大倉崇裕「警視庁いきもの係」シリーズ第3弾『ペンギンを愛した容疑者』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「ペンギンを愛した容疑者」のあらすじと感想をまとめました。

人よりも動物優先の薄巡査のおとぼけ度がますます上がり、須藤とのかけあいもパワーアップしています。事件とは別に2人のコンビネーションも楽しめる一冊でした。

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「ペンギンを愛した容疑者」書籍概要

「人間の視点で物を考えないでください」動物オタクの天然系巡査・薄圭子のアニマル推理が大爆発!ペンギン、ヤギ、サル、ヨウム…現場に残されたペットの生態から、常識はずれの発想で真犯人をあぶり出す。コンビを組む元捜査一課の鬼刑事・須藤友三も、薄を認め始めるが。大好評シリーズ、待望の第3弾。「BOOK」データベースより

  • ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係(2015年11月/講談社)
  • ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係(2017年6月/講談社文庫)

ペンギンを愛した容疑者

動物がらみの事件になると須藤に動員がかかることが増えた。石松が持ってきた仕事はケープペンギンの世話だった。資産家の藤原慶二郎が自宅に作っているペンギンの飼育室内の池の中で倒れているところを妻が発見した。掃除か何か作業をしようとして滑って縁で頭を打ち池に転落、そのまま溺死したものと見られた。

ペンギンの飼育室は強化ガラス張りでパーティルームから見えるようになっており、藤原はそこに客を呼んでは自らが世話をする様子を見せていたらしい。飼育室の隣はバックヤードになっており、巨大な冷凍庫や冷蔵庫、調理台などがあった。ペンギンの世話は藤原が行っていたというものの、作業着の汚れ具合や遺体の腕にペンギンが突いたり噛みついたりしたあとがないことから、実際の世話は別の人間が行っていたのではないかと薄は考える。藤原の秘書兼運転手の久慈が該当した。

藤原の死亡推定時刻に屋敷にいたのは、秘書の久慈、妻の亜希子、亜希子の兄・青木の3人でそれぞれに犯行動機があることが分かった。動物の飼育に関する仕事を希望している久慈は転職について、年が離れた妻は顧問弁護士と不倫している。青木は借金を抱えており、藤原の所有している一等地の駐車場を亜希子経由で譲られていたが、売却を猛反対する藤原の妨害されていた。屋敷で人を待っているという青木は、しきりに取れたカフスボタンを気にしていた。

ペンギンに餌をやりたいという久慈に対し事件現場のものを使ってはいけないと須藤は返し、新たに業者から取り寄せて貰う。受け取りに行った薄はすでに検査は済んでいると言い餌やりを久慈に託した。

不動産会社の恵美子が青木を訪ねて屋敷に来た。一等地の駐車場について呼び出しを受けたというが、すぐに来てほしいではなく2時間後を指定されたことに須藤は疑問を持った。

ペンギンの飼育室は非常に環境が整えられており日当たりもいい。清掃も行き届いている筈の強化ガラスに指紋や顔を押し付けられた跡を見つけた2人は、藤原がつけたものではないかと考えた。何者かが藤原を強化ガラスに押し付けた。争いの末バックヤードへ逃げた藤原を、その人物がデッキブラシの柄で殴り池に放り込む。だがバックヤードは袋小路になっていて逃げ場がない。なぜ藤原はそんなところへ逃げ込んだのか。薄は、犯人に気づかれないようメッセージを残すためではなかったのかと考え、冷蔵庫のペンギンの餌である魚の箱を漁り、藤原が最も信頼する人物に充てたメッセージを見つけ出した。

 

ペンギンは魚を丸呑みするそうで、餌をやる前には必ず金属探知機を使って釣り針などがくっついてないか調べるそうです。それを知っている藤原は久慈が金属探知機で犯人の証拠となるものを発見することを期待し、自分の死を覚悟しバックヤードへ逃げたのでした。

ヤギを愛した容疑者

事件現場へ出向くことが増えた須藤は刑事としての勘を取り戻しつつあった。応援にいった張り込み先で犯人を捕まえ、そのスタンドプレーを咎められ、仕事をもってきた石松に自重を促される始末だった。

ある小学校の教頭が鉄パイプで頭を殴られて殺され、教頭と揉めていた津浜寿弘が近くの階段下で頭から血を流して倒れているのが見つかった。2人は津浜の飼っているヤギとのふれ合い教室の中止を教頭が決めたことで長期に渡り対立していた。津浜は意識不明で入院中、その間のヤギの世話係が薄と須藤に回ってきた。津浜は愛情をもって世話をしていたようでヤギの健康状態も飼育環境も良好だった。世話をする2人の所へランドセルを背負った男の子がやってきて、津浜は悪い人じゃない、ヤギを助けてほしいという。

学校で話を聞いたところ、ヤギのふれ合い教室は希望者のみに行われていたもので三か月前から開かれておらず、中止が決まったのは先週だという。そのタイムラグが気になった須藤がさらに聞き込みを行ったところ、三か月前に職員室から盗み出されたテストの答案用紙がヤギ小屋にばらまかれるという事件が起きていた。ヤギに踏み荒らされぐしゃぐしゃになった用紙を集めたところ、1人の児童のテストだけが見つからずヤギに食べられたものと思われた。連絡を受けた津浜は慌てた様子でヤギを小屋の外に出し、今まで実施を求めて強硬姿勢だった津浜の態度がその日を境に大人しくなった。学校の方針でテストをばらまいたいたずら犯は探さないことに決まった。

テスト用紙が見つからなかった児童の名前は出倉健二、2人にヤギを助けてと訴えた少年だった。

薄がヤギ小屋の屋根が壊れているのを見つけ、事件当日、破損に気づいた津浜が天気予報を見て水が苦手なヤギのために雨漏り防止のブルーシートを急いで購入しにいったことを知る。事件後、新品のブルーシートは津浜の軽自動車の後部座席下に落ちていたとファイルにはあった。津浜の車の後部は荷物でいっぱいなので、買ってすぐ使う予定ものもならば助手席に置くはずで、後部座席から見つかったということは、その時助手席には誰かが乗っていたのではないかと2人は考えた。

津浜が利用しているホームセンターで話を聞くと、ブルーシートを買いに来た津浜にビデオカメラの操作方法について聞かれたらしい。またここ最近津浜が目撃されていた場所へ行ってみると、近くに出倉健二の家があった。

家にいた健二の父親に玄関口で話を聞くと、父親自身はふれあい教室に賛成だという。父親は信用金庫に勤めていて多忙だったが、2年前の妻の死をきっかけに配置換えし健二と過ごす時間を増やしていた。夜ですでに健二は寝ているので話をさせるのは翌日でいいかという父親に頷き、2人は出倉家を後にした。2階の部屋に明かりが灯るとカーテンが開き、健二が顔を覗かせた。

事件の真相に気づいた須藤と薄は、自重しないと職を失うという石松の制止を振り切り強行突破を企てた。

 

犯人は教頭を殺害し、ヤギのことで対立していた津浜に罪を擦り付けようとしていましたが、ブルーシートの一件をきっかけに犯行が明るみに出ました。強行突破した須藤はお咎めなし、津浜も意識を取り戻したようです。

サルを愛した容疑者

薄に南極での調査チームへの参加依頼が来ているらしいと石松から聞いた。警察と南極、薄がどちらを選んだか分からずモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、須藤は次の仕事先へと向かった。

リスザルを飼っている五反田哲也が殺人容疑で勾留されていた。五反田と薄がペットショップ「チンペ」の常連で顔見知りだったことから、リスザルの世話を依頼してきた。五反田のマンションへと行くと、サルはケージから脱出しており部屋中で暴れていた。薄がケージに入れたあと、室内の温度を調整するためリモコンを手に取った。薄はドアの内側にねじ止めされたフォルダー内にあったリモコンを、須藤は部屋の床に転がっていたリモコンを。五反田の部屋には同一メーカー、同一機種のエアコンが4機設置され、同じリモコンも4つあったのだ。須藤が手にしたリモコンにはうっすらと血の跡があった。

被害者は車島名子、五反田の恋人で別れ話が拗れていた。遺体発見現場は五反田のマンションの寝室で、凶器は砂を詰めた一升瓶だった。一升瓶は手首や腕を鍛えるために五反田が用意したものだったが、やりすぎたせいか腱鞘炎になり冷蔵庫の上に置かれていたものだった。遺体の発見者は五反田自身。友人と酒を飲んだあと、自宅で飲みなおそうと戻ってきて倒れている名子を発見、動揺して動けない五反田に代わり友人が通報した。五反田によると、名子が私物を取りに来る間、顔を合わせたくないから外に出てくれと頼まれ友人を誘って飲んでいたらしい。動機、凶器、第一発見者と五反田は限りなく怪しかった。

五反田の弁護士によると、五反田は一流企業の身内だが未成年の頃に問題を起こし勘当同然になっていた。叔父が可愛がっているリスザルの世話をするというていで、五反田は叔父からマンション、餌代、世話代を受け取っており、不注意でサルに何かあったり手放した場合は契約が打ち切られお金が受け取れなくなることになっていた。そのため五反田は熱心にリスザルの世話をしていた。

名子の友人から話を聞くと、彼女はすんなりと別れ話に応じるような性格ではなく、復讐のため五反田のサルを勝手に人に譲る計画を立てていたらしい。チンペのオーナー経由で佐藤という男が浮かび上がった。佐藤は名子からリスザルをタダでくれると誘われ、事件の日に五反田のマンションに呼び出された。だが行ってみると既に名子は死んでいたと主張する。佐藤は遺体に驚いたものの、ケージを逃げ出していたサルを捕まえて戻すと、餌皿にあった形の崩れたキウイを捨てバナナをやって部屋から逃げた。

ひょんなことからケージを抜け出したサルが冷蔵庫の上の一升瓶を落とし、たまたまその下にいた名子の頭上に命中、彼女は亡くなってしまった。サルを庇うため、佐藤が凶器と遺体を寝室に移動させた。五反田の疑いは晴れたといいながら、薄はキッチンのゴミ箱の確認へ行った。

釈放された五反田は、二股をかけていた彼女と会っていた。人を殺したサルは処分される。サル嫌いな彼女をようやく遠慮なく部屋に呼び寄せられるからだ。イヤリングをねだる彼女に対し、五反田はイヤリングは名子が死んだ時に着けていたものだから縁起が悪いと言う。そこに須藤と薄がやってくる。薄のおかげで釈放されたという五反田に対し、須藤はサルが犯人ではないと言うと、事件の真相について話し始めた。

 

事故とはいえ人を殺めてしまったサルが処分されることは五反田自身の過失ではないため、金銭を受け取るという契約は解除されません。面倒な恋人とサルを一度に切り捨てるための五反田の立てた計画で、名子は事故ではなく他殺でした。発見時に名子の耳にイヤリングはなく(光り物が好きなサルが隠した)、五反田は自分の失言によって犯行を認めた形にになりました。

薄は今一番興味のある動物は人間だといい、南極行きの話を断りました。

最も賢い鳥

オウム目インコ科に属するヨウムは4歳児程度の頭脳を持ち、TPOに合った言葉も話せるらしい。ヨウムが犯人の顔を目撃し喋ってくれるかもしれないという須藤の期待は、そんなに簡単ではないという薄の言葉によって打ち砕かれた。

ヨウムの飼い主、フリーライターの梶田実が自宅のリビングで殺されているのを隣家の主婦が発見した。貰い物のお礼にきたところで倒れている梶田を見つけた。梶田は伊勢という男からヨウムを引き取り、非常に可愛がっていた様子だった。伊勢は自分の会社が倒産寸前となってヨウムを手放したが、その後会社は盛り返し羽振りがよくなったためか、梶田にヨウムを返してほしいと申し入れていたらしい。事件当日の伊勢のアリバイはなく、ヨウムのことで争っていた事は認めているものの犯行は否認しているらしい。

梶田の家の庭にアジサイの花びらを見つけた。アジサイは仕事仲間からの貰い物だが、梶田に花を育てる趣味はないと鉢ごと隣家の主婦の手に渡っていた。アジサイは健康障害を引き起こすため鳥を飼っている家には御法度の植物だった。薄は、もしかしてアジサイを持ってきた人物が犯人かもと言い出す。梶田を殺害した人物はヨウムに関する知識が皆無だという。

2人は実家が花屋だという梶田の仕事仲間だという人物の所へ行き、梶田が飼っていた人間の言葉を理解するヨウムが犯行の一部始終を見ていたこと、間もなくショックから抜けるだろうから、犯人について話がきけるだろうなどと話してきかせた。須藤と薄が仕掛けた罠に引っかかった犯人が梶田の家に忍び込んだところを、一緒に張っていた石松とともに逮捕した。

 

犯人は梶田に借金をしており、たびたび梶田の家を訪れていました。犯人に悪意はなかったものの、ヨウムにとってアジサイが毒だと知っている梶田は腹を立て激しい言い争いになり、結果殺人へと発展したようです。

ヨウムは元の飼い主の伊勢に引き取られて行きました。特段悪い人でもなくヨウムを可愛がっていただけなのに殺されるなんて、梶田も不運としかいいようがありません。

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この辺りになると須藤も薄の言動にも慣れ、漫才のような掛け合いにもキレが加わっています。テレビドラマの須藤とはイメージが違いますが、原作の須藤もなかなか面白い人です。