大倉崇裕「警視庁いきもの係」シリーズ第2弾『蜂に魅かれた容疑者』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「蜂に魅かれた容疑者」のあらすじと感想をまとめました。

今回は長編です。あちこちで起こる蜂にまつわる事件が一つの大きな事件へと発展していくという読み応えのあるストーリーでした。相変わらず須藤と薄の掛け合いも面白いです。

「蜂に魅かれた容疑者」書籍概要

新興宗教団体にかかわる事件で警視庁が緊張に包まれる中、都内近郊ではスズメバチが人を襲う事故が連続して発生。中には、高速道路を走る車内に蜂が放たれるという悪質な事例も。平穏な日常を脅かす小さな「兵器」に、窓際警部補・須藤友三と動物大好き新米巡査・薄圭子の「警視庁いきもの係」コンビが立ち向かう。「BOOK」データベースより

  • 蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係(2014年7月/講談社)
  • 蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係 (2017年1月/講談社文庫)

あらすじ

10日ほど前から警視庁は物々しい雰囲気の中厳重な警備体制下にあった。新興宗教団体「ギヤマンの鐘」は、日本各地に支部を持つ宗教を騙った詐欺集団だったが、教団幹部らを逮捕、起訴したのは警視庁のみだった。そして2週間前、収監中の幹部が首吊り自殺をするという事件が起き、その3日後に鬼頭管理官が狙撃された。命は取り留めたものの集中治療室で予断を許さない状況らしい。

捜査一課の石松が仕事をもってやってきた。目下「ギヤマンの鐘」関連の捜査に無関係で時間があり、蜂に詳しい人間ということで、須藤と薄にスズメバチに刺されて入院している男の聴取が回されてきたのだ。被害者はフリーライターの今尾正貴。山歩きが好きで赤磐山の散策をしている最中に蜂に襲われた。今尾が収容されている警察病院には鬼頭もいる。入り口では警察官が一人ひとり身元や病院での目的などをチェックしているため長蛇の列ができていた。

頭部、腕、背中を刺されたらしく今尾の顔はほとんどが包帯で覆われ、熱もまだ下がらないという。2年ぶりに音楽を聴きながら赤磐山を登っていた今尾は、指導標の看板に従って別れ道を進んだ。するとだんだん道が細くなり気が付いた時には頭上にスズメバチの集団がいた。何ヶ所か刺されつつも沢に飛び込んで蜂をやり過ごし、自力で駐車場に戻り病院に辿り着いた。地元の人間や山岳会は指導標を立てた覚えはなく蜂に出くわしてもいないと主張している。誰かが故意に道を誘導し蜂に襲わせたと今尾は言った。

赤磐山の今尾が蜂に襲われた場所へ向かった2人は、指導標が差さっていた痕跡や蜂の死骸、スズメバチの巣の跡を見つけた。蜂の巣の撤去の手際の良さから、やったのは専門の駆除業者ではないかと薄はいった。現場の状況から、蜂に襲われるのは誰でもいい、無事でも刺されてもという無差別な事件だったと考えた。

栗原と友人の合田は高速道路をハイスピードで飛ばし、煽り運転をしては気を晴らしていた。そこに栗原と並走してくる車が現れ、助手席の窓を開けた合田は相手を挑発する。相手のドライバーが助手席に向かって箱を投げ入れてきた。開けた途端、車内に羽音が飛び出した。パニックになり蜂にも刺された栗原はハンドルから手を離した。車は大きくバウンドした。

須藤は管轄の刑事課へ今尾の話をするものの取り合ってもらえなかった。パトカーの送迎で帰りの駅に向かっている須藤たちのところへ石松から高速道路での事故の連絡が入った。助手席の男が死亡、運転席の男が重傷を負っているという。現場が近かったため行き先を無理やり変えさせ2人は被害者がいる病院へと向かう。強引に集中治療室に踏み込んだ須藤は、栗原から投げ込まれた箱を開け蜂が飛び出してきたことを確認した。今尾と栗原、蜂を使った無差別攻撃と考え石松に報告すると、須藤は総務課の事務員・弘子に電話をかけ蜂の被害についてネットで調べてもらうよう依頼した。

警視庁に戻ったのは夜遅くだった。弘子もまだ残っており蜂の被害について気になったものをプリントアウトしていた。その中で薄は、バス車内に突然現れた蜂とローカル線の電車に紛れ込んでいた蜂についてそれぞれブログを書いた人間2人が、どこから蜂が来たのかという共通の疑問を抱いているのに注目し、何者かが箱に蜂を入れて持ち込んだのではないかと推理する。仮死状態で箱に入れた蜂がどのくらいで覚醒するのか、覚醒後どう行動するのかを実験していたのではないか。

石松に警察病院に呼びつけられた。いつの間にか受付カウンターに置かれていたというセイヨウミツバチの女王蜂の死骸を渡される。薄によると死んでから冷凍保存されており死後5~6年経っているものらしい。運転手を務めてくれる田之倉とともにファミレスで休憩することにした。須藤は田之倉に、栗原について調べてくれるよう頼んだ。

午前二時過ぎ、ファミレス内に客は少ないものの刑事時代の癖で、須藤は客の出入りと配置をチェックしていた。田之倉がドリンクバーにコーヒーを注ぎに席を立った。トイレへと男が入っていって間もなく何かが倒れる音がしてドアが開いた。蜂がと叫ぶ声を聞き、薄の制止も聞かず田之倉がトイレへと駆け込む。蜂に刺された田之倉は意識が朦朧となり救急車で警察病院へと運ばれていった。薄の処置が適切だったため一命は取り留めそうだった。ファミレスの従業員から集めた事件当時の写真から不審な男を見つけた2人は、店を出て行った男の姿を追う。一度はジャズバーの中まで追い詰めたが、再び起きた蜂騒動の隙に逃げられてしまった。

集中治療室にいるはずの鬼頭管理官から須藤と薄に召集がかかった。鬼頭は狙撃されたものの重傷ではなかったため秘密裡に院内に執務室を移し「ギヤマンの鐘」への一斉捜査の準備を進めていた。鬼頭から見せられた写真は、2人が取り逃がしたばかりの男だった。

男の名前は庄野一樹。5年前、一家4人殺害事件の容疑者として拘留されていた。だが別の人間が犯人として逮捕され死刑判決を受けた。庄野は養蜂家だった。警察に長時間拘留されている間に台風が到来し、世話をする者もおらず対策が取れなかったため飼っていたミツバチは全滅した。廃業した庄野は警察を恨んでいるという。今回の事件は庄野とギヤマンの鐘が結託して起こしていると考えられた。ミツバチの天敵スズメバチも庄野なら詳しい。人員が不足しているため、2人だけで庄野の居所を突き止めるよう命が下った。

庄野が養蜂をやっていたという林へとやってきた2人は、突然何者かに襲われ、蜂が待ち構えているだろう小屋へと誘導されそうになる。薄の機転で難を逃れた須藤は、逆に襲ってきた犯人らを捕まえる。須藤らを襲った2人組の男たちはギヤマンの鐘の信者だった。持っていた携帯のロックを解除したところ、使い捨てだったらしく2枚の写真だけが取り出せた。写真に写っている鳥の情報から、薄は撮影場所を大宮駅だと割り出す。もう一枚の写真の情報と今までの蜂騒動から、庄野を指令塔としたギヤマンの鐘が、大宮駅を起点とした都心に乗り入れるどこかの電車内に、蜂の入った箱を置き逃げするというテロを計画していることを知る。人の多い場所でスズメバチが放たれた時のパニックを考えると、暢気に構えてはいられない。警視庁は総動員で大宮駅などの警備に当たることになった。

大宮駅へと向かいながら、薄はずっと唸っていた。何かがおかしいという。ギヤマンの鐘への強制捜査を阻止するために蜂を使ったテロを実行したところで、捜査の時期を遅らせるだけで阻止はできず教団にメリットはないという。鳥が写っていた写真と、実際の撮影場所の様子に齟齬があることに気が付いた薄は、写真は捏造ではないかと言い出す。自分達は2枚の写真によって大宮駅でテロが起こると推理させられたのではないか。

そんな時、須藤の手帳から落ちた花を見た薄は、事件の真相が分かったと興奮気味に言う。その花は、今尾がスズメバチに刺されたという赤磐山で須藤の服にくっついてきたものを弘子が見つけ、手帳に挟んでいたものだった。

 

庄野の狙いは無差別テロではなく鬼頭管理官でした。彼への復讐のためギヤマンの鐘と組み、警察の目を大宮駅でのテロ騒動に向けさせることで、警察病院の警備を手薄にすることでした。動物や植物に詳しい薄ならではの推理で、管理官暗殺は未然に防がれました。

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日本各地に支部を持つそれなりに大きな教団ですが、部外者の庄野一人にうまく利用されすぎじゃないかなと気になりました。が、須藤と薄のコミカルなやりとりのおかげか重くも暗くもなりすぎず、総じて面白かったです。