ほど前、折野を殺害した後に自身の携帯からトライスターの3人にそれぞれ電話をかけた記録が残っていた。まるで任務完了の事後報告のようだと綸太郎たちは思った。

 

トライスターの誰かが折野と結託し、トライスター再結成話を持ち掛けて資金集めをしていたようで、3人のうちの誰が黒幕なのかを推理する話でした。電話をかけることによって安田は黒幕を特定したそうですが、消去法ではなく背理法使ったとのことです。数学苦手なので、このあたりの理論がさっぱり分かりませんでした。

オリオン(折野)が蠍座のアンタレス(安田玲司(アンタレスとも読める))から逃げているというギリシャ神話になぞられたストーリーを上手に当てはめているなと思います。騙されました。

射手座 オーキュロエの死

大木裕恵(オオキュロエをもじった名前)という偽名を使ってストーカー行為ともいえる業務妨害を働いていた女性が殺害された。容疑者は被害者が標的にしていた獣医師の男で、綸太郎は出版社を通じて獣医師の婚約者・佐治くるみから助けてほしいと相談を受ける。犯行動機、犯行時のアリバイなど獣医師にとっては不利なものばかりだという。詳しい話を聞いた綸太郎は、被害者がストーカーを働いた真の標的は婚約者のくるみの方ではないかと推理する。そんな時、くるみの父親が犯行を告白する遺書を残して自殺した。

 

短編の中に散りばめられているギリシャ神話に引きずられてしまいましたが、犯人の不用意な一言からバレてしまう至ってオーソドックスな犯人当てでした。サジタリアス(射手座)に関連する名前の説明などが詳しく出てきたら、それはそちらに引きずられてしまうってものです。

山羊座 錯乱のシランクス

音楽評論家の男が自宅マンションで体の自由を奪われた状態で死んでいるのが見つかった。被害者の担当編集者が連絡が取れなくなったのを心配してマンションに行ったが、被害者からは事前に旅行へ行くというメモを貰っており、スーツケースを持って出ていく姿も監視カメラに残っていると管理人に追い返されてしまい、途方に暮れて綸太郎に相談したことから遺体発見という流れだった。被害者は自由になる足の指を使って、壁にダイイングメッセージを残していた。それはまるで山羊座のシンボルマークを横に倒したような文字(?)だった。

 

魚座の短編で登場する胡散臭いオカルト研究科・堤豊秋が名前だけ登場します。被害者の音楽評論家が以前若い音楽家を一人引退に追い込んだ話が出てくるので、犯人はその関係者だろうと予想はつきます。ダイイングメッセージの意味を推理していくのですが、被害者がとっさにとった行動とはいえ、ややこしいです。

水瓶座 ガニュメデスの骸

「六人の女王の問題」事件で知り合いになったロサムンド山崎に呼び出された綸太郎は、不可解な話を聞くことになる。女装が趣味の男が、実業家の母親に頼まれて女の格好で預かった鞄を持って待ち合わせ場所に行くと、鞄を受け取った男から「息子は無事だ」という言葉を掛けられたというもの。渡す前に鞄の中身をこっそり確認したら一千万円が入っていたという。彼は一人っ子なので息子は自分しかいない。つまり誘拐された本人が、自分の身代金を犯人に渡したという奇妙な現象が起きていたのだ。そのうえニュースで目にした殺人事件の被害者が金を受け取った男だったので、驚き綸太郎に相談することにしたそうだ。

 

誘拐されたのはペットの亀だったそうですが、それにしても亀に一千万とはやりすぎな気がします。「息子」の謎もいまいちすっきりしません。やはり裏がありました。

被害者の男は小悪党ですが、かなり頭の良い(悪知恵の働く)人物だったかと思われます。今回の話の中では一番犯行動機に驚かされました。この短編集の中で一番納得できるというか、腑に落ちる動機でした。

ロザムンドさんいい味出してます。レギュラーになってほしいです。

魚座 引き裂かれた双魚

総合美容グループ「アフロス」の会長・碓田可南子が、オカルト研究家の堤にそそのかされ、25年前に4歳で溺死した一人息子の生まれ変わりを探していた。既に3人まで候補を絞り込んでおり、堤の前世療法セッションによって本人を特定するのだという。可南子の甥でアフロスの後継者である専務の依頼を受け、堤のイカサマを暴いて可南子の目を覚まさせることになった綸太郎は、よろずジャーナリストの飯田を伴ってセッション会場に乗り込む。セッション後、疲れたといって部屋で休んでいた堤が、意識不明で倒れているのが見つかった。堤は首から提げていた銀の魚のペンダントを握りしめていた。一方、息子の生まれ変わりを見つけたはずの可南子は、彼と直接会おうともせず甥である専務にも近づいてはいけないと厳命したのち、生まれ変わりの男を部下に命じて連れ去ってしまった。

 

ラスプーチンを狙っていたらしき堤は脳梗塞であっけなく舞台から去りました。この事件の最大の謎は、「可南子が周囲を省みることもなく必死に息子の生まれ変わりを探し続けていた真の目的」です。胡散臭い男にすがってまで見つけたかった息子の生まれ変わりなのに、なぜか嬉しそうな様子が見られないのです。

明らかに偽物である息子の生まれ変わりを本物だと信じ切っている可南子の言動から、綸太郎がようやく彼女の真の目的に辿り着きます。信じているフリではなく本当に信じていたからこその行動、という構図を作り上げたのが見事です。

 

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前半(牡羊座~乙女座)の感想はこちら

法月綸太郎シリーズ「犯罪ホロスコープⅠ」『六人の女王の問題』あらすじとほんのりネタバレ感想