大倉崇裕「白戸修」シリーズ第1弾『白戸修の事件簿』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「白戸修の事件簿」のあらすじと感想をまとめました。

大学卒業間近のお人好し・白戸修が「中野(区)」に関わると次々に災難に巻き込まれるというシリーズ物の最初の巻です。

お人好しすぎて正直主人公に対してイラっとくる場面も何度かありました。

「白戸修の事件簿」書籍概要

どこにでもいる善良な大学生・白戸修にとって東京の中野は鬼門である。殺人の容疑者が飛び込んで来たり、ピンチヒッターで行ったバイトが違法だったり、銀行で強盗に銃を突きつけられたり…。だが次々に事件を解決する彼を人は「巻き込まれ探偵」「お人好し探偵」と呼ぶようになる。小説推理新人賞受賞作を含む、ちょっと心が優しくなれる癒し系ミステリー。「BOOK」データベースより

  • ツール&ストール(2002年8月/双葉社)
  • 白戸修の事件簿(2005年6月/双葉文庫)※改題
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ツール&ストール

大学の卒業がかかった期末試験が始まった頃、殺人容疑で警察に追われていると言う八木が白戸の部屋に転がり込んできた。ワイドショーを騒がしている古書店店主・猪田の遺体が本棚の下敷きになって発見された事件だった。八木はご近所トラブルからマンションの立ち退きを迫られており、そのマンションのオーナーが猪田だった。八木と猪田の争いを知っている者も多く、タイミングが悪いことに猪田が殺されたと思われる深夜、八木は古書店を訪れていた。

自分と入れ違いに封筒を手に古書店から出て行った男に見覚えがあるという八木は白戸に、その男を元警察官の山野井とともに見つけてほしいと頼んだ。八木が見たと言う男は桑田というスリの常習犯で、山野井は退職するまでは警視庁捜査第三課、スリ係をしていた。山野井は昔取った杵柄で鮮やかな手際で次々とスリを捕まえては桑田の居所を聞き出していった。ようやく電車内で獲物を狙っている桑田を見つけたとたん、目の前で同じく桑田を張っていたらしい3人の刑事たちに、スリの現行犯で桑田を連れていかれてしまった。がっかりする白戸に対し、山野井は被害者を逃がしたのにおかしいと言う。スリはスった人間だけでなく被害者もいないと逮捕できない。被害者に被害を立証して貰わなければ、どうとでも言い逃れできてしまうからだ。桑田の逮捕はあまりにも手回しが良く、別件が絡んでいるのかもしれないと言い、運が悪かった、諦めろと白戸に告げて山野井は離脱した。

八木の容疑を晴らせなくなってしまった白戸に声を掛けてきた女性がいた。その日の夜、警察から釈放され公園内を歩く桑田がいた。そこに暗がりから出てきた男が声を掛け、猪田が死んだ夜に家から持ち出したものを寄越せといい飛び掛かる。揉み合う桑田と男のもとに、植え込みの陰に潜んでいた男たちが飛び出し、桑田に襲い掛かった男を取り押さえた。捕らえられた男こそが、猪田を殺害した真犯人だった。

 

スリをする時、目くらましの役をするのがストール、実際にすり取る人間をツールというそうです。白戸は知らないうちにストールの役割を果たしていました。

サインペインター

怪我をしたと切羽詰まった声で電話をしてきた倉田の頼みで、何も知らされないまま白戸はバイトの代理を引き受けることになってしまった。待ち合わせ場所にいたのは軽トラックに乗る何でも屋の日比という男。日比に連れていかれた先での白戸の仕事は時給1万円、ステ看貼りと呼ばれる見つかれば捕まる立派な軽犯罪法違反だった。木枠とビニールで出来た薄っぺらい看板を、後に引けなくなった白戸は言われるがまま100枚、あちこちの電柱や木に針金で括り付けていった。

それが終わったら次のステ看を受け取り、別の場所に取り付けていく。日比によるとステ看にも縄張りがあるという。予定していた場所には日比の縄張りを狙う峰岸がすでに看板を取り付けていた。全て外せと指示されるがまま白戸は看板を外していく。針金は2周りさせると教えられたが、峰岸は雑なのか1周りしかしていないので簡単に外すことができた。あらたに看板をつけている最中、自転車でパトロール中の警察官と目が合った。日比は白戸を置いて軽トラを発車させ、白戸は日比に言われるがまま走り間一髪で逃げおおせた。日比と合流後、白戸のバイトは延長され1日=24万円になった。人目のつく昼間だが日比がステ看をつけていくので、白戸に運転手をさせるらしい。作業中、峰岸たちのものと思われる車に挟み撃ちにされかけたものの何とか逃げ、日比と白戸はファミレスに落ち着いた。

ファミレスで日比からステ看板の裏事情などを聞くうち、白戸はある疑問を持った。本当に峰岸が先回りして日比の縄張りにステ看を取り付けたのか。日比に自分の考えを聞かせた白戸は、ステ看について話がしたいと峰岸の事務所へ行く。そして夜明け前の暗闇の中、カメラを準備して待ち構える日比と白戸の前にワゴン車が現れると、2人の人間が看板を取り付け始めた。

 

縄張り争いをしている日比と峰岸をまとめて潰すために仕掛けられた罠でしたが、白戸の推理によって犯人たちは逆に証拠を押さえられてしまいました。白戸が稼いだ24万円は、あやしげなバイトに手を出すほどまとまったお金を必要としていた倉田に渡されたようで、日比から改めてお人好しだと言われていました。

セイフティゾーン

1万51円入っている筈の口座になぜか51円しか入っていなかった。知らないうちに1万円が引き出されていた白戸は、さんざん窓口で待たされたあと手違いがあったと謝罪されたが、今すぐ生活に必要な1万円は諸々の手続きが経たあとでないと下ろせないと言われてしまう。白戸に親切にしてくれ1万円も貸してくれたATM案内係の森島という女性にトイレの場所を尋ねると、このフロアは故障中だからと上の階を案内された。用を足していると階下から破裂音が何度か響き悲鳴が聞こえた。階段からそっと下の様子を覘いた白戸と、サバイバルナイフを手にした男の目が合う。追いかけてきた男にナイフを振り上げられダメだと思ったその時、トイレの洗浄液の容器が飛んできて男にぶつかると、現れた別の男によってあっという間に制圧されてしまった。白戸を助けてくれたのは作業服に清掃員という腕章をつけた、芹沢と名乗る男だった。

下にいるのは、ここ最近立て続けに起きている4人組の強盗犯だった。自分たちは立派な人質になったという芹沢は、様子を見に来たもう一人も倒すと最初と同じく手足を拘束してトイレに閉じ込める。清掃員にしては落ち着いた態度も身のこなしも只者ではない。だが森島が撃たれたので助けてほしいという白戸に対しては、自分は身に降りかかる火の粉を振り払っているだけで、救出は警察の仕事だとそっけない。そのうち白戸は、芹沢が15年前に殺人を犯して指名手配中の男だと気が付く。強盗犯が警察に捕まると人質の芹沢たちも事情を聞かれることになる。芹沢によると時効成立まであと12時間は強盗犯たちに粘ってもらわないと困るという。

だがどうしても森島を助けたい白戸は、芹沢の隙をついて階下に向かってまんまと強盗犯に掴まり、強盗仲間と引き換えにする人質になってしまう。芹沢の機転で何とか助かったものの、銀行の外には警察官らが取り囲み拡声器で犯人に向かってがなり立てていた。自分が森島を連れて外に出ると言う白戸に対し、芹沢はまだ逃げるチャンスはあるので足を負傷した森島を利用させてもらうと言い、シャッターの開閉ボタンを押した。

 

数日後、指名手配犯たちの張り紙に、強盗犯4人の顔写真に逮捕と協力を感謝する赤い縁取りのシールが、芹沢の顔写真には時効と書かれたシールが貼られました。逃亡中の殺人犯だった芹沢ですがどうにも憎めないキャラで、代わりに森島が撃たれる原因となり、結果的に芹沢に危険を冒させた主人公の行動にイライラさせられっぱなしでした。

トラブルシューター

買ったばかりの携帯電話に間違い電話がかかってきた。中野駅にすぐ来てほしいといって切れた電話を無視することはできたが、結局白戸は中野駅にいる電話の主に間違いを伝えにいった。間違い電話をかけてきたのは北条という雇われ私立探偵だった。会社の規則で必ず2人一組で動かないといけないという北条は、確保できなかった相棒の代わりに白戸に臨時の相方を要請した。

北条のすぐそばには何かに怯えているような緊張感を漂わせている女性がいた。名前は杉本恵、ストーカーに狙われているという恵は24時間の警護とストーカーの身元確認を依頼していた。盗撮、盗聴、ゴミの持ち去り、留守電への伝言、ポストへの気味の悪い贈り物とやりたい放題で恵はすっかり参ってしまっていた。実家を飛び出し東京に出てきた恵は半年前まで風俗店で働いていた。その時の客が犯人だろうと北条はいうが、よほど用心深いのかいまだに正体を掴むところまでは行っていない。それらの事情を恵の耳に入らないところで話して聞かせた北条の前に、探偵事務所の同僚でソリが合わないという出川と取り巻きが現れ、北条の相方が精神を病み入院したことをからかい、挑発して去っていく。

恵は引っ越しするか、アパートを引き払って実家に戻ればいいのではと尋ねてみた白戸だったが、北条によると引っ越しにはまとまった金が必要で、母親の再婚相手である義理の父親のところへは戻りたくない事情があるらしい。結局ストーカーを捕まえるしかなさそうだった。恵を先に眠らせ見張りに付く北条と白戸の耳にかすかな物音がした。ベランダからカーテン越しに男が中を覗いていた。追いかけていった2人は男を捕まえたものの下着泥棒だと判明した。泥棒は帽子をかぶった若い男に女性が一人で住んでいると言われ恵のアパートに行ったらしい。下着泥棒がストーカーの囮として利用されたことが分かり急いで恵の元へ戻ると、恵は部屋の空気が何か違うと怯えていた。小柄な男が押し入れから飛び出してくると、玄関口にいた白戸を跳ね飛ばし逃走していった。結局逃げられてしまったものの、追いかける白戸の頭の中に違和感が黒い雲のように広がりつつあった。

アパートへと戻った白戸は、恵を介抱している北条に聞いてもらいたいことがあると言った。

 

犯人は恵の父親に依頼され、彼女を実家に戻すためストーカーに扮し恵が自ら東京を引き払うよう画策していました。白戸の作戦が功を奏し、犯人は見事あぶりだされました。北条は今後も自主的に恵の警護を続けるそうです。

ショップリフター

翌日に初出社を控えた白戸は、激安のチラシに惹かれ丸三デパートでスーツを買い求めた。だが頼んでいたすそ直しは寸法を間違えられ短く仕上がっていた。在庫でやり直しをしてもらうことになり、2時間の待ち時間ができてしまった。デパート内で時間潰しをしていた白戸は、白戸の就職先・世界堂出版の最終面接会場で出会った向山と出くわした。向山は自分こそが採用されると自信たっぷりだったが、白戸が採用され恨んでいるらしく嫌味を言って去っていく。

CDショップでふらふらしたあと白戸が店外に足を踏み出した途端、ブザーが鳴り響いた。そばにいた保安員だという女性に声を掛けられ別室へと連れていかれた白戸が、なぜかポケットに入っていたCDについて潔白を訴えていると、女性の元にCDショップで万引きが起きたと報告が入った。保安員をあぶり出すために白戸が利用されたらしい。深田重子と名乗った保安員は、万引き犯を捕まえるために白戸に協力を求める。白戸は深田から携帯で指示される通りデパート内を歩き回ることになった。

あちこち回って漫画を大量に鞄に入れる女子学生グループを通報したり、別の万引き犯を取り逃がしたりしたあと、地下の食品売り場へと行く。そこでレジを通さないまま買い物かごの中身を手際よく袋に詰めていく女性を見つける。女性は白戸と目が合うと、万引きしたものを袋ごとカートに残して逃げ出した。深田に追跡中であることを報告すると、すぐに戻るよう言われる。結局店外まで追いかけたものの女性を見失ってしまった白戸の腕を深田が掴んだ。白戸の手には女性が置き去りにした商品があった。二度目の万引き犯だと深田が嘲笑を浮かべるのに、ようやく白戸は誰かにはめられたことを悟った。

 

白戸が惹かれた激安チラシも、CDショップでの万引きも、食品売り場での万引き女性も、全てが白戸を罠にはめるためのものでした。理由は白戸を万引き犯として警察に引き渡し、内定を取り消しにするため。深田には依頼人がいたようです。ですが深田には敵も多くいたらしく、白戸には救いの手が伸びて万引きは無効とされ、追い詰められた深田は逃亡しました。深田の依頼人も公衆の面前で反撃を受けたようです。

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3冊出ている「白戸修」シリーズを逆から読んでしまったので、シリーズ第1弾の今回はゲストキャラたちのおさらいをしている気分になりました。どうもこのお人好しな主人公とは合わないようで、読みながらなぜこの主人公に人や協力者が集まるのか、最後まで理解できませんでした。