犯人は誰?貫井徳郎の『プリズム』あらすじとネタバレ感想まとめ

「プリズム」のあらすじと感想をまとめました。

「プリズム」は読み終わった後モヤモヤする本です。なぜならば真犯人が分からないままだからです。被害者の周りにいる4人の語り手たちが、自分たちが理解している範囲で犯人捜しをしていくというストーリーなのですが、4人ともが違う人物を犯人と結論づけて終わるのです。そういう趣旨の本のようです。犯人も犯人に至るまでの過程も自由にやっていい本なのです。犯人を見つける本ではなく、犯人を捜す過程(推理)を楽しむ本のようです。

犯人は誰でもいいし何通りの推理があってもいいという、「結局犯人は誰なの?」本です。

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「プリズム」書籍概要

一人暮らしをしていた小学校教諭の山浦美津子が、自宅アパートで死んでいるのが見つかった。自殺か他殺かはっきりしない状況だという。

  • プリズム(1999年10月/実業之日本社)
  • プリズム(2003年1月/創元推理文庫)

Scene-1 虚飾の仮面

  • 語り手:小宮山真司(ぼく)。5年2組。
  • 被害者との関係:クラス担任の先生と生徒

ホワイトデーの翌日、登校したぼくたちは、担任のミツコ先生が教室に来ないことをを不思議に思っていた。教頭先生がやってきて自習だといい、給食を食べた後、ぼくたちのクラスだけ下校させられる。その頃にはぼくたちの間にミツコ先生が亡くなったのではないかという噂が広まっていたが大人は何一つ教えてくれない。下校ルートが同じぼくと友達の柴野、クラス委員の山名と村瀬の4人は、ミツコ先生について自分たちで調べてみることにした。

【ミツコ先生像】

  • 若くてきれい
  • 大人から見たらどうでもいいことを一緒に怒ったり悲しんだりしてくれる
  • みんなから好かれている先生

【事件について】

  • 頭を殴られたことが死因。凶器はアンティーク時計。
  • クローゼットに凭れるようにして死んでいた。アンティーク時計はもともとクローゼットの上に置いてあったもの。
  • 何者かが窓から侵入した形跡があった。ガラス切りを使って窓のロックを外していた。
  • 最近強盗が出ている。
  • 保護者説明会で教頭が「他殺」だと言っていたが警察ははっきりとしていない。通り魔かもしれないし、落ちてきた時計に頭をぶつけた事故かもしれない。
  • 部屋の中は荒らされた様子はない。乱暴された様子もない。
  • どこかで飲んできたらしくミツコ先生は酔っていた。
  • 解剖の結果睡眠薬が検出されたが、ミツコ先生に睡眠薬を飲む習慣はなく、睡眠薬入りのチョコレートを食べたものと思われる。
  • チョコレートはバレンタインのお返しとして同僚の南条先生から宅配便で送られたものだが、南条先生はチョコを送ったことは認めたものの睡眠薬については頑なに否定している。
  • 宅配便の伝票は残っていないが、荷物を受け取った大家が差出人の名前を憶えていた。
  • 大家は宅配業者から午後4時頃荷物を預かり、午後10時過ぎに酔ったミツコ先生が引き取りにきた。
  • 南条先生と桜井先生が付き合っているという噂があった。

南条先生はボディービルをやっていそうような体形の結構かっこいい先生で5年1組の担任だ。女子からも人気がある。だけど山名と村瀬は、南条先生のことを嫌っているみたい。

 

【ぼくの推理】

犯人はミツコ先生を殺すつもりで家を訪ねていった。睡眠薬入りチョコレートはミツコ先生の意識を朦朧とさせた状態でないと殺す自信がなかったためで、つまり非力な女性。そしてミツコ先生が警戒しない人間で、ミツコ先生がチョコレートの箱を開封したあとで隙を見て睡眠薬入りのものと箱ごとすり替えた。そんなことができるのは、南条先生がどんなチョコを送ったのか予想できる人物=南条先生と付き合っていた人=桜井先生だ。殺害動機は嫉妬。ミツコ先生が殺された後、強盗が窓を破って侵入したが死体に驚いて何も取らずに逃走した。

Scene-2 仮面の裏側

  • 語り手:桜井先生(あたし)。5年3組担任。
  • 被害者との関係:同僚

それは一本の電話から始まった。動転した様子の教頭からの山浦先生が亡くなったという連絡だったが、同僚が亡くなってもあたしたちには子どもがいる。授業を休むわけにはいかないのだ。校長からの説明では山浦先生が殺されたことしか分からない。山浦先生は真っ白で天使のような人だったが、その分疲れを感じる場面もあった。彼女の死を知らされたとき、一瞬とはいえホッとしてしまった自分の醜悪さに嫌悪を覚えたあたしは、あたしなりに事件を調べることにした。

【山浦美津子像】

  • キュートな外見で中身も可愛らしい。気さくで彼女のことを悪く言う人を聞いたことがない。
  • 可愛らしすぎて、無邪気さにたまにイライラさせられる。
  • 仕事熱心で体当たりで子どもに接する。一番人気の先生だった。
  • 真っ白で天使のような先生で、接していると疲れを感じる。友人として付き合うには鬱陶しい。

【事件について】

  • 美津子は当たり所が悪く即死だった。
  • 玄関の鍵は開いていた。チェーンも掛かってなくこじ開けた形跡もない。
  • 死亡推定時刻は夜の10時から11時。翌朝7時過ぎに匿名の110番通報があり、警察官が遺体を発見した。
  • 通報はパソコンの合成音だったので、性別もはっきりしない。
  • 南条と付き合っていたので、南条が睡眠薬を使って女性によからぬ振る舞いをしようとした前科があることを知っている(すでに別れている)。
  • 南条はデパートで購入したチョコを一度も開封せずに宅配便で送った。と主張している。
  • 南条は一度も桜井にチョコのお返しをしたことがない。
  • 美津子には妹がいて、うりふたつ。
  • 事件当日、山浦先生は大学時代のテニスサークルのメンバーと飲んでいた。その中に学生時代の恋人がいた。
  • 元恋人の名前は井筒という医者。とっくに山浦先生とは別れ、現在は大峰ゆかりと結婚を前提とした付き合いをしている。ゆかりと美津子は友人で、井筒を巡って以前感情の行き違いがあり、ゆかりが腹を立てていたが美津子は彼女の感情に対し無頓着だった。
  • サークルの集まりのあと、ゆかりと美津子は9時過ぎまで喫茶店でお喋りをしていた。
  • 集まりの際、美津子は井筒を家に誘っており、井筒は言われた通り夜11時に美津子のアパートに行った。
  • ベルを鳴らしても反応がないのでドアを開けるとすでに美津子は死んでいた。医者の井筒は死亡を確認したが、通報せずに立ち去った。
  • 井筒と美津子の仲を疑っていたゆかりは、午後10時20分頃に美津子のアパートを訪ね、井筒が美津子の部屋から出てくるところを目撃した。その後部屋に入ると、すでに美津子は死んでいた。

 

【あたしの推理】

山浦先生の家へ行った井筒が何かの弾みで山浦先生を殺してしまった。いったんは逃げた(10時20頃)が細工をするため再びアパートにやってきた(11時)。チョコレートが届いていることに気づいていた井筒は、家から注射器を持ってくるとチョコに睡眠薬を注入し、チューブを使って山浦先生の胃の中にも睡眠薬を流し込んだ。宅配便の伝票を持ち去ったのは、うっかり指紋を付けてしまったから。

Scene-3 裏側の感情

  • 語り手:井筒(おれ)。大学病院で眼科医をしている。
  • 被害者との関係:元彼(女王と下僕のような関係だった)

桜井はおれが犯人だと言ったが、眼科医であるおれがチューブをうまく操ることなどできる筈もない。何故ゆかりは10時20分頃におれを見たなどと嘘をついたのか。それだけおれに対し怒りを溜めていたということか。美津子に誘われて、おれは断ることができずにアパートへ赴いた。いまだに続く女王と下僕の呪縛を断ち切るため、おれなりに調べてみることにした。

【山浦美津子像】

  • 朗らかで可愛らしく、一緒にいて楽しく、我がままで他人の気持ちが分からない子ども同然の女
  • そばにいられるだけで幸せなくらい、圧倒的な魅力を持っていた
  • 他人を意のままに従えるのは当然だと思い、他人に合わせる術を知らない女

【事件について】

  • 11時にアパートを訪ねた時、すでに美津子は死んでいた。
  • 美津子の香典にPTAという名前で10万円包まれていたものがあった。妹・杏子の勘では、美津子はPTAの誰かと不倫していたのではないかという。
  • 警察から戻ってきた美津子のパソコン内にワープロソフトで綴った日記が残されており、不倫相手が「K」というイニシャルで、担任しているクラスの子の親だと分かった。
  • 杏子から手に入れたPTA名簿の中に、同じ大学病院の外科医・小宮山の名を見つけた。

 

【おれの推理】

美津子の不倫相手「K」は外科医の小宮山茂樹だった。彼ならば桜井の推理通りの犯行が行える。動機は不倫関係にまつわるもの。

Scene-4 感情の虚飾

  • 語り手:小宮山茂樹(わたし)。外科医で小宮山真司の父。
  • 被害者との関係:不倫相手

保護者として葬式に参列したわたしは、PTAという名で10万の香典を包んだ。不倫相手の美津子に対し何もせずにはいられなかったのだ。最初は家庭訪問時に担任と保護者として相対しただけだったが、その後偶然デパートで見かけた彼女は、声を掛けずにいられないほど孤独に見えたのだ。社会的地位を失いたくないわたしは卑怯だった。

【山浦美津子像】

  • 堅すぎず、軽薄でもなく、適度に抑制があり適度に奔放
  • 舞台で例えると明らかに主役
  • 目まぐるしく姿を変える万華鏡か、様々な色の光を乱舞させるプリズムのよう

【事件について】

  • 死亡推定時刻、わたしは自宅の書斎にこもっていた。電話もなかった。
  • 妻と息子はアリバイの証明にはならず、窓からこっそり外に出ることは可能だと刑事に言われた。警察には美津子との関係も包み隠さず話したが、自分の容疑が晴れたのかは分からない。
  • 酒を飲んだあとに睡眠薬を服めば、効果はてきめんになる。美津子の死は事故かもしれない。
  • 匿名の手紙がわたしに送られてきた。南条が図書室で女子生徒に睡眠薬をのませていたずらしようとしたことがあるという告発だった。のちに送ったのは息子の同級生・山名さんだと判明。
  • 夜遅く塾帰りの山名さんを家まで送った縁から、パソコンのチャット機能を使い南条の図書室での前科について山名さんから聞くことができた。被害者は山名さんの友人である村瀬さんではないかと推察される。親には頼れないと判断したため、わたしに南条を追及する白羽の矢が立ったのだろう。
  • 息子から情報を得ようとするが、無関心

 

【わたしの推理】

山名さんと村瀬さんは南条の本性を知っていた。2人は南条に復讐したいと思っており、南条が美津子に睡眠薬入りのチョコを送ったことを知った。そんな状況で美津子が殺されれば南条に疑いが向く。アンティーク時計なら子どもでも可能だ。睡眠薬が効いたころ窓から押し入った南条は、美津子が死んでいるのに驚愕し、宅配伝票を慌てて持ち去った。山名さんと村瀬さんは事を起こす際、誰かを頼ろうと思ったに違いない。その相手として、わたしの息子は最適だったのではないだろうか。息子は村瀬さんのことが好きなようだし、事件当時に家から抜け出せたのはわたしだけではない。息子が事件に無関心なのは、誰が犯人か知っているからに違いなかった。何一つ証拠はない、これは私の胸の内に収めておく妄想だった。

まとめ

あとがきで作者は10通りの仮説を本の中に書いたとあります。

  1. チョコレートを睡眠薬入りのものとすり替えることができた大家
  2. 美津子に対して下心のあった南条が睡眠薬入りチョコを送って窓から侵入した
  3. 嫉妬心にかられた桜井
  4. 美津子によからぬ思いを抱いた宅配業者が、荷物のすり替えをした
  5. 男関係諸々で美津子に腹を立てていたゆかり
  6. 弾みで殺めてしまった井筒
  7. 美津子そっくりの妹・杏子が、美津子のふりをして大家の所へ荷物を受け取りに行きすり替えた
  8. 不倫相手の小宮山茂樹
  9. 送られてきたチョコを食べたあとの不慮の事故
  10. 南条への復讐に手を貸した息子(小宮山真司)

おそらく上記のようなものだと思います。推定犯人はぐるりと回って最初の語り手に戻ってきています。10通りの犯人説の中にはすぐに否定される仮説もあり、真犯人像は本書でははっきりしていませんし、あとがきでも好きなように解釈して良い旨が記してあります。

そういうわけで、最後に僭越ながら私自身の解釈を書いて感想代わりにしたいと思います。

 

【ブログ主の推理】

ひょんなことから学校の図書室で南条が恋人の桜井に対して睡眠薬を使ってよからぬことをしていたのを知った真っすぐな気性の山名は、南条に対する許せない思いを抱き、クラス担任であるミツコ先生に密かに相談した。校長に話を持って行っても南条は証拠はないとしらばっくれ、恋人で大人の桜井先生は口を閉ざすに違いない。山名の思いを汲んで南条に一泡吹かせるため、ミツコ先生と山名は一計を講じることにした。睡眠薬を使って南条を罠にかける作戦だ。

  1. まずミツコ先生が職員室の人目のある場所で、南条にバレンタインの義理チョコを渡す。
  2. 元恋人の目がある学校では、南条はホワイトデーのお返しをするのを控えるに違いない。たとえば宅配などの手段を使い、学校には無関係の方法をとるだろう。
  3. 南条の名前で送られてきたチョコにミツコ先生が睡眠薬を仕込み、わざと少しだけチョコを食べて眠ってしまう。
  4. そこにプライベートな相談事のため家を訪ねてきた体で山名が眠り込んでいるミツコ先生を発見し、南条の仕業だと騒ぎ立てる。睡眠薬入りのチョコが証拠であり、南条の前科を告発する「図書室女子生徒いたずら事件」もでっちあげて用意した。
  5. 警察沙汰にならなくても、そのような騒ぎを起こしたことで南条の社会的立場は失墜する。

子どもっぽいところがあるミツコ先生は自分たちの立てた作戦にかなり乗り気になり、作戦の補強のため夜の11時に訪問するよう井筒を誘い、善意の発見者に仕立てることにした。山名と井筒の訪問を見越して、眠っている自分をスムーズに発見してもらうため玄関の鍵は開けたままにしておいた。

だがここで予想外のことが起こった。お酒を飲み過ぎたミツコ先生は、自分で仕込んだ睡眠薬の効きが強すぎてフラフラになってしまったのだ。どんとクローゼットに体をぶつけた拍子に落ちてきたアンティーク時計に頭を強打され、当たり所が悪く死んでしまった。

そうとは知らず塾へ行くふりをして自宅を出た山名は、ミツコ先生の家へ行き彼女の死体を発見した。驚いたものの睡眠薬の細工に使った注射器がテーブルの上にあるのに気づき、とっさにそれを持ってアパートを去る。その後やってきたゆかりは同じく遺体に驚いたが、南条の名前が書いてある宅配伝票を目にした途端、それさえなければ11時にやってくる井筒に第一発見者として疑いを向けさせることができると思い付き、通報しないまま伝票を持ち去る。

11時にやってきた井筒も、無用な疑いをかけられたくないため通報せず立ち去る。

その後町をにぎわす強盗がミツコ先生宅へ忍び込んだが、遺体に驚き何もせず逃走した。

翌朝、山名はパソコンを使って110番通報し口を噤んだ。南条を貶めるためにでっちあげた図書室での女子生徒いたずら事件は、南条が思うように警察に逮捕されず学校にも普通に勤務する姿に我慢しきれず、南条を糾弾するのに最適だと目を付けた小宮山茂樹に手紙とメールで送られることになった。

 

以上です。お粗末様でした。