法月綸太郎シリーズ第11弾「犯罪ホロスコープⅠ」『六人の女王の問題』あらすじとほんのりネタバレ感想

安楽椅子探偵の法月綸太郎シリーズに「星座シリーズ」ができました。牡羊座から魚座までの12の短編をまとめたもので、今作はその前半となっています。この方の本は設定が凝っているので、あらすじとして短くまとめるとどうしても取りこぼしが多くなってしまいます。

本当にざっくりとしたあらすじと感想になりますが、まとめてみました。

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犯罪ホロスコープⅠ「六人の女王の問題」書籍概要

法月綸太郎シリーズ11冊目。黄道12星座とギリシャ神話をモチーフにした短編集で、前半の牡羊座から乙女座までの「ギリシャ羊の秘密」「六人の女王の問題」「ゼウスの息子たち」「ヒュドラ第十の首」「鏡の中のライオン」「冥府に囚われた娘」の6作品からなる。

  • 犯罪ホロスコープI 六人の女王の問題(2008年1月/光文社カッパ・ノベルス)
  • 犯罪ホロスコープI 六人の女王の問題(2010年7月/光文社文庫)

牡羊座 ギリシャ羊の秘密

ホームレス体験ルポのため、一か月間のホームレス生活を送っていたよろずジャーナリストの飯田が世話になっていた男・アリョーシャさんがホームレス狩りに遭って殺され、被害者の体に掛けていた飯田のミリタリージャケットが奪われた。助けに入った飯田は、ふいをつかれて襲われ意識をなくす間際、若い男女2人組の会話を聞いていた。そのなかで女性がアリョーシャさんと顔見知りであるかのような発言をし、急いで脱いだため裏返しになったミリタリージャケット・ギリシャ神話の金の羊毛がトレードマークで有名なスピーワック社のゴールデンフリースを気にして持ち去ったことを綸太郎に話し、相談する。

 

犯人たちは行きずりのホームレス狩りではなく、目的があってアリョーシャさんを襲いました。ホームレスであるアリョーシャさんと若い男女の接点、なぜ彼らはジャケットを持ち去ったのかという部分を、警視である父親からの捜査情報とからめて明らかにしていきます。

事件の全貌が明らかになった時、第三者の目で見るとせつない話でした。

牡牛座 六人の女王の問題

サブカル系のテキスト芸人・虻原サトルが、険悪な間柄だった赤星剛四郎のマンションのベランダから転落死した。そばにはスポーツドリンクがいっぱいに入ったステンレスボトルも転がっていた。虻原は雑誌の連載をもっており、最終回である最新号には辞世の句とも言えそうな謎めいた俳句を2つと、その俳句を解くヒントになる文言を書き記していた。

虻原と赤星は以前は同じ劇団の旗揚げメンバーだったが女性関係を巡って虻原が退団、交流も絶えていたが、劇団10周年を記念して伝説の作品「プレアデスの復讐 ~七人のドラァグ・クイーン」の再演のため連絡を取り合っていたという。だが作品をリライトするにあたり激しく対立したとのことだった。

 

星の知識は詳しくないのですが、プレアデスというのは牡牛座のプレアデス星団のことのようです。虻原の残した2つの俳句を、ギリシャ神話のプレアデス星団のストーリーになぞられて書かれた劇団の作品タイトルにからめ、かつ「オイラーの三十六士官問題」という解のないパズルを解くことで事件の全容が分かる仕組みになっています。まず解けません。このパズルを作り上げた作者の法月さんがすごいです。

双子座 ゼウスの息子たち

缶詰めになって原稿を書くためリゾートホテル「四つ葉ホテル」に訪れた綸太郎。そのホテルのオーナー夫妻はどちらも双子で、それぞれの弟妹たちも夫婦だった。つまり2組の双子同士で2組のカップルになったのだが、新婚旅行中の事故で弟妹夫妻は亡くなっていた。フランスで修行したという三ツ星シェフの料理にいちゃもんを付けてオーナーに会おうとしたルポライターの男が、夜半過ぎに泊っていた部屋で殺された。音を聞いて駆けつけた綸太郎は、まだ息の合った男から「偽物にやられた」という言葉を聞く。

 

見事に作者に騙されました。ミスリードっぽいエピソードは分かったのですが、あまりにも自然に伏線がたくさん張られていたので、露骨なミスリードの方に気を取られて全く気づきませんでした。2組の双子と偽物という言葉が出てきたら、普通に騙されますよね。

この作品が一番面白かったです。

蟹座 ヒュドラ第十の首

霊園で男の遺体が見つかった。仙台から出てきた男で、住んでいるマンションは自殺した実の妹の部屋をそのまま引き継いでいたのだという。部屋には犯人が何かを探していた痕跡が残っており、指紋などは見つからなかったが、水槽の中を探った時に使用したと見られる軍手3枚とゴム手袋1組が見つかった。被害者の残したオンラインデータから、被害者は妹を自殺に追いこんだ「ヒラド ノブユキ」という不倫相手を探していたものと思われる。9人のヒラドノブユキのうち6人は該当しなかったのか候補から消されていた。残る3人のなかに犯人がいるのか。

 

ヒュドラというのは9つの首をもつ蛇で、巨大なハサミを持つ蟹とともにヘラクレスと戦ったのを称えられ、それぞれ天に召し上げられてうみへび座と蟹座になったとされています。タイトルに「第十の首」というのがついているので、3人以外に犯人がいるのだろうと邪なことを考えつつ読みました。その犯人に辿り着くまでの推理が素晴らしいです。奇数枚残っている軍手の謎と、3人のヒラドノブユキに関するプロフィールから事件の真相に肉薄していく過程を楽しむ話だと思います。

獅子座 鏡の中のライオン

獅子座生まれの華やかさを体現しているような女王様な女優・仙道美也子こと石橋葉月が、自宅マンションの地下駐車場の車の中で殺されているのが発見された。被害者は彼女らしくない安物のピアスを片方だけ身に着けており、生前新しい恋人に貰ったものだと周囲に匂わせていた。容疑者として挙がったのは、テレビ局のシナリオコンテストで賞を取った新人シナリオライター・滝本。応募作は被害者が主演を務めるテレビドラマのシナリオとして採用され、作品名は「鏡の中の野獣」という整形手術を題材とした心理サスペンスだった。滝本の部屋からはもう片方のピアスが見つかり、彼が犯人だと思った矢先テレビ局から雇われた弁護士による違法捜査ではないかという横槍で、法月警視の部下たちは窮地に立たされる。

話を聞いた綸太郎は、被害者に三月生まれの妹がいるのではないかと言い出す。

 

ギリシャ神話だけかと思いきや伝統芸能の「鏡獅子」にまで思考が及ぶ主人公の博学ぶりと推理に感服です。思考の飛躍はありましたが、「六人の女王の問題」のような難解なパズルはなく、オーソドックスな謎解きでした。

乙女座 冥府に囚われた娘

植物状態の人間からメールが送られてくる……という都市伝説そっくりの事件が起きた。一人暮らしをはじめたお嬢様育ちの女子大生が、短時間に大量のミネラルウォーターを飲んで「水中毒」によるこん睡状態に陥った。彼女からの「回復した」というメールを見てお見舞いに行った友人は、変わらず眠り続ける彼女を見て驚いたという。よろずジャーナリストの飯田に呼び出されてその話を聞いた綸太郎は、第三者によるいたずらだろうと一蹴するが、メールを送られたうちの一人が水中毒の正反対ともいえる「熱中症」で死んでいることを知り驚く。しかもその熱中症は、何者かによって故意に引き起こされたものだという。

 

他愛ない都市伝説じみた話が、警察も出張る殺人事件へと発展していきました。一体誰が、何の目的で都市伝説そっくりのメールを送ったのか、そのことがどう熱中症殺人事件へと繋がっていくのかを楽しむ短編です。短いストーリーの中で鮮やかに話が繋がっていくのが、読んでいて気持ちいいです。しかし犯人には全く同情する余地がないです。

 

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星座とギリシャ神話をモチーフとした短編集の前半6編でした。ギリシャ神話についてはややこしくて飛ばし読みした部分もありますが、基本的にはどの短編も読みやすいです。自分の星座にはどういう事件が充てられるのか、すごく気になります。後半が楽しみです。

 

犯罪ホロスコープ後半の感想はこちら

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