大倉崇裕「警視庁いきもの係」シリーズ第1弾『小鳥を愛した容疑者』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「小鳥を愛した容疑者」のあらすじと感想をまとめました。

渡部篤郎さん、橋本環奈さんで「警視庁いきもの係」としてテレビドラマ化された時に見ていました。懐かしくなって原作を手に取ってみたのですが、だいぶ中身を忘れていました。

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「小鳥を愛した容疑者」書籍概要

銃撃を受けて負傷した警視庁捜査一課の鬼警部補・須藤友三は、リハビリも兼ねて、容疑者のペットを保護する警視庁総務部総務課“動植物管理係”に配属された。そこでコンビを組むことになったのが、新米巡査の薄圭子。人間よりも動物を愛する薄巡査は、現場に残されたペットから、次々と名推理を披露する。「BOOK」データベースより

  • 小鳥を愛した容疑者(2010年7月/講談社)
  • 小鳥を愛した容疑者(2012年11月/講談社文庫)
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小鳥を愛した容疑者

警視庁捜査一課だった須藤は、頭を銃で撃たれるという重症を負った。事務職への異動を勧める上層部と現場復帰を希望する須藤との間でついた決着は、リハビリという名の左遷・閑職の総務課への異動だった。仕事らしい仕事がない中、同期でライバルの捜査一課の警部補・石松が仕事を持ってきた。須藤の所属する課の正式名称は、警視庁総務部総務課動植物管理係、通称いきもの係。容疑者が逮捕、拘束されている間、ペットの世話を行う専門部署として設立されてから2年、名前だけかと思っていた須藤の初仕事は、殺人容疑がかかっている八木良和のペット・十姉妹の世話だった。

「警察博物館」の6階には動植物管理係の専門員・薄圭子(うすきけいこ)がおり、日々持ち込まれる動物たちの世話に明け暮れている。薄はあらゆる動物に関する知識が豊富な巡査で、人間よりも動物が優先の須藤の部下だった。

八木は現在意識不明の重体で警察病院に入院中だった。マンションのフローリングの部屋には大きな鳥かごが5つ、それぞれに20羽ほどの十姉妹がいた。手慣れた様子で鳥たちの世話を始めた薄は、八木の家は完全防音になっていると言った。世話を薄に任せて鳥かごを見ていた須藤は、1羽だけどこか様子の変わった十姉妹がいることに気が付いた。薄にそのことを告げると、彼女も気づいており、いきなり八木が犯人だと言い出すと須藤に事件の詳しい説明を求めた。

隅田川で遺体が浮かんでいるのを釣り人が発見した。元運送会社のドライバーで現在は無職の戸所松之、死因は絞殺だった。免許証などを持っており飲酒運転の前科があったため指紋照合で身元はすぐに確定した。遺体遺棄と思われる時刻に走っていた不審車輛から八木の名前があがり、自宅を訪問した捜査員が帰宅を待っていたところ、スピード違反で停止を求める白バイを振り切って逃走し自損事故を起こしたという連絡が入ったというものだった。

薄は、鳥かごに敷く新聞紙の束の中から、普段は一紙の朝刊だけしかとっていない八木が、戸所の遺体発見の日だけ大手の新聞社の夕刊を全て購入しているのが分かったこと、大量の鳥を飼っているにも関わらず鳥の羽根などが落ちておらず部屋がきれいなことなどを、八木に対する犯人発言の根拠としてあげた。また掃除機の中からも鳥の羽は見つからなかった。薄は、一羽だけ様子の違う十姉妹について、元は手乗りだったのではないかと言う。八木にとって何か都合の悪いことが生じ、1羽だけいた手乗り十姉妹を他の鳥たちと一緒のかごにいれて、手乗り用の鳥かごを処分し部屋も徹底的に掃除した。つまり殺人の痕跡が鳥かごに残っているのではないかと推理する。

マンションのゴミ置き場へと急いだ2人だったが既にゴミは回収済だった。薄はマンションの地下駐車場で車の出入りを管理している守衛に来客用の駐車場があるかと尋ねる。過去1年に渡って八木に車での来客はなかった。

石松から聞き出した情報をもとに2人は「園田小鳥店」へと向かう。店はメジロなどの野鳥を扱っていたが、法律の強化で野鳥の捕獲、飼育が制限されたため潰れていた。元店主は八木を知らないという。須藤は話を聞きながら店の中が綺麗すぎることが気になった。薄によると最近まで鳥を飼っており、餌をやったとに念入りに掃除をしたのだと思うと言った。薄の勘(推理力)に賭けて元園田小鳥店を張る2人の前でライトバンが停まった。警察の訪問に慌て何らかの動きを見せるーー薄の読みが当たった。

 

防音が行き届いた部屋、元小鳥店、元運送屋から、薄はメジロの密猟や鳴き合わせの可能性を思いつきました。八木と戸所は分け前を巡って揉めていたらしく、犯行現場は薄の推理通り八木の部屋でした。徹底的な掃除はメジロの痕跡を消すためでした。

ヘビを愛した容疑者

警視庁の10階にある総務課に当庁した須藤は、事務員の弘子から来週時効が成立するという事件について話していた。一人暮らしの男性が刺殺され、甥の菅野大作を犯人と断定したものの逃亡し行方が分からなくなっているというものだった。そんな時石松が仕事を持ってきたので、須藤は4か月ぶりに警察博物館を訪れることになった。

石松から渡されたファイルにあったのは山脇伸一、千葉の海岸に打ち上げられていたのが発見された。死因は頭蓋骨陥没、近くの崖から身を投げたものと思われた。山脇のペットは2匹のヘビ。メジャーなコーンスネークと、体長が2.5mはありそうなヘビを飼う人の憧れだというコロンビアボア。どちらも体調に問題はないものの、薄はペットを残して自殺するなんて信じられない、無責任だと叫んだ。

ヘビの世話をするにあたり、薄は須藤に山脇が付けていただろう飼育日誌を探すよう頼む。散らかった室内のマガジンラックの中に大学ノートを5冊見つけた。まめに記録をとっていたらしく写真付きだった。

山脇が自殺を図ったと思われるのは15日で遺体が見つかったのが19日。だが17日の夜、部屋に入る山脇らしき姿を見たという住人がいた。山脇には鬱の症状が出ていたらしく会社を辞めていた。日誌の記録の分量もそれに伴って激減しており写真だけの日もあった。自殺をするにあたり、山脇は誰かがヘビの面倒をみてくれるはずだと思っていたのではないかと須藤は考えるものの、ヘビに対する一般人の拒絶反応を思うと親族などではなさそうだった。

薄は日誌に残る写真から、山脇にはヘビ友達がいたのではないかと推測する。16日頃にコロンビアボアが脱皮をしそうな兆候があった。だが水槽に脱皮したぬけがらはなかった。おそらくヘビ友達がこの部屋にやってきて、掃除や給餌などの世話を行っていったのだろう。日誌からはヘビ友達が写っているだろう写真が何枚か剥がされていた。

ユニットバスのカーテンに赤黒い染みを見つけた。血だった。2人は隣人から17日の夜に停電が起きたことを聞く。停電によってヘビ水槽の暖房機がリセットされたことを心配したヘビ友達が部屋にやってきたところを目撃され、山脇だと勘違いされた。つまりそのヘビ友達は、17日に山脇が帰ってこない=死んでいることを知っていたと思われる。

便箋に残っていた遺言と思われる鉛筆のあとから、薄は山脇が懇意にしていた爬虫類専門のペットショップを見つけ、店主からヘビ好きで写真嫌いな人間の情報を得た。2人はペットショップである情報を高らかに口にすると、それに引っかかってやってくるヘビ友達を捕まえるため山脇のマンションで張り込んだ。

 

山脇は自殺を図ろうとして事故死したようです。それを見つけたヘビ友達が、自殺に見せかけて遺棄し遺体の発見を遅らせました。なぜ遅らせたかったのかというと、コロンビアボアの飼育には届け出が必要だったからです。写真に写ったり自分の痕跡が残るのを嫌っていたヘビ友達には、ある事情により時間が必要でした。

カメを愛した容疑者

須藤がいきもの係の仕事に面白さを感じ始めた頃、石松が仕事を持ってきた。今回の動物は行方不明中の杉浦次郎が飼っているケヅメリクガメだった。カメ専用の飼育部屋や庭で育てている小松菜……飼育環境もカメの状態も良好だった。ただ長年可愛がっているにしては、部屋に慣れていない様子だという。

弁護士の次郎が姿を消したのが4日前、事務所の顧問が心配し次郎の兄・一男に連絡をとったものの様子見をするといい動きがない。次郎には骨折して入院中の息子がおり毎日見舞いに来ていたにも関わらず姿を消した。顧問は次郎の件に事件性を感じ知り合いの警視庁の管理官に連絡を取りこちらのお鉢が回ってきたという次第だった。

次郎の兄・一男も弁護士で、こちらもカメを飼い溺愛していたが3年前に死んで以降飼育はしていないという。だが薄は一男の指の傷から今でもカメを飼っている可能性があると指摘する。

次郎の家にはカメの甲羅が飾ってあった。記録によると初代のカメで、死んだあと2~3年ほど土に埋めておけば甲羅だけが残るのだという。薄は記録写真の中から、飼っているカメの甲羅に大きな傷があるのを見つけた。だが世話をするリクガメの甲羅には傷がない。次郎がどうして消えたのか判ってきたと薄は言う。

次郎の家から5分ほど離れ場所に一男の家がある。一男は外部からの客に対し敏感になっている様子だった。須藤が気を引く一方で庭に入った薄は、母屋の向こうのガレージに電気を引き込んでいるのを見つけて戻ってきた。またホームセンターで一男が金魚やメダカを購入していたことを突き止める。

石松に頼んで杉浦家の所有する土地を調べてもらう一方、2人は次郎がリクガメを引き取って育てているカメの駆け込み寺と連絡を取りたがっていることを知る。杉浦家は岩手に広大な土地を所有しており現在は親せきが住んでいた。話を聞くと3年前に一男がカメを埋めに来たことがあり、5日前に次郎から近々そちらへいくという連絡があったという。

薄は石松に連絡を取って岩手のカメが埋められた場所を掘るように頼むとともに、3年前の一男のカメが死んだ日前後に発生した未解決の行方不明事案を調べてもらうよう須藤に依頼し、一男の家のガレージに向かった。

 

次郎氏の息子が入院中、飼っているカメが怪我が原因で死んでしまい、息子を悲しませないよう次郎氏は駆け込み寺から新しくリクガメを引き取っていました。そして死んだカメを甲羅にするため岩手へ埋めに行こうと連絡したのを一男が知り、次郎を拉致・監禁しました。

一男のカメは死んでおらずガレージの下に作った地下で飼育されていました。3年前、一男はカメではなく別のものを埋めたようです。

フクロウを愛した容疑者

須藤をいきもの係へと送った管理官・鬼頭が、捜査一課への復帰を打診してきた。復帰に伴い薄もいきもの係から事務方へ異動になるという。石松が新たな仕事を持ってきた。殺人事件の容疑者・藤田が飼っているフクロウの世話だった。

普段は室内で放し飼いにしており、夜はフクロウ小屋へと入れていた。フクロウ小屋は隣家に面しており夜の鳴き声で藤田と隣家の渋谷はトラブルを起こしていた。被害者はそのトラブル相手・渋谷で自宅の書斎で撲殺されているのを妻が発見した。凶器となった血のついたガラス製の灰皿が藤田の指紋とともに藤田家で見つかった。だが藤田は犯行を否認しており、話し合いのため渋谷家へも出入りしていたため指紋が付いていてもおかしくはないという。

藤田の書斎の止まり木の下に地球儀が置かれており、フクロウの糞がついていた。地球儀は本棚から移動された形跡があるが、フクロウを飼っている人間が止まり木の下に物を置きっぱなしにするはずがないと薄は言う。藤田以外の人間が書斎に入った可能性がある。薄は本棚から見つかったフクロウの羽が、飼っているフクロウとは違う種類だと指摘する。部屋は毎日掃除されていて綺麗だったため、誰かがフクロウの羽を探して本棚の地球儀を移動したと思われた。羽の違いを知らなかったことから、フクロウの知識がない人間の仕業と考えられた。

藤田が警察に連れていかれたと聞き、友人である友塚がフクロウの世話をしにやってきた。友塚は藤田のフクロウ仲間で、渋谷家とのトラブルでの話し合いにも立ち会っていた。薄によって適切に世話をされていることを聞かされた友塚は、フクロウの様子が見たいといって部屋を覗いていった。

藤田は無実かもしれないと2人の意見が一致した。遺体の発見者である渋谷の妻に話を聞きに行くと、彼女はフクロウの鳴き声に悩まされていたと主張しフクロウを毛嫌いしていた。渋谷はトラブルに関して弁護士に相談していたらしい。薄によるとペットの鳴き声トラブルの場合、証拠となるデータを集めるのが通常だという。フクロウ小屋に面した渋谷家の庭の木の枝に集音マイクを発見した。この距離ならフクロウ小屋だけでなく藤田の家の会話なども録音できるという。

事件の担当で須藤とは犬猿の仲である日塔警部補によると、録音データは渋谷のパソコンに保存されておりパスワードで管理されていた。またフクロウ小屋のドアのロックが壊れており、フクロウが脱走できる状態になっていた。渋谷の遺体が発見され騒ぎになる前、ジョギングから戻った藤田はフクロウが脱走しているのを知り小屋に戻したらしい。つまり事件当時、フクロウは小屋から脱走していた。それを聞いた薄は真犯人が分かったといい藤田家へと向かった。

深夜、藤田家に侵入する人物を須藤、薄とともに警察官らが待ち受けた。

 

警察が捜査を終えて引き上げたというガセネタを真に受けた人間が、証拠を隠滅するために藤田家に忍び込み御用となりました。ですがその人物は事後共犯であり、渋谷を殺害した真犯人は別にいました。現場の状況が共犯だった場合ちぐはぐであることに気が付いた薄は、真犯人が渋谷を殺害、凶器を藤田家に運び込んだ後共犯者に連絡、共犯者は真犯人が藤田家に残してしまった痕跡を消すために家へ行くはずと推理し、見事当たりました。

須藤は捜査一課への異動を断り、いきもの係は須藤・薄の2人体制で継続となりました。

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福家警部補シリーズ」は単独行動が多くて逃げる犯人と追い詰める福家という構図に焦点が当たっていましたが、こちらの「警視庁いきもの係」シリーズはコンビで事件に当たるので、とぼけた雰囲気の薄と須藤のかけあいがとても面白いです。