大倉崇裕「問題物件」シリーズ第1弾『問題物件』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「問題物件」のあらすじと感想をまとめました。

このシリーズの探偵役は摩訶不思議な力をもつ探偵・犬頭ですが、その正体はぬいぐるみの犬太なのです。犬の感覚の方が強いのか、かなりの力技で悪者たちをなぎ倒して強引に事件解決へともっていってます。読み始めの頃は解決方法が邪道だと思っていたのですが、回を重ねるごとに頼もしく思えてくる短編集第1弾でした。

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「問題物件」書籍概要

大島不動産販売前社長の遺児で、難病に苦しむ大島雅弘の世話係を務めていた若宮恵美子は、派閥争いのあおりを受け、新設部署への異動を命じられた。雅弘をトップに、3名だけでクレーム対応をする部署らしい。現社長の高丸は、反高丸派の旗頭である雅弘に無理難題を押しつけ、責任を取らせて追い出したいのだ―。次から次へと問題物件を押しつけられ途方に暮れる恵美子の前に、「探偵」を名乗る奇妙な男が現れて…。前代未聞の名探偵(?)犬頭光太郎登場!!居座り、自殺、ゴミ屋敷、ポルターガイストに失踪まで。お部屋に関する問題を、人間離れした能力で華麗に無理矢理解決!破天荒極まりないミステリー!「BOOK」データベースより

  • 問題物件(2013年8月/光文社)
  • 問題物件(2016年7月/光文社文庫)

居座られた部屋

介護の資格を持っている若宮恵美子は、大手不動産・大島不動産販売の名目上の役員で病弱な雅弘の世話係を主な仕事としていた。だが雅弘の叔父が社長就任後、元社長の息子である雅弘とその派閥を潰そうと新たに「販売特別室」を作った。販売特別室は不動産物件に対するクレーム処理をする専門部署で、雅弘を室長に据え、社長派の片山が室長代理、恵美子の3人だけとなる。片山が持ってくる案件を恵美子が解決できなければ即雅弘の責任となり、雅弘と恵美子は揃って追い出されるという筋書きだった。

手始めに片山が持ってきた仕事は、品川にあるマンション「コープ・ゴア」の501号室に居座っている男の実情を調査し、部屋を明け渡すよう交渉すること。つまり占有屋が相手で、営業経験もない恵美子には手に負えないものだった。退職も視野に入れた時、恵美子の前に「犬頭」を名乗る尊大な態度の探偵が現れた。彼には秘密の依頼人がいるといい、恵美子の仕事を積極的にサポートするらしい。

早速501の住人・猪俣に玄関口で会ったあと、犬頭は無職の猪俣の部屋の中には小型テレビ以外の家具などはなかったことを指摘し明らかに占有屋だという。また金の交渉でも動かなかったことから何か目的があって居座っていると考え、猪俣のねらいを探ることになった。ヒントは部屋の隅にまとめられている新聞の束。新興宗教団体「ギヤマンの鐘」が発行しているものだという。

犬頭が少々乱暴な手を使いつつ2人で調べた結果、この辺りはパシフィック株式会社という暴力団の縄張りであり、直ぐそばにある暴力団事務所では真っ黒な車が来る時は事務所の警備が物々しくなり道の往来も止められてしまうという。だがコープ・ゴアへと行く新聞配達員だけは毎日のことなのでお目こぼしを受けているらしい。配達員は、猪俣が時間に厳しく少しでも遅れるとものすごい剣幕で電話がくると証言した。また近頃は、パシフィックと犬猿の仲のセントラル株式会社もこの辺りに手を出してきているらしい。

次にパシフィック株式会社の組長たちトップ3がコープ・ゴアの近所の事務所にやってくる日を確認した犬頭は、これで事件は解決だというが恵美子にはさっぱり分からなかった。犬頭は、猪俣と新聞配達員の背格好が似ている点を挙げ、猪俣が部屋に居座って毎日同じ時間に新聞を取り続けた理由を話して聞かせた。事件解決後、いつの間にか犬頭は姿を消していた。

 

パシフィックVSセントラルが「居座られた部屋」の真相でした。犬頭と名乗る怪しい探偵の正体は、雅弘が幼い頃からお守りとして大切にしている犬のぬいぐるみ・犬太です。恵美子の失敗=雅弘の失脚(寝たきりなのに家を追い出される)になるため、犬頭の推理力と腕っぷしの強さはかなり頼りになります。

借りると必ず死ぬ部屋

世田谷区の外れにある「グランドハウス」の301号室は、5人の住人が立て続けに死亡したといういわく付きの物件だった。依頼人は次に301号室を借りる予定のフリーライターの妻。恵美子はマンションのオーナーで自身もグランドハウスの1階に住んでいる須貝から鍵を預かり問題の部屋へと向かった。

301号室で亡くなったのは順番に、飯森由起夫(青酸カリを飲んで自殺)、樽水陽(青酸カリを飲み自殺)、山下康志(鬱を発症し行方不明ののち山林で首を吊っているのが発見)、宮入大介(勤務先のビルから飛び降り)、清水晶(飛び込み自殺)となっている。部屋を見ていたところ突然現れた認知症を患う老婆に脅されていたところに、犬頭と須貝が現れた。須貝は地域ボランティアをしていて、老婆の面倒なども見ているといい部屋まで連れ帰った。犬頭は、次に301号室を借りる予定の男に、借りたら死ぬ部屋を何故借りることにしたのか聞きに行くと言った。

ライターの相田は取材の一環で301号室を借りた。オーナーの須貝とは幼い頃からの腐れ縁で、依頼人である相田の妻は元々須貝と付き合っていた。それでしばらくぎくしゃくしていたが、今回の件は須貝から貰ったネタだという。当時事件を担当した警察官に聞くと、最初の二人が自殺に使った青酸カリは同じ小さな瓶に入ったもので、入手先は不明だった。また樽水はボランティアや寄付をする須貝に目を付けて小銭をたかり、301号室が問題物件であることを知りつつ住んでいたという。生活は荒れており自殺に対して疑問の声はあがらなかった。

その後犬頭は、301号室のマスターキーは須貝が持っているが開閉の記録が残る金庫にしまわれており、飯森が亡くなった時に開けた以外不審な記録は残っていなかったこと、須貝のボランティアの範囲が自殺仲間を募るような違法サイトの追放運動にまで及んでいることを知る。再び恵美子を伴って301号室に戻った犬頭は、亡くなった5人のうち本当に偶然自殺したのは1人だけで、残りの1人は殺人、3人は作られた自殺だと言った。

 

犯人の最終目標はフリーライターの相田でした。相田の気を引くため、借りると必ず死ぬ部屋を作り上げていました。

ゴミだらけの部屋

72歳の前島四毛が所有する一軒家はいわゆるゴミ屋敷だった。悪臭に耐えつつ訪問した恵美子だったが、会うこともできず途方に暮れるばかりだった。そこに近所の住人が声をかけてくる。倉岳と名乗る元警察官で、退職後は交通相談員をしている男だった。ちょうど現れた犬頭とともに話を聞くと、前島がゴミを集め始めたのは一昨年の夏頃かららしく、前々からごみ屋敷だと言う認識はあったものの悪臭が漂い始めたのはここ最近だという。

通報者の住人や町内会長に話を聞いたところ、前島には息子がいたが、リストラされた後に再就職が決まり今は家を離れて地方にいっているらしい。また町内の住人でお金を集めてゴミを撤去しようという話も出たが、ゴミの処理は前島自身にやらせるべきだという倉岳の反対にあい、手の打ちようのない状況だという。大島不動産内で反社長派で恵美子の味方をしてくれる部長の篠崎から、前島家一帯はマンション建設の計画があるものの前島だけが立ち退きに応じていないことも分かった。犬頭の指示でいったん解散し、再び夜に集まることになった。

恵美子はネットカフェで倉岳の部屋で見つけた記事、警察官殺しについて調べ始めた。一昨年の冬、近所の公園でパトロール中の警察官がホームレスの男に銃を奪われ射殺された。遺体は池に放り込まれ、その後ホームレスは階段から踏み外して転落したらしく手に銃を持ったまま遺体で見つかった。殺された警察官は倉岳の相棒だった。

夜、犬頭と張り込みをした恵美子は、前島に立ち退きを迫っていた地上げ屋たちが生ゴミをゴミ屋敷に放り込むのを目撃した。悪臭の原因は前島のゴミではなく、地上げ屋が持ち込んだゴミだった。犬頭の反撃によりひとまず悪臭問題は解決した。その後前島家へと足を踏み入れた2人は、階段すら塞ぐ勢いで所狭しと積み上げられた新聞や雑誌類の山に驚く。これが雪崩を起こせば命の危険だってある。犬頭は見るべきものは見たといい屋敷をあとにした。再び町内会長の所へ行き、前島の息子のことを詳しく聞き出すと、倉岳が隠し持っていたという雑誌を恵美子に見せた。警察官殺しに疑問を投げかける記事だった。犬頭は警察官は本当は自殺だったのではないかという。それを確かめるため深夜過ぎ、前島家のゴミの間に身を潜めた2人の耳に、誰かが忍んで来る物音がした。

 

前島はただ漫然とゴミを集め屋敷に積み上げていたのではなく、明確な意図をもってゴミを集めていました。前島はあるものを隠し助けるために自宅をゴミ屋敷へと変え、ある人物はその証拠を消すために灯油を手に前島家へと忍び込んだものの、犬頭によって犯行は未然に防がれました。

騒がしい部屋

5階建ての低層マンションの住人・滝野がポルターガイストが起きると騒いでいるという相談が持ち込まれた。現場へ行った恵美子は、依頼人でマンション管理を請け負っている熱海から手遅れだとそっけない態度であしらわれた。滝野は昨晩幽霊が出ると言って部屋で大暴れし、近隣の住人に通報された。警察官が来た時滝野は錯乱状態で、そのままパトカーで連れていかれた。問題の最上階の503号室は警官が立っているはずだったが、犬頭がいた。

503号室に勝手に入り込んだ犬頭は、荒れた室内を調べた結果、幽霊ではなく人の手によるももだという。再び管理人の熱海や隣の部屋の住人に話を聞くと、滝野が部屋の異変を訴えていたのは今回で3回目で、騒ぎが起きたのは全て金曜の深夜だと分かった。犬頭はポルターガイストが起きる時共通しているのが、子どもだという。つまり子どもによるいたずらだ。2人は滝野の職場へと行き、彼が堅気ではなさそうな客の女性とこっそりと付き合っていたことを知る。その女性の勤務先のスナックへと行ってすぐ2人は数人の男らに襲われたものの、犬頭が返り討ちにして逆に女性の居所をつきとめ向かったが、部屋はもぬけの殻だった。

犬頭は篠崎にある物件を調べるよう頼めと恵美子に指示し、確かめたいことがあるといい滝野が住むマンションへと戻った。マンションの向かいには閉鎖した工場があった。不法侵入した犬頭は誰かがここで煙草を吸っていた形跡があるといい、この工場の外階段の踊り場が見えるのは滝野の部屋のみだという。そして滝野がポルターガイストだと叫んだ一連の騒動について、一つの推理を組み立てた。

 

外階段の踊り場を見張るために滝野の部屋が必要になり、そのため彼は都合3回、ある部屋を自分の部屋だと思い込まされていました。ただそれを行った連中の手際が悪いばかりに、滝野の目には怪奇現象として映ってしまったのが真相でした。

誰もいない部屋

三鷹の「マンション・メイツ」の506号室で住人の失踪事件が相次いでいた。これで4人目だと管理人の足利は言う。恵美子はマンションを見上げて逆ではないのかと首をかしげた。呪われた506号室のある5階と4階はほぼ満室で、2階、3階はほぼ空き家だった。そんな恵美子に、調査会社の坂井と名乗る男が声をかけてきた。依頼を受けて失踪した4人目の住人・石浜夕子の行方を捜しているという。3日前の深夜、坂井やその仲間たちがマンションを見張る中、夕子は忽然と姿を消した。以来ずっとマンションを張っているものの動きはないという。

個人情報保護を盾に恵美子は506号室の鍵を借りられなかった。いつものごとく突然現れた犬頭とともに、隣の505号室からベランダ伝いに部屋を覗くことはできたが、確かに部屋に夕子が戻っている気配はなかった。505号室の女性はライターをしているらしい。

犬頭は坂井から、夕子が愛人の男から300万円を持ち逃げしたことを聞く。坂井の依頼人はその男だった。その後2人を襲ってきた連中を返り討ちにし、正体が「ギヤマンの鐘」の信者であることを知る。失踪した最初の住人・館石邦子の保証人もギヤマンの鐘の信者だった。館石とギヤマンの鐘の間で何かがあったと犬頭は考えた。その後、協力者の篠崎により館石邦子には赤ん坊の頃に別れた娘がいたことを知る。その娘は505号室の住人・木川絵里だった。

絵里は505号室は自分にとってのラッキースポットで、この部屋に住み始めてからライターの仕事もうまく行き始めたという。またマンションの住人達も優しい人ばかりでストーカーを撃退してくれたこともあるという。506号室については、邦子はまるで母親のよう、2人目は気さく、3人目は落ち着いていて色々教えてもらったと話す。4人目の夕子に関しては近づきにくかったらしい。犬頭は人の命がかかっているので殴る蹴る剥ぐ潰すは厭わないと言い始め、恵美子から殴る蹴るまでだと窘められると4階の部屋を一つずつ襲撃していった。4階は全てギヤマンの鐘の信者で埋まっており、夕子はその中の一室に監禁されていた。犬頭は、ギヤマンの鐘の信者たちは夕子を邦子だと勘違いしているのだと言った。

 

邦子から3人目までは失踪でしたが、4人目の夕子は拉致監禁でした。ギヤマンの鐘は邦子が娘のところに姿を現すのを待ち構えるため、マンションを信者で固めていたようです。

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警視庁いきもの係シリーズの「ペンギンを愛した容疑者」にも恵美子が登場しています。福家警部補シリーズにいきもの係の須藤が出てきたり、いきもの係に福家が出てきたりとシリーズものを多く持っている作家さんならではの楽しみ方ができていいですね。