大倉崇裕「警視庁いきもの係」シリーズ第5弾『アロワナを愛した容疑者』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「アロワナを愛した容疑者」のあらすじと感想をまとめました。

今までの表紙は須藤&薄だったのが、今回は薄&福家警部補になっていました。変わり者2人のコラボが読めるのかと期待度が高まる一冊です。

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「アロワナを愛した容疑者」書籍概要

「アロワナ」「タカ」「ラン」がからむ犯罪を見破れ! 笑えて、学べて、最後に驚く「いきもの」ミステリー!! 「BOOK」データベースより

  • アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係(2019年6月/講談社)

タカを愛した容疑者

須藤は鬼頭管理官から「蜂に惹かれた容疑者」事件で2人が「ギヤマンの鐘」の標的になったことを知らされる。薄が三週間の長期休暇に入り暇を持て余していた須藤は、日塔から運転担当の芦部に内緒で呼び出しを受けた。JRとバスを乗り継いで2時間余り、広大な自然が広がり民家が点在する場所で、薄は殺人事件の容疑者になっていた。

被害者は生活保護を受けている70代の出渕榮太郎、玄関にあった雪かき用のスコップで顔の一撃以外全身を滅多打ちにされていたのを、家を訪ねてきた甥の七郎が発見した。榮太郎は悪く受け取ったお金で酒を飲み、ホームレスを招いて騒いだりと評判は悪く、先日も愛犬がいなくなったと騒いで薄の所へ怒鳴り込んでいた。薄が留守を預かっている家では鷹の一刀を飼っており、榮太郎は一刀が愛犬を襲ったのだと怒っていたが、最終的には納得して帰ってもらったと薄は言った。薄はこの三週間の間一度も一刀を外で飛ばしていないというが、河川敷で鷹が飛んでいるという目撃情報もあった。

所轄の刑事は薄の取り調べを行いたがっていたが無実を信じる日塔により抑えられ、須藤は解決を求められた。これで犯人が捕まると言って薄は一刀を連れて河川敷まで歩いていくと、茂みに隠れて様子を伺っていた中本という男を見つけ出した。ギヤマンの鐘の信者かと警戒する須藤に対し、中本は自分もこっそりと鷹を飼っているものの躾け方が分からず、一刀を見に来たのだと話す。河川敷を飛んでいた鷹は、中本が訓練していたものだと分かったが、それだけでは薄の容疑は晴れない。

2人は甥の七郎に榮太郎が愛犬を非常に可愛がっていたという話を聞いた後、ホームレスにも話を聞きに行く。ホームレス仲間によると、榮太郎と懇意にしていた田中という人物が姿を消していることが分かった。薄は、川辺のどこかに死体が埋まっているはずだといい一刀を連れ出す。少し離れた茂みで薄を見張る須藤と日塔の視界に、ボウガンを持って薄と一刀に対峙するホームレス姿の男が現れる。と同時に背後に殺気を感じた須藤は、ギヤマンの鐘のバッヂを付けた男が襲い掛かってきた。

 

薄が容疑者となった事件では2つの殺人事件が起こっていました。犯人は須藤と薄の情報と引き換えにボウガンを手に入れ、埋められた死体を見つけようとする一刀を射るつもりでしたが、根っからの悪人ではないため撃てず簡単に取り押さえられました。

アロワナを愛した容疑者

一審で死刑判決が出、現在は二審待ちだという「蜂に惹かれた容疑者」事件の主犯が「ギヤマンの鐘」と通じている弁護士との接見回数を増やしているらしい。須藤は鬼頭管理官から注意するよう警告を受ける。また人事交流で京都へ派遣されている福家警部補から須藤に電話がかかってきた。これから送る動画を薄に見せ、指示する住所へと行くよう言われる。

福家の指示した場所へと向かう道すがらアロワナの動画を見た薄は、現在古代魚愛好者たちの間で話題になっているものだと説明する。10年前シンガポールのアロワナコンテストで金賞をとったアロワナで、直後に盗まれて以降行方が分からなくなっていたものだった。そのアロワナが堂々と公開されている。しかも日本にいるらしく、もう少し時間を掛ければ居場所も特定されるだろうとのことだった。

目的地の高級マンションには警察官らがひしめいていた。顔見知りの機動鑑識班の二岡は福家から連絡を受けていると言い、須藤に政界に影響力のある政治家の三男・馬力光吉が遺体で発見されたことを教える。馬力はアロワナを飼っており、それが例の話題の動画のアロワナ・クレセントだった。馬力は拷問の末殺害されたらしく、拷問のやり方はともかく人を殺すのに慣れている人間の仕業だと言う薄の見解は、事件を見た警官らとの見立てと一致していた。

馬力は引きこもりだがコンビニ通いが日課だった。犯人は深夜にコンビニへと行った馬力を襲い、防犯カメラのない地下駐車場から室内へ侵入したと思われる。クレセントの元々の飼い主であるシンガポールの実業家はマフィアとも繋がっており、ずっと独自にクレセントの行方を捜していた。そして数日前、配下の男2名が来日していることを確認していた。クレセントを奪った犯人を見つけ出しにきたものと思われた。

薄は馬力がクレセントを入手した方法に心当たりがあるといい、知り合いの元警視で現役時代にアロワナの密輸を追っていた牛尾に会いに行き、3人のブローカーの名を教えてもらう。そのうち2人はすでに死亡しており、現在は足を洗って真面目なアクアショップを経営しているという戸嶋に会いにいくことにした。戸嶋は「赤星ケアホーム」に水槽のレンタルを行っていた。赤星社長は戸嶋の過去を知っているといい、それでも戸嶋に仕事を頼む社長のためにも戸嶋は一生懸命働いていた。

戸嶋はXと呼ばれる正体不明のブローカーの噂を2人に教える。Xの最後の仕事がクレセントの強奪と密輸だったのではないかと言う。戸嶋が気になると見張っていた須藤、薄、芦部の目の前で、戸嶋が黒塗りのワゴン車にさらわれた。ワゴン車を追って廃工場へと着いた3人は、連絡係として車に芦部を残し、装備を整えた薄と須藤は工場内へと入っていった。

相手はシンガポールからやってきたフィッシュ・マフィアかもしれない。先制攻撃をしかけた薄の機転によって、犯人たちは捕まり戸嶋も救出された。戸嶋を誘拐した男たちはギヤマンの鐘の信者たちで、廃工場には来日して以来行方が分からなくなっていた2名の男たちの遺体もあった。クレセントの動画が公開されたのを利用し、ギヤマンの鐘は須藤と薄を消す計画を立てた。ギヤマンの鐘と須藤・薄の死が無関係であるよう、シンガポールからやってきたマフィアたちを利用し、馬力がマフィアに殺されたように見せかけ、いきもの係が密輸ブローカーに辿り着くのを罠を張ってまっていたらしい。

マフィアとの関係が露見しないようクレセントの元の飼い主は口を噤む。クレセントは赤星が引き取ることになった。馬力の殺害事件は解決したものの、須藤と薄は裏で糸を引いていた人物・Xの存在を思い浮かべ対峙するものの、何の証拠もないと逃げられる。だがXの拠点は京都だった。須藤は自分たちができるのはここまでだが、京都にはさらに厄介な刑事がいると言いXが乗った新幹線を見送った。

 

Xは戸嶋をXとして葬るつもりのようでしたが須藤と薄によって目論見は外れた様子です。アロワナ事件の最終決着は京都で福家警部補が着けそうです。薄&福家の共演とはなりませんでしたが、須藤はたびたび向こうの事件の応援に駆け付けていましたし、いつかは共演する事件が読めるのを楽しみに待ちたいと思います。

ランを愛した容疑者

アロワナ事件以降暇を持て余している須藤の元に、久しぶりに石松が仕事を持ってやってきた。自宅の階段から転落死した男性が育てていた胡蝶蘭の世話らしい。所轄の刑事らに煙たがられながらも世話に赴いた須藤と薄だったが、畳敷きの広間に並ぶ30以上もの胡蝶蘭の鉢をチェックしていた薄が、転落死した男性は本当にこの花を愛していたのか疑問だと首をかしげた。

被害者は70代の元印刷会社社長・高秀殿和で、年の離れた妻が病死して以降、彼女が大事に育てていた胡蝶蘭の世話を始めたことから蘭栽培にのめり込んだのだという。日当たりや室温を気にかけ、毎朝5時に起きてすべての蘭をチェックしていたと蘭を引き取りに来た副社長の中戸は話した。

薄は、今回の事件は殺人事件だと言い切った。その根拠として部屋の蘭の生育状態にムラがあることを挙げる。まるであちこちから慌てて蘭を寄せ集めたようだという。また高秀は二週間ほど前に家の使用人を全て解雇していた。長年高秀の家で働いていた女性に話を聞くと、お抱え運転手が病気で亡くなったのが解雇のきっかけではないかという。高秀は運転手が亡くなる際に残した蘭を引き取り、それだけは他とは別に寝室に置いていたのだという。寝室の蘭の鉢植えから1枚の写真が見つかった。高秀の亡くなった妻の不貞の証拠と思われるものだった。それをきっかけに高秀は妻の好きだった蘭の栽培をやめて処分し、使用人も解雇したのではないかと2人は考えた。広間にある蘭たちは、高秀以外の誰かが用意したもの……つまり高秀が蘭の栽培をやめたと知られると困る人物、高秀殺害の犯人の仕業と考えられた。

高秀は蘭の世話をするために早起きし、階段から足を滑らせて転落死したと思われている。肝心の蘭が処分されていたら事故死に見せかけられない。写真には妻の不倫の相手と思われる男の顔は映っていないが、社章や年齢、体型等から高秀の会社の常務が浮かび上がってきた。だが常務は不倫を完全否定した。

所轄から疎まれ石松たちの協力も仰ぎづらい中、ファミレスで事件について検討した3人は犯人を罠にかける作戦を決行した。

 

犯人は自分が冷遇されていることを恨み犯行に及びました。やり方は実に執念深いものでしたが、いきもの係が関わったことで殺人が発覚、最終的には逮捕に至りました。

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ずっと動物ばかりだったのが、今回初めて植物が対象になりました。いきもの係の正式名称が動植物管理係なので全然問題なのですが、植物に関しても薄の博識さとこだわりが明らかになる回で見ごたえがありました。

それにしても薄巡査のサバイバル能力の高さには驚かされます。人間相手のゲリラでは最強ではないでしょうか。

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