法月綸太郎シリーズ第1弾『雪密室』あらすじとほんのりネタバレ感想

「雪密室」のあらすじと感想をまとめました。ものすごく色々な要素が詰まっていて全部を書き出すと非常に長くなってしまいそうなので、密室での殺人事件に関する部分だけをまとめています。

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「雪密室」書籍概要

警視庁の警視と小説家の息子コンビが事件を解決する「法月綸太郎シリーズ」第1弾となる長編ものです。

  • 雪密室(1989年4月/講談社ノベルス)
  • 雪密室(1992年3月/講談社文庫)

 

脅迫という名の招待状を受け取った法月警視は、ある人物の密命を受けて一週間の休暇をとり伊賀沼にある沢渡冬規が経営する「月蝕荘」へと向かった。そこに招かれていたのは同じように何等かの脅迫を受けたであろう警視を含む5人の客と、沢渡の元妻である篠塚真棹・国夫夫妻たちだった。

登場人物

  • 法月綸太郎:小説家
  • 法月貞夫:警視庁に勤務する警視。綸太郎の父親。
  • 沢渡冬規:「月蝕荘」経営者。伝説的なプログラミング技術を持っていたらしい。
  • 峰 裕子:月蝕荘を手伝っている。
  • 篠塚真棹:冬規の元妻。月蝕荘の離れで寝泊まりする。
  • 篠塚国夫:真棹の夫で資産家。冬規の友人。
  • 沢渡恭平:招待客。冬樹の実弟。官僚
  • 真藤 亮:招待客。陶芸家
  • 真藤香織:亮の娘。幼児
  • 武宮俊作:招待客。医者。
  • 中山美和子:招待客。モデル
  • 柴崎:伊賀沼署の刑事

事件の夜

伊賀沼駅で一緒になった中山美和子とともに篠塚国夫の迎えの車で月蝕荘へ入った警視は、自分以外の4人の招待客(真藤、武宮、中山、沢渡恭平)に注意を払っていた。会は夜8時過ぎに戻ってきた真棹の到着を待って始まった。今回の集まりの名目は、沢渡冬規と元妻・真棹の結婚記念日という変わった催しだった。真棹自身元夫に未練がある言動をしているが、現夫の国夫は気にした風もない。

会食も終わりそれぞれが自由に過ごす中、月蝕荘のそばにある渓流のせせらぎが亡くなった妻との思い出を刺激して眠れなくなった警視は、冬規の部屋を訪ねる。午前1時過ぎのことだった。とりとめのない話をし部屋を辞したのは午前2時5分頃。窓の外では初雪が降り始めていた。

水の音が気になるならと冬規から渡された耳栓をして眠りについた警視だったが、誰かに体を揺すられ起こされる。朦朧とする意識の中誰なのか尋ねると恭平だと返事があり、真棹のいる離れからずっと電話の呼び出し音が鳴り続けていると言われる。不吉な予感がした警視を残したまま恭平は離れへ向かって部屋を飛び出した。コートを羽織って警視も後を追う。午前5時45分頃のことだった。

玄関を開けると一面の雪景色だった。そこに今付いたばかりのスニーカーの足跡が一筋見える。20mほど先の離れの玄関口に恭平の背中が見えた。スペアキーを要求する恭平の大声に従い、ロビーに保管されている鍵を手に警視は離れへと急いだ。もちろん足跡を消さないよう気を付け、周囲の様子に注意を払いながら。離れは玄関に近い方からリビング、寝室とあり、暗闇の中電気を付けながら部屋へ入った警視は、寝室で首を吊っている真棹を発見した。

離れの鍵は真棹が持っていたものと、ロビーに保管しているスペアの2つだけ。沢渡冬樹が作ったオリジナルの鍵で、複製するには1か月はかかる代物だという。死亡推定時刻には雪が降り積もっていたにもかかわらず犯人が出入りしたらしき足跡は残っていない。現場は完全な密室で真棹の身体には自殺と見られる痕跡しか残っておらず、最近心臓が弱くなっていたこと、株で穴を空けたことを気に病んでの衝動的な死として処理されようとしていた。

だが警視はかたくなに他殺説を唱える。脅迫を生業としていたような真棹が自殺するはずがない。おそらく今晩も誰かを脅迫しており、その誰かによって殺されたに違いなかった。しかし他殺の証拠は見つからない。頼りにしている息子は小説の締め切りと戦っていてそっけない。

警視にある命令をした男の穏便にすませろという圧力によって、伊賀沼署も自殺で事件を終えようとしていた。

捜査

真棹の遺体発見後、中山美和子が姿を消した。彼女も真棹に脅迫を受けていた一人だが、真棹の死亡を知り、周囲に不用意に過去を暴かれるのを恐れて逃げ出したに違いない。警察が美和子を追うがなかなか見つからない。

月蝕荘に泊まった人間一人一人に話を聞いて回るが、これといった手掛かりも得られない。他殺=月蝕荘の滞在者が容疑者となるため、警視は次第に孤立していく。

そんななか陶芸家の真藤からある情報がもたらされた。真棹がターゲットを呼び出すメモ(午前1時に離れに来いという内容)を拾ったというのだ。真藤が脅迫を受けていたネタを公にしないことを交換条件にメモを手に入れた。

夜になり、未だ見つからない美和子の捜索に月蝕荘のメンバーも加わることになる。その途中、武宮が姿を消した。武宮の言動から彼の脅迫ネタが未解決事件ではないかと睨んでいた警視は一人月蝕荘へ戻る。離れで何かを探しているらしき人物を捕えようとした矢先、相手に先を越され、殴られた警視は昏倒した。

探偵登場

目が覚めると息子の綸太郎がいた。締め切りの都合をつけて駆けつけたようで、峰裕子が倒れていた警視を見つけ介抱してくれたことを知る。また武宮が検問に引っかかり捕まったことも教えられた。

綸太郎の捜査が始まる。離れを見に行き隠し金庫を見つけたが、中はからっぽだった。

沢渡冬規に話を聞きに行った際、警視が借りていた耳栓を返した時の冬規の表情を見て綸太郎は何かに気が付いた。改めて警視がその時の様子を詳細に話して聞かせ……警視も表情の理由に気が付いた。あとは全員の足のサイズを確認できれば事件は解決だと綸太郎は言った。

密室のトリックは解けた。あとは証拠だった。自殺にしか見えない状態の真棹が、本当は他殺だったという証拠を示さないと伊賀沼署を動かせない。証拠を迫られて返答に詰まる綸太郎の隣で、香織のお気に入りのシロクマのぬいぐるみを見た警視が「他殺を証明することができる」と言い切った。

犯人は

実際に手を下したのは一人かもしれませんが、密室は一人では作れませんでした。机上ではうまく行きそうな気もしますが、実際にやるとなるとどうなんでしょう? 犯人たちの身体能力がよほど高くて警察の捜査能力がよほど低くないとうまくいきそうにない気もします。

最初から登場して途中に消えて、最後にまた出てきた美和子さんはミスリード要員だったのでしょうか。彼女の存在がいまいち希薄でした。

 

作者の初期の作品とあってか、構成としてはよく考えられているけれど一つ一つの描写がいちいち細かく、全体的につたない気がします。途中に読者への挑戦状が入っているので、トリックを見破るヒントなども過不足なく提示しなければならないという条件では、こういう作風になるのも仕方ないかもしれません。

颯爽と推理している今の名探偵・綸太郎のイメージで久々に読み返したので、何となく推理にぎごちなさを感じたのも事実です。