大倉崇裕「問題物件」シリーズ第2弾『天使の棲む部屋』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「天使の棲む部屋」のあらすじと感想をまとめました。

難病でベッドから離れられない先代社長の息子・雅弘の世話係として大島不動産に就職した恵美子が、雅弘を追い落とすため現社長によって創設されたクレーム処理係「販売特別室」に持ち込まれる問題物件を、雅弘が幼い頃から大事にしている犬のぬいぐるみ・犬太の化身である犬頭とともに解決していくシリーズ第2弾です。

ぬいぐるみが不思議で無敵な力を行使するというファンタジー要素はあるものの、推理ものととしてはごくまっとう(?)で面白いです。

スポンサーリンク

「天使の棲む部屋」書籍概要

ついに最恐の物件現る!?アメリカのアリゾナ州にある洋館の一室では、犯罪容疑が濃厚な人物が次々と拳銃自殺を遂げているという。大島不動産販売・問題物件担当の若宮恵美子は、その「悪魔が棲む部屋」へと送り込まれる。最強の相棒・犬頭光太郎不在の中、恵美子は部屋に秘められた恐るべき謎を解明できるのか?(表題作)痛快!「問題物件」シリーズ、待望の第二弾。「BOOK」データベースより

  • 天使の棲む部屋 問題物件(2016年3月/光文社)
  • 天使の棲む部屋 問題物件(2018年7月/光文社文庫)
created by Rinker
¥770(2020/11/01 03:20:59時点 楽天市場調べ-詳細)

天使の棲む部屋

新たな治療法を試すためにアメリカに渡った雅弘たち。アリゾナ州にある大島不動産社長が購入した曰く付きの洋館が、次の恵美子の仕事だった。館のある客間が、疑惑がありつつも無罪になった人物が泊まるとなぜか銃で自殺してしまい、明らかに無罪になった人物が泊まると何も起こらないという事態が立て続けに起きて以降「天使の棲む部屋」と呼ばれるようになった。有罪の人間には天使が罰を下すというわけだ。恵美子は館に泊まり調べることになった。

館にはこの地域随一の資産家一族の前オーナー・エミリオ、車いすの客・バーバラ、目が悪くサングラスをかけ手袋をしたポール、トランクのキャスターが壊れるほどの商品を持ち歩くセールスマン・オリビエ、詐欺の投資話で客の金を巻き上げたものの無罪になったトムがいた。ポール、バーバラ、オリビエの3人は過去にトムにより全財産を失ったと恨みを抱いていた。夕食の席で館のワインセラーには価値の高いワインが多く眠っていることや、トムが天使の部屋で無事に一晩越すことができればオリビエたちは訴訟を取り下げると言う話をし、1階の天使の棲む部屋に泊まるトム以外、それぞれが2階の部屋に戻った。

翌朝、天使の裁きが下りトムが死んだ。状況は銃による自殺だが不審な点があるとエミリオは言い、トムに対して動機のない恵美子を助手に指名し警察が到着するまでの間トムの死を検証することになった。トムの所持品の中には毒薬があった。また深夜、1階と2階をつなぐエレベーターが計4回作動していた。つまり1階への行きと帰りの2往復、2人の人間もしくは2組のグループが1階に行っていたことになる。エミリオの追及で一つがオリビエだと判明するが彼の目的はトムの殺害ではなかった。残るポールとオリビエは各々の潔白を主張したが、エミリオによって犯人があぶり出された。

だがエミリオは犯人を警察に突き出さず、全員をまとめて天使の棲む部屋へと閉じ込めて銃を渡し、生き残った1人だけを助けるという。エミリオの目的は祖父の代から続く「天使の棲む部屋」の継承だった。日本人がオーナーになることに納得しておらず派遣されてきた恵美子をこの客間で殺害するつもりだったらしい。銃を向けられ絶体絶命に陥った恵美子のところに犬頭が姿を現し、エミリオたちを蹴散らすと、エミリオの一族の当主達が代々行ってきた罪人を始末する死のゲームのからくりを解き明かした。

 

アメリカでの医療も雅弘には効かず、この事件の決着後、再び日本が舞台になります。

水の出る部屋

他社の物件トラブルも引き受ける大島物産の次なる案件について、恵美子は水の出る部屋に怯え切っている日向から引き継いだ。問題は6階建てマンションの4階404号室の女性が風呂場で自殺を図り溺死したのに始まる。以降404号室は1年ほど空き室のままで、10日前、リフォーム業者のミスで1階と2階に悪臭が立ち込めるという騒動が起き、1・2階の住人らはホテルに避難しその間警備会社の人間がマンションの警備を行った。

その翌々日、304号室の塚本から天井から水漏れがあり床に水が溜まっているという連絡があった。連絡を受けた日向は4階の部屋を訪ねて回ったものの異常はなかった。最後に空き室の404号室も確認することにした。防犯のため鍵は最新のものにしてあり施錠もしてあり、水が使われた形跡はなかったにも関わらず床は水浸しの状態だった。更にその翌日、塚本が行方不明になり埼玉の外れの湖で溺死体で発見された。そして4日前、異臭騒ぎの挨拶回りでマンションを歩いていた日向は気が遠くなり、気が付いた時には404号室の水の張られた浴室にいたという。恵美子と犬頭は、無人の404号室が水浸しになった理由を明らかにするとともに、日向にかかった呪いとやらを解くことになった。犬頭は今回の呪いはデタラメだと言い、問題のマンションへと向かった。

管理人のマスターキーの鍵の管理はずさんだった。404号室・304号室と見て回っていると、2人は次々にやってくる柄の悪い男たちに襲われる。ライターの塚本はゆすりをやっていたらしく、彼に秘密を握られ強請られた人間たちが恵美子と犬頭がマンションをうろちょろするのに危機感を感じて男たちを雇ったらしい。全員をのした後、犬頭は204号室に行くと言い出す。204号室はイラストレーターの稲垣沙綾、彼女はいつも紙とペンを持ち歩いてイラストを描いており、304号室の水浸し騒動の時は壁に貼っていた自分のイラストも水漏れで被害にあっていた。その中の一枚は異臭騒ぎの日に電車の中で見た人を描いたものだった。

犬頭は10日前に沙綾の乗った電車の沿線で、重大事件が起こっていなかったか調べるよう指示した。ある派遣会社の女性が自宅マンションで殺害される事件が起きており、今だ犯人は特定できていなかった。犬頭はこの事件が404号室での水漏れ事件、塚本の溺死に繋がっているという。

 

マンション内の水漏れ騒動を起こした犯人は、非常に回りくどいやり方で自分の起こした事件の証拠隠滅を図りました。しかしそのために塚本を殺害するのは本末転倒ではないかなと思います。

鳩の集まる部屋

1年前から近所迷惑も顧みず野鳥に餌をやり続けた結果、大量のハトが押し寄せ糞害に見舞われている家々がある。今回の依頼は何度苦情を申し入れても餌やりを止めない鳩屋敷の住人・内海の隣人である佐久間だった。ハトの糞で白く覆われた道路で立ちすくむ恵美子に声を掛けてきた人物がいた。役場の鳩対策課・大塩だった。犬頭の登場を期待していた恵美子はがっかりするものの、大塩と連れ立って佐久間の家を訪問した。佐久間は相当腹を立てており、まるで役に立たない大塩を罵り、恵美子が何もできなければ自分に考えがあると物騒なことを言いだしている。途中、顔を見せた佐久間の飲み仲間だという芳野も佐久間を焚きつけるようなことを言いだす。

まずは内海本人に交渉に行ったものの、餌はもうやらないという守る気のない約束をされ玄関で門前払いされた。次の別居している内海の妻とは、彼女の指定する喫茶店で会うことになった。大塩はヘビースモーカーらしく店に入る前も店に入った後も遠慮なく煙草を吸い出し、挙句の果てには面会相手の妻に煙草を買うお使いまでさせる始末だった。彼女は勤め先のスーパーの店長と付き合っており、鳩の糞害を対処できず逃げ出したものの店をやめることができずすぐ近所に居を構えていた。妻は自分ではもうどうしようもできないのでよろしく頼むと恵美子と大塩に頭を下げた。

大塩に誘われ佐久間の行きつけだというスナックへ行った恵美子は、そこのママから佐久間が酔っ払って内海の家に火をつけるだのと騒いでいたことを聞きだす。その最中、芳野が来店してくると大塩の携帯灰皿を借りて煙草を吸い出す。芳野からも佐久間がガソリンを買い込んだことなど様子を聞いた大塩は、今までのやる気のなさから一転、翌朝鳩対策課の総力を挙げて内海家に立入調査をすると約束し店を出て行った。

店を出た大塩は恵美子を連れて内海の家へと乗り込む。家には誰もおらず室内は鳩の被害で床も壁もひどい有様だった。暗闇の中、部屋の一角に身を潜めた大塩はここで待つと言い出す。まもなく玄関で男女の声が聞こえ、2人のそばで何か大きな荷物と落とす音がした。泥酔した佐久間だった。庭の土を掘り始める音が聞こえ様子を見に行った大塩が戻ってきた時、強烈な光が大塩と恵美子を照らし出した。一連の騒動を起こした犯人だった。

 

今回は最後の最後で犬頭が姿を現し事件は解決しました。鳩屋敷騒動から佐久間の火付け騒ぎまで、全てがある事件の証拠を隠ぺいするための工作でした。

終の部屋

恵美子の前任で雅弘の祖父の代から家政婦として勤めていた薦田恵美子こと”えみちゃん”が屋敷を覗いているのに気が付いた。えみちゃんは介護付きのケアハウスマンションで暮らしており、持病はあるものの自力で外に出歩けるくらいには元気だった。だが本人によるとまもなく死ぬかもしれないので、最後に一目雅弘の姿を見たかったのだという。

5階建てのえみちゃんの入所施設「アストラ」で、ここ1か月で203号室、303号室、403号室に住んでいた人たちが次々に亡くなっており、次は503号室のえみちゃんの番ではないかと噂されていた。

203号室の新堀は認知症を患っており、2か月に1回、息子の家で1泊するのが恒例だった。新堀はその息子宅の風呂場で死亡した。事故か故意かは確定せず息子が疑われたものの宙ぶらりんの状態になっている。新堀は認知症の症状が酷かった3か月ほど前「天女」を見たと大暴れしたことがあった。

303号室の澤井は足が不自由で杖が手放せなかった。息子の家へと出かけた際、一人で散歩中に川べりの土手から転落し死亡した。事故死で決着がついている。403号室の川原は1ヶ月ほど前に施設を退所して元住んでいた家で暮らしていたところ、その家が全焼し焼死した。亡くなった3人は仲が良かったという。

話を聞いた犬頭はずっと世話になっていたえみちゃんのために率先して事件解決に乗り出すことになった。ちょうど手掛けている問題物件がない恵美子も異存はなかった。介護施設「アストラ」はオフィスビルやマンションが立ち並ぶ街の中にあるため、203~503号室の窓は隣のマンションに遮られ景観が非常に悪い。隣の「バンデルハイツ」は5階までが単身者用のワンルーム、6階以上はファミリー向けの物件らしく、6階からはアストラ側にも窓が付いているのが分かった。犬頭達は、死亡した人物の関係者に話を聞いて回った。

新堀の息子はキャリア組の元警察官だが、父親の介護のため警備会社に転職した。父親と仲の良かった澤井・川原が亡くなったことも知っており偶然だと考えていた。澤井の息子は父親の死にショックを受けていたものの、感謝もしていた。実家を売った金でアストラに入居した澤井は隠れて酒を飲んだりと施設に迷惑をかけていた。施設を追い出されると息子家族が面倒をみないといけなかったため、困っていたところだった。息子は父親と仲の良かった新堀と川原のことを知っており、以前新堀が首にかけていたタオルがベッドに引っかかり危うく首吊りになるところを偶然見つけた2人が助けたというエピソードを話した。

川原には身寄りがなく介護士が身元引受人をしていた。介護士によると火事の原因は川原による火の不始末だと言われているが、戸締りや火には神経質だった川原の失火というのはありえないという。

犬頭は窓から見える「バンデルハイツ」の壁に血の跡を発見し、隣の6階に向かった。そこには死後1時間ほどと思われる2人の男の遺体が転がっている。状況から見て遺体は暴力団の構成員、ヘロインのやりすぎが死因と思われた。またアストラに面した部屋には、女性を拉致して監禁した痕跡が残っていた。犬頭によると、新堀が見た「天女」は、監禁部屋の窓から脱走し転落死した女性を、部屋の住人たちが登山道具を使って引き揚げているのを目撃したものらしい。部屋からは何者かによる天女を見たという脅迫文と、新堀・澤井・川原・えみちゃんの写真が見つかった。

恵美子は暴力団たちが「天女」について脅迫を受け、目撃した可能性のある203~403号室の住人を片っ端から手にかけていったと推理したが、犬頭は4人の入居者を隠し撮りした写真から真犯人を割り出した。

 

遺体の目撃者殺しを装った怨恨が犯人の動機でした。えみちゃんをババアと罵られ激怒した犬頭の魔力?によって、犯人は姿を消してしまいました。おそらく死亡したものと思われます。

□□

話が進むごとに問題物件の裏に潜んでいる事件が複雑化してきている気がします。