大倉崇裕「白戸修」シリーズ第2弾『白戸修の狼狽』あらすじとネタバレ感想

大倉崇裕さんの「白戸修の狼狽」のあらすじと感想をまとめました。

お人好しが過ぎる白戸修が、相性の悪い「中野区」に近づくと必ず事件が起きるという設定で今回も5つの事件(短編)が起きています。

巻き込まれ型主人公ですが、事件に巻き込まれすぎてか順応力が非常に高いのも面白いところです。

「白戸修の狼狽」書籍概要

なんとか中堅出版社に就職した白戸修。事件とは無縁な生活を送っているかと思いきや、鬼門である中野で、またまたトラブルに巻き込まれていた。でもやっぱり困っている人は見過ごせないし、人の頼みも断れない。クスッと笑えて、ほろっと泣けるハートウォーミングなミステリー、待望のシリーズ第二弾。「BOOK」データベースより

  • 白戸修の狼狽(2010年3月/双葉社)
  • 白戸修の狼狽(2013年5月/双葉文庫)
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ウォールアート

世界堂出版に就職し見習い社員としてあちこちの部署を回っている白戸は、先輩の言いつけで「月刊模型」のイラストレーター・轟の家に塗料のスプレー缶を届けに行くことになった。最寄り駅は「中野」。嫌な予感は当たり、住宅街で白戸は道に迷った。ちょうどやってきた人影に声をかけたところ、その人物は一目散に逃げだしてしまった。袖口にハートマークがプリントされたTシャツの人物だった。困り切った白戸の前に立ちふさがる男がいた。男は白戸に飛び掛かると白戸の持つスプレー缶が証拠だといい、この地域一帯の壁や塀に落書きをして回る犯人だと睨んできた。

七倉と名乗った男は、落書き犯を捕まえるためにパトロール中だった。5丁目、6丁目ときて、7丁目に被害が広がりつつあるらしい。7丁目の有力者の家に落書きがされたことをきっかけに地元が本格的に動き出した。

七倉にはもう一つの目的があった。元恩師のホームレスが襲撃され入院中だった。被害者の服にはペンキの跡が残っていたため犯人は落書き犯だと思われる。成り行きで七倉についてパトロールをして回る最中、ハートマークがプリントされたTシャツの男を捕まえた。轟だった。彼は仕事のストレスで落書き犯に便乗していたらしい。世界堂出版がたびたび届けていたスプレー缶は落書きに使われていた。町内で一斉に行う落書き消しのボランティアに参加することを条件に、轟は警察に突き出されることもなく解放された。

色々な人に話を聞くうち、白戸はあることに気が付いた。5丁目6丁目ともに公共施設、商店、個人宅という順番に広がる落書き被害が、7丁目だけは地元有力者個人の家に落書きされていたのだ。そこからある推理をした白戸は、有力者の家の落書きの一部をこすり落とした。落書きの下からは茶色い何かーー血の跡と思われるものが出てきた。

 

7丁目の個人宅のそばで七倉の恩師は被害にあっていました。飛び散った血痕を隠すため、犯人は落書き犯を装って壁に落書きを施していました。

また轟は「月刊模型」のイラストレーターを降りたがっていましたが、今回の事件で恩を感じたのか締め切り前にも関わらず来月号のイラストのラフを出版社にFAXしてきたようです。

ベストスタッフ

せっかくの土日、大学の先輩から電話を受けた白戸は、中野区にある雛美紀子というアイドルコンサートの舞台設営のバイトに駆り出されこき使われていた。「ベストスタッフ」という会社のアルバイトでとりまとめ役もしている先輩・仙道をはじめ現場の人間たちは、どなるだけで何もしないチーフの園田の存在を疎ましく思っていた。今回の現場では怪しいことが次々と起こった。

まずは何者かによってコンサートが延期でバイトが中止になったというガセが流され人手が足りなくなった。設営中資材が崩れ落ちてきてあやうく大事故になるところだった。簡単に割れるペンキが入ったプラスチックボールが何者かによって投入されステージがペンキで汚された。資材を運ぶ台車の足の部分が壊れ、ぶちまけられた資材によってただでさえ遅れがちな設営現場において、モニターの搬入が滞る。崩れ落ちた資材や壊れた台車、どれも人為的なものだった。

ピリピリする現場を仙道が何とかまとめていた。

白戸が一度は屋上まで追い詰めながらも取り逃がした犯人を、仙道の機転によって捕まえた。設営スタッフの一人だった。雛美とオーディションで争った別のアイドルのファンで、雛美のコンサートを潰す狙いがあった。現場優先のためひとまず部屋に閉じ込めておくことになった男だったが、妨害工作を行っているのは自分だけじゃないというニュアンスの言葉を残した。

本番を翌日に控え、マスコミや招待客向けのコンサートが間もなく始まる。今まで見聞きした情報からスタッフの中に他にも妨害を行っている人間がいることを確信した仙道と白戸は、見つけ出した犯人の態度からステージ上に設置した階段の数が一段多いことをに気が付いた。舞台の照明や演出によって足元がおろそかになる雛美を舞台から転落させるつもりらしい。歌い始めた雛美のもとへ白戸は走った。

 

間一髪、雛美紀子は大けがを免れましたが、落ちてきた雛美を受け止め危機を救った白戸は激しい腰痛に見舞われました。身を挺してアイドルを救った白戸は、顔は隠されていたものの新聞に載ったようです。

タップ

アイドルコンサートで腰痛を患った白戸は、整体に向かうために乗っていた電車の突然の停車に嫌な予感がした。中野区だった。タクシー乗り場へと向かう途中、落ちていたポーチを拾い交番に届けようとしたところ、見知らぬ女性に声を掛けられる。そのポーチから盗聴電波が出ていると。

盗聴器の発見と撤去を専門にやっているという諸刃冴子に連れられ、なぜか白戸もポーチの持ち主の家へと行くことになった。盗聴被害者は柳沢由美、薄幸そうな女性はつい最近、婚約者がひき逃げされ意識不明に陥っていた。彼女自身も現場に居合わせたものの、ショックのあまり犯人の顔を忘れているという。また白戸はマンションの管理人から、由美、婚約者ともに身寄りがなく、看病のため由美は病院近くのこのマンションに越してきて毎日見舞いに出かけ、入院にかかる費用も由美が持っていると聞く。

由美の部屋から4つの盗聴器が発見された。犯人を下手に刺激しないよう盗聴器はそのままにしてホテルに移動し、警察に通報したほうが良いという冴子に対し、由美は金銭的な余裕を理由に撤去を求めた。

すぐに盗聴器を仕掛けた犯人が動き出した。複数犯だった。冴子のすきをついて由美が攫われたものの、逆に盗聴器をしかけた冴子によって犯人が向かう先がわかり、白戸とともに現場へと向かう。

婚約者をひき逃げした犯人たちの顔を思い出した、自分を拉致した人間たちだ、警察に言うという由美に対し、犯人らは口封じをしようと銃をつきつけた。

 

ひき逃げの現場を見られた犯人たちが、目撃者の動向を知るため盗聴器をしかけていました。ただ盗聴器にはもう一人別の人間の思惑も絡んでおり、白戸の推理により冴子が明らかにしました。

ラリー

電車に忘れてきた体重計が中野駅に届いていると聞いた白戸は、慎重に駅に降り立った。ふと見れば足元に定期入れが落ちている。持ち主がトイレに入って行くのを見た白戸は追いかけたものの、個室に立てこもった男はなぜか受け取りを拒絶する。そこに見知らぬ男が声をかけてきた。2人一組での参加なので今リタイアされるのは困るといい、白戸を強引にパートナーに仕立て上げると電車に乗り込んだ。

男は宇田川と名乗った。私立探偵をやっておりルール無用の裏スタンプラリー参加中だという。指定された駅に待つ人物にスタンプと次の行き先を貰い、10個の駅を一番早く回ったチームに、非常にレアなフィギュアがプレゼントされるらしい。定期入れに入っていたSuicaが参加証になっていた。

白戸たちは同じ参加者と思われる2人組から襲われるものの、宇田川が手際よく倒しては相手のSuicaを真っ二つにし退場させていく。それとは別に、白戸は乗る電車乗る電車で暴力スリの現場に出くわした。

暴力スリ撃退、参加者を強制退場、強制退場させられた者たちによる報復、次々と襲い掛かってくる敵を倒してゴールした白戸と宇田川だったが、ずっと1位を走っていたものの結局2着で参加賞を手にした。1位を狙っていたはずの宇田川が参加賞でも残念がっていないこと、行く先々で目にした暴力スリ集団……不思議に思っていた白戸は、1位になったチームを知り、ようやく宇田川の真意に気がついた。

 

1位のレアフィギュアはこの世に1体しかないもので、400万円くらいはするそうです。フィギュアオタクを自称する宇田川でしたが、参加賞を手にし満足しているようです。

ベストスタッフ2 オリキ

仙道の強引な誘いで、再び白戸はアイドルコンサートのバイトに駆り出されていた。今回は「NAKANO-KU」という少年5人組のコンサートの警備。当然会場は中野にあった。公演は昼と夜の2回。ステージそばに立ち、ファンたちがステージに近づかないよう柵を抑える係だった。コンサートは大盛り上がりだった。ラスト間際には興奮したファンたちが前へと身を乗り出し、白戸たち柵抑えが必死になって柵でガードする。別部隊の仙道たちが助っ人に入る中、頑丈に締められているはずのボルトがゆるみ、はじけ飛んだボルトで仙道が怪我を負い、その血で白戸のスーツも汚れた。

控室で着替えをしていた白戸のもとに、ユカという少女が姿を現した。「NAKANO-KU」の力を入れて追っかけをしているオリキの仕切り役だという。ユカは別のオリキがルール違反をたびたび行い注意しても改めなかったため、上の人間に報告した。結果的にその子は追放され、ユカを恨んでいるらしい。その子が雇った人間たちに追われる中一緒にホール内を逃げていた白戸は、「NAKANO-KU」のマネージメントをしている犬蔵と出会う。彼は白戸が以前雛美を救ったことを知っており、白戸やユカに好意的だった。

昼公演で柵の危険性を重視した運営側により、夜は最前列であるA席が封鎖されることに決まった。A席の客らには特別な特典を付け、全員が席の移動を納得したという。その中にA席の両端の2席計4席は、設置したスピーカーによって舞台が見られない死角席だった。いつもは売れ残る死角席が、今回の公演に限って売れたことをユカは疑問として述べていた。

最前列が後ろに下がったことで、白戸は無事にお役御免となった。

だがさまざまな事象から、今回の一連の騒動が追放されたオリキの仕業であること、ユカを狙う集団やボルトがゆるんでいたことも含め、真の狙いが「NAKANO-KU」自体を潰すことだと推理した白戸は、コンサート会場に飛び込む。昼公演の反省をふまえ、夜は客のボルテージが暴動寸前にまで上がったラストの曲を前に持ってきていた。まさにその曲が今始まったばかりだった。

 

白戸は再び身を挺してアイドルの危機を救い、二度目の奇跡として新聞にも載りました。協力したユカは犬蔵によって一年間の「NAKANO-KU」のコンサートの顔パスの権利を得たようです。

 

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中野区に近づいた時のみ事件に巻き込まれる白戸の話でした。お人好しゆえに誘いを断り切なかったり、周囲がスルーする中落とし物を拾って事件に巻き込まれていくのですが、読んでいるこちら側からすると、着々と人脈を築いていっている結果的に要領のいい人になっていました。