大倉崇裕「警視庁いきもの係」シリーズ第4弾『クジャクを愛した容疑者』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「クジャクを愛した容疑者」のあらすじと感想をまとめました。

今回よりいきもの係が増員して増々賑やかになっています。石松以外の捜査一課の登場回数が増え、強面の須藤の言動が薄に影響されつつあるのも楽しめる一冊となっていました。

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「クジャクを愛した容疑者」書籍概要

河川敷で撲殺死体が見つかった。容疑者は、学同院大学クジャク愛好会の会長にして、動物を愛してやまない奇人大学生。無実を信じる「警視庁いきもの係」の名(迷)コンビ、窓際警部補・須藤友三と動物オタクの女性巡査・薄圭子は、アニマル推理で真相に迫るが。ピラニア、ハリネズミが登場する中編2本も収録!「BOOK」データベースより

  • クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係(2017年6月/講談社)
  • クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係(2019年6月/講談社文庫)

ピラニアを愛した容疑者

鬼頭管理官からいきもの係に専用の車と運転手の増員の連絡があった。まもなく3人体制になるという。今まで移動はタクシーを使っていたので専用車が来るのは有難かった。

林立するマンションに囲まれた公園内の池でピラニアが放たれるという事件が起きた2週間後、誰にも知られることなくマンションでピラニアを飼っていた男性・川田道明が自宅で殺害された。捜査一課時代からの犬猿の仲・日塔からの要請を受け川田の家へと駆けつけた2人を迎えたのは、日塔の部下の芦部だった。日塔から情報は貰えないと分かっている須藤は、芦部から事件の詳細を無理やり聞き出す。

マンションのオーナーだという川辺の家には、ピラニア専用の部屋がありいくつもの水槽の中でピラニアが飼われていた。川田の遺体が発見されたのは昨日の午前8時過ぎ、友人の戸村が部屋を訪れ玄関が開いているままなのを不審に思い中に入ったところで、倒れている川田を見つけ通報した。川田と戸村はピラニアの飼育について喧嘩をしていたという情報もあり、警察は戸村を取り調べている最中だった。須藤と薄への依頼は、ピラニアの世話に加え、ピラニア水槽の中に落ちている社章を拾い上げることだった。薄によってあっさりと拾われた社章は川田のものだと判明した。

ピラニアの生育環境は良好で色つやも良かったが、一つだけヒレが欠けたり目が潰れたりしているピラニアたちの水槽もあった。2人はピラニア部屋の窓にひびが入っているのに気が付いた。池にピラニアが離されるといういたずらを受けて設置した防犯カメラに、3日前の深夜、川田の部屋へ向かって何かを投げつける戸村の姿が映っていた。川田は石を投げたことは認めているものの、殺害に関しては否認しているという。

事件を担当する日塔達は、池のピラニア騒動と川田殺害事件を別のものとして考えているらしいが、須藤と薄は関連について疑問を抱いていた。また薄は、川田がピラニアを飼っていたことをほとんどの人間が知らなかったことから、彼がピラニアを飼い始めたきっかけを気にしていた。

池に放たれたピラニアはペットショップのオーナーが偶然見つけ、自らが網を持ってピラニアを回収したという。そのことがTVで取り上げられ「ペットショップ・クサノ」は人で溢れていた。オーナーの草野の店は代々続く老舗で熱帯魚に強いという。草野によると池から回収したピラニアは10匹で、しばらくペットショップで世話をしていたのものの最終的には川田が引き取ったらしい。川田の部屋でケガをしていたピラニアの水槽は、池に放されていたピラニアだと判明した。

2人はピラニア騒動の際に現場に居合わせたという自治会長にも話を聞いた。会長によると草野は鮮やかな手つきでピラニアを回収し颯爽と戻ってきたという。川田も戸村も常連客だが、人付き合いの良くなかった川田のピラニアは見たことがないと興味を示す草野を協力者という形で引き連れ、2人は川田のマンションに戻る。

見張りの芦部が制止するのを突破し、ピラニア部屋へと入った須藤と薄、付いてきた芦部は、川田の飼っていた見事なピラニアに心を奪われた様子で草野があるセリフを零すのを聞いた。

 

川田の部屋に入ったことがない人物が、犯人でしか知りえない事実をうっかり口にしてしまいました。そこから先は、事前に打ち合わせた様子もないのに見事な連携プレーで犯人を追い詰めていく須藤と薄のコンビネーションが素晴らしいです。動物に関しては細かいことまで気づく薄が、ピラニア騒動と殺人事件を同じ流れ上にあるものだと推理する過程も凄いです。

クジャクを愛した容疑者

河川敷で遺体が見つかり、お金持ち大学に通う大学生・栄野川明夫だと判明した。容疑者は同じ大学に通う「クジャク愛好会」会長の高本悠介。クジャクやアヒル、ニワトリが放されている大学構内の雑木林をオープンテラスにしようと計画している栄野川と、クジャク愛好会の高本は激しく対立していた。栄野川を殴った石からクジャクの糞が見つかり栄野川自身もクジャクの羽を手にしていたことから、大学構内で殺害されたのち河川敷に運ばれ遺棄されたと見られる。犯行時間帯、高本は学内で孵卵器にいれたクジャクの卵を見守っていたらしく、犯行は十分可能だった。

捜査一課の日塔班にいた芦部が、3人目の生き物係兼運転手として総務部総務課に異動してきた。早速3人でクジャクの世話へと大学に向かうが、4年生の市瀬を筆頭にクジャク愛好会のメンバーが世話をするので警察は必要ないと言われてしまう。市瀬は高本を連行していった警察に腹を立てており、須藤達に対しても敵意を向けてくる。須藤の刑事としての勘と薄の凶器についていたクジャクの糞への疑問から、須藤達は事件を担当する日塔とは別の角度、高本は無実という観点から事件を追うことにした。

栄野川の評判は良くなかった。彼は今年に入ってからクジャクがいる雑木林をうろうろとしはじめ、ばったり出くわしたクジャクに襲われて逃げ出した。その様子を多くの人間に目撃され写真や動画にとられるという大恥をかいた。そのことを恨み、栄野川はクジャクの居場所をオープンテラス化しようと計画していたらしい。

また卒業生の二北の父親と栄野川の父親が仕事上のライバル同士だった。3年前、大学に通う女子大生が一人行方不明になり二北も事情を聞かれた。未だに解決していないが、二北が彼女を殺して構内に埋めたのではないかという噂はまことしやかに流れた。父親のライバルを芋づる式に失脚させるため、栄野川は雑木林に遺体があると考えうろついていたのかもしれないという意見もあった。薄によると人間の遺体を構内に埋めたらあっという間に見つかるので、埋まってはいないという。

二北の家へと向かった須藤たちは、やけに野良猫が多いのに気が付く。薄によると庭を蟻の行列が通っており、どこに向かっているのか気になるという。二北本人から、栄野川が近頃殺処分間近の犬を3頭引き取ったらしいという話を聞いた。その後、野良猫とありが群がる大元を見つけた2人は二北の家に無理やり押し入り、地下に幽閉されていた行方不明中の女子大生を助け出した。3年前、二北に拉致監禁された彼女は、食事をこっそりと地上へと通じる穴から外へと押し出しSOSを送り続けていた。

栄野川が引き取ったという犬がどこにも見当たらないことから、須藤達は人里離れた栄野川家の別荘へと向かい、餌も水もなく特に世話もされずに閉じ込められていた犬を見つけ出した。そして真犯人にある罠を仕掛けると、大学の雑木林のなかで犯人が現れるのを待ち構えた。

 

栄野川は引き取った犬をクジャクやニワトリにけしかけて殺そうと企んでいました。動物たちの居場所を守りたかった犯人は、栄野川を殺す決意をしたそうです。河川敷ではなく大学に呼び出して殺したのは、その時間帯に大学にいた高本に罪を着せるためだったようです。

ハリネズミを愛した容疑者

前途ある刑事をいきもの係の運転手に甘んじさせるのは申し訳ないと須藤が掛け合い、芦部はふだんは日塔班に席を置き、必要が生じた時にいきもの係に呼び出すという形で落ち着いた。

須藤の同期で、優秀で腕は確かにも関わらず要領が良くないせいで所轄止まりの池尻と飲んだ帰り道、須藤は日塔に掴まり、池尻が監察対象になっており今回一緒に酒を飲んだことで須藤へも監察対象になったことを教えられる。すぐに尾行が付いたことに気が付いた。

高圧的に近づいてくる観察室の人間を手荒に追い払った須藤は、薄とともに芦部の運転でハリネズミの世話へと向かった。飼い主は一人暮らし中の女性・大谷弓子で、3日前に強盗に遭い頭を殴られて昏倒、意識不明が続いていたが今は一般病棟に移ったという。部屋に自由に入って構わないと言われ鍵を預かった3人は、ハリネズミが待つ弓子の部屋へと行った。薄は、餌がキャットフードや冷蔵庫の野菜や果物しかないと首をかしげている。栄養が偏るため、ハリネズミにはミールワームやコオロギも食べさせるものらしい。念のため持ってきたという薄が自宅で育てたミールワームを、ハリネズミのチュースケはあっという間に3匹食べた。

その後弓子から、自分が虫が苦手なため仲の良い男性に生餌の餌やりを頼んでいたと聞いた。その男性・朝倉もハリネズミを飼っていた。ブラウン色をしたチョコという名のハリネズミらしい。朝倉によるとチュースケはミールワームではなく、コオロギを好んでいるらしい。ブラウンのハリネズミの飼い主たちで作る「ブラウン会」にも所属しており、一度その会でチュースケの写真も見せたことがあるという。ブラウン会では永田夫妻と畑中の間にいざこざが起き、畑中が事実上の出禁を受けているらしい。

畑中は探偵事務所を構えていた。畑中の困りごとを解決した代わりに須藤たちはいざこざの原因を聞き出す。永田夫妻の妻・亜希子が浮気していることを知った畑中が良かれと思って証拠写真を撮って夫に見せたのが理由だった。妻にべたぼれだった夫は怒って畑中と縁を切った。現在永田夫妻は、亜希子がボヤをだしたため引っ越して駒込の高級マンションに住んでいた。

薄が急いで夫妻のマンションに行かないとチュースケが危ないと言い出す。その途中に現れた監察室の人間らを須藤は芦部、薄との連携プレーでかなり手荒に撃退した。マンションの永田夫妻の部屋のそばまで来ると、夫が勢いよく飛び出してきた。あとを芦部に追わせ、須藤と薄は部屋へと入る。白い煙が上がっており妻の亜希子が倒れていた。須藤は亜希子を、薄は夫妻の飼っているハリネズミを連れて外へと出た。薄によると弓子のチュースケと永田家のハリネズミが入れ替わっているらしい。永田は、妻がボヤを出したと見せかけて殺害する際、自分の可愛がっているハリネズミまで巻き込んで死なせてしまうのが耐え切れず、弓子のハリネズミと交換して身代わりにしようとしていた。交換のため弓子を襲ったのも永田だった。

永田の言い訳を聞いていた須藤は、最近犬を飼い始めたという池尻から同じようなセリフを聞いたことを思い出し、急いで池尻の家へと向かい、拳銃自殺しようとしていた池尻を間一髪で阻止した。

 

詳細や真偽は分かりませんが、池尻は3件の捜査情報漏洩に関わっているとのことです。監察室の人間を二度に渡って暴力的に撃退した須藤はクビを覚悟していたのですが、鬼頭管理官より池尻の自殺を防いだことで相殺になると言われ、引き続き警察官を続けることになりました。

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須藤にこき使われ、動物優先の薄からは冷たくあしらわれ…と気の毒な感じですが打たれ強い芦部がメンバーに加わり、さらにいきもの係が混沌としてきた感じがします。