法月綸太郎シリーズ第15弾『法月綸太郎の消息』あらすじとネタバレ感想

法月綸太郎さんの「法月綸太郎の消息」のあらすじと感想をまとめました。

全4編のうち1作品が書き下ろし、2作品がシャーロック・ホームズ、エルキュール・ポワロの新解釈(深読み?)という形での原作ネタバレがある短編集です。ホームズとポワロの深読みについてはなるほど!とワクワクする一方、新作の事件の謎解き物が読みたいという思いにもなりました。

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「法月綸太郎の消息」書籍概要

ロジックの名手、新境地へ―!ドイルとホームズ。クリスティーとポアロ。そして法月綸太郎と法月綸太郎―。作家と名探偵、そのスリリングな関係に切り込み、本格ミステリの新たな地平を見出す華麗なる作品集!「BOOK」データベースより

  • 法月綸太郎の消息 (2019年9月/講談社)
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白面のたてがみ

よろずライターの飯田才蔵からの呼び出しで、綸太郎は「魚座 引き裂かれた双魚(「犯罪ホロスコープⅡ『三人の女神の問題』)」事件で関わった故堤豊秋の没原稿のコピーを手渡される。ホームズ愛好家団体からの講演依頼の草稿のようだが講演自体は中止になっており表には出ていないものだった。ホームズシリーズの作者、コナン・ドイルが心霊主義に傾倒していった時期に発表された2作品「白面の騎士」と「ライオンのたてがみ」について、ドイルの医学生時代の恩師・ジョゼフ・ベル博士の霊が出現したという新たな解釈がなされたもので、草稿のラストにはメモらしき奇妙な書き込みがあった。ダーウィン・フィッシュと呼ばれる魚に足が生えたようなイラストと「星が月になる?」という走り書きだ。この書き込みについての謎とともに草稿のコピーを託された綸太郎は、当時のコナン・ドイルを取り巻く状況など時代考証を交えた「白面の騎士」「ライオンのたてがみ」の新たな解釈をしてみせた。

 

書き下ろし作品です。コナン・ドイルの人間関係を把握しホームズシリーズも読破していることを前提とした内容になっているので、コアなホームズファン向けっぽい短編という印象を持ちました。

あべこべの遺書

初出「7人の名探偵」

殺さぬ先の自首

綸太郎が浮かない顔をして帰宅した法月警視に話を聞き出すと、二週間ほど前に人を殺したといって自首してきた男がいると説明を始めた。名前は棚橋洋行(41)。癌で亡くなった妻の復讐のため「ギャラリー藍」のオーナー・藍川佐由美(41)を彼女の自宅マンションで背後からガラスの文鎮で殴りつけて殺害したと自供している。だが警察官はギャラリーに連絡を取り直接佐由美本人が生きているのを確認したため棚橋を追い返した。そして5日前、佐由美がギャラリーで殺害されているのを義理の娘でスタッフの百華(27)が発見した。凶器はかまぼこ型のガラスの文鎮だった。棚橋に確認に行くと、自分が犯行に使ったのは妻からプレゼントされた羊羹型の特注の文鎮だと言い、自分はもう佐由美を殺して遺体を山に捨てたので同じ女を2度殺すわけがないと主張した。

棚橋と佐由美は学生時代付き合っており結婚する直前まで行ったが、佐由美の妊娠が嘘だとバレ棚橋は佐由美と別れた。そのことを恨みに思っていた佐由美は、仕事上でも付き合いのあった棚橋の妻が癌と診断された時、わざと標準治療を否定し様々な効果のない民間療法やオカルトグッズを勧めたためいざ治療を始めようと思った時にはすでに手遅れだった。棚橋は藁にもすがる思いで霊能力者の稲生柳子にすがったという。

綸太郎は、ガラスの文鎮という棚橋の自首内容と実際の凶器との間で齟齬があることに注目し、伝聞で「ガラスの文鎮」としか聞かなかった百華と佐由美の秘書・黒崎慎也の犯行と考えたが、犯行時間帯、2人は店で話し合いをしていたというアリバイがあった。また佐由美の再婚相手の娘というだけで養子縁組をしていない百華は佐由美の遺産を相続できないため、殺害するメリットが何もなかった。むしろ棚橋の狂言を受けて佐由美の財産をうまく引き継ぐ相談を黒崎としていたため、遺言も残さず死んでしまった佐由美にショックを受けていた。

綸太郎は、法月警視が霊能力者と自称する稲生の所へ直接出向いた時の話を聞くと、自己中心的で執着心が非常に強いという佐由美の性格から、彼女自身が昔の男(棚橋)への恨みを晴らすため、棚橋の自首騒ぎに乗じて「佐由美殺害」の自作自演を行ったのではないかと推理する。

 

佐由美は棚橋をギャラリーに呼び出したあと昏倒し、棚橋に襲われたと嘘の証言するつもりだったようですが、犯人の手によって本当に殺害されたようです。推理が目まぐるしく二転三転する場面に出くわすと、法月綸太郎シリーズを読んでいるのだなと実感します。

カーテンコール

ミニシアター系の人気劇団「アルゴNO.2」のロザムンド山崎と細川畝明に呼び出された綸太郎は、人気脚本家・新堀右史による舞台、アガサクリスティーのポアロシリーズの1つ「象は忘れない」の推理監修を依頼され引き受けることになった。ロザムンドは準レギュラーのオリヴァ夫人役、細川はポアロの助手のジョージ役を務めるという。ポアロ最後の事件となる「カーテン」の前哨戦としての舞台で、ポアロにはアシルという双子の兄弟がおり、ジョージはポアロの甥という設定が加えられるらしい。原作の「ビッグ4」でアシルの存在に疑問を持つ綸太郎によって、新堀、ロザムンド、細川、綸太郎の4人は勉強会という名の「アシル・ポワロ」の存在の有無について話し合いを行うことになった。

だが当日、新堀はインフルエンザで欠席となり、代わりに「国際クリスティー評議会」の富田斤(実際は「片」でペンスと読む)が参加し、原作との乖離がないか目を光らせることになった。細川、ロザムンド、綸太郎はそれぞれが持ち寄った「アシル実在説」を富田の前で発表していくことになる。

 

「白面のたてがみ」に続いての原作の深読み(新解釈?)ものになります。ここまで深く本を読み込むことがないので素直に感心します。

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シャーロック・ホームズもエルキュール・ポワロもだいぶ昔に読んだっきりで有名どころ以外ほとんど内容を覚えていないので、読み返す良いきっかけになりそうです。ホームズ、ポワロ以外にエラリークィーンのドルリー・レーンシリーズのラストのネタバレもさらっと書かれています。