大山誠一郎『仮面幻双曲』あらすじとネタバレ感想

大山誠一郎さんの「仮面幻双曲」のあらすじと感想をまとめました。

「双」の字がタイトルに入っている通り、一卵性双生児の特徴を利用したトリックが使われています。

想像していた以上に大胆なトリックだったので、部分的には分かったのですが、全体を通してみるとほぼ騙された!という気持ちの良い読後感に浸された一冊でした。

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「仮面幻双曲」書籍概要

双子の弟から兄への殺人予告。そして、事件は起こった。一見不可能に思える殺人事件の謎に、若き探偵が挑む。その先に待っていたのは意外な結末だった。「BOOK」データベースより

  • 仮面幻双曲(2006年6月/小学館)
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昭和22年11月、東京で探偵事務所を経営する川宮圭介と奈緒子の兄弟は、滋賀県のある駅に降り立った。地元で5本の指に入る紡績会社・占部製糸の若き社長、占部文彦から護衛の依頼を受けてのことだった。

登場人物

  • 川宮圭介:私立探偵
  • 川宮奈緒子:圭介の妹
  • 占部文彦:双子の兄で占部製糸の社長
  • 占部武彦:双子の弟。文彦を憎んで復讐のため顔を変えたと思われる。失踪中。
  • 占部貴和子:文彦と武彦の伯母で前社長の妻
  • 寺田純子:占部家の女中
  • 岡崎史恵:占部家の料理人
  • 安藤敏郎:占部家の運転手
  • 立花守:文彦の恩人らしくよく金の無心にくる髭面赤ら顔の男
  • 藤田修造:占部製糸の専務。
  • 出川巡査:駐在

あらすじ

駅には貴和子と運転手の安藤がやってきた。依頼人の文彦は、まだ会社から帰っていないのだと言う。屋敷に着くと女中の純子が顔をしかめていた。また立花がやってきて、文彦の部屋で帰りを待っているのだという。恩人というだけで明らかに身分の違い立ち居振る舞いもふさわしくない立花のことを、女中は嫌っていた。

会社から戻ってきた文彦は、圭介と奈緒子に夕食をとりながら依頼内容について詳しく説明するという。内密の話なのでと女中も退席させ、貴和子も自室で夕食をとるらしい。文彦は、双子の弟に命を狙われていると話し出した。

文彦には見た目がそっくりな双子の弟で専務の武彦がいた。だが武彦は恋人を青酸カリ自殺で失った。自殺の原因となった中傷の手紙をばらまいたのが恋人に横恋慕した文彦の仕業だと決めつけると復讐を誓い、家を飛び出して東京で整形手術を受けたのだと言う。1年前のことだった。

最近になって文彦の元に武彦から新聞記事の切り抜きが送られてきた。東京の整形外科医が絞殺された記事で、武彦が手術を受けた病院だった。病院に残されたカルテには整形前と整形後の写真を張り付けるのだが、武彦のカルテから整形後の写真が剥ぎ取られていたことが分かっている。今日が武彦の恋人の命日だった。自分を護衛してほしいと文彦は頼み、圭介と奈緒子は了承した。

夜の6時半頃、夕食が終わり自室に引き上げるという文彦の部屋の前で、2人は交代で一晩中見張ることにした。先に圭介が窓の施錠や誰か潜んでいないかなどを確認してから、窓を開けないよう文彦に念を押し、見張りが始まった。

だが翌朝、夕食時の服装のまま、ベッドの上で左胸にナイフを突き刺した文彦の遺体が発見された。窓は開いており、絨毯には土のかけらが落ちていた。警戒している文彦にどうやって窓を開けさせたのかと問う奈緒子に対し、圭介は犯人は文彦に信頼されている人物だと答えた。胃の内容物の消化具合から、夜7時半から9時半が死亡推定時刻とされた。

警察と専務の藤田がやってきた。依頼人を守れない役立たずと追い出されそうになったところを、貴和子の取りなしで犯人を見つけることになった。

犯行時刻、貴和子は自室で夕食をとった後は7時から9時過ぎまで町の婦人会に出席していた。貴和子の送迎をしていた運転手の安藤は、婦人会が終わるまで車で待機していた。女中の純子は、史恵の手伝いをして7時半頃まで片づけをしたあとは自室にいた。料理人の史恵も7時半以降は自室にいた。

警察は立花にも話を聞いた。夜8時半頃までいきつけの居酒屋で飲んでおり、暴れて店を追い出されたのを店の人間や常連客も証言した。また大事な金蔓でもある文彦を殺すはずがないと主張した。

警察はとりあわなかったが、奈緒子たちは武彦が犯人だと考えていた。だが整形手術を終えた昭和21年の12月以降にこの町にやってきて、背格好が文彦に似ている人間というくらいしか分からない。

文彦の通夜には立花や出川巡査も顔を見せていた。棺のそばで一晩過ごすという貴和子に圭介と奈緒子も付き合うことになった。途中刑事もやってきた。その席で文彦の血液型がAB型であることや、占部家に代々伝わる双子の言い伝えを貴和子から聞く。

貴和子の夫で前社長の竜一郎は弟と折り合いが悪かった。弟は妻を連れて家を出ていき、双子が生まれたという手紙が届いたものの交流は断絶していた。占部家には一卵性双生児が生まれることが多く、双子の代には兄弟が支え合いよく栄えていた。貴和子との間に子どもがおらず、自分自身が双子でないことを気にしていた竜一郎は、弟の子どもたちが双子であることを思い出し跡を継がせることを思いついた。だが戦争によって東京は焼け野原になり生死すら分からない。一縷の望みをかけて新聞広告を出したところ、ちょうど戦地から復員した文彦が目にし竜一郎を訪ねた。弟そっくりの甥に竜一郎は感激した。そのうち武彦も復員し、二人は竜一郎と貴和子の養子となり、竜一郎が亡くなったのを機に会社を継いだ。

翌朝、史恵が警察には言えなかったと告白する。事件の夜9時頃、文彦の窓を覗く立花を見たというのだ。安藤の運転で立花の住まいへと出向いた貴和子、圭介、奈緒子は、家の側の崖下に倒れている立花を見つける。胸を刺されて殺された後、崖に落とされたらしい。だが立花の家のそばには底なし沼と呼ばれる沼がある。そちらへほうり込めば遺体が発見されることはなかった。奈緒子は立花が武彦だったのではと疑っていたが、立花の血液型はB型だと判明した。

遺留品などから、警察は文彦と年齢が近く、武彦の整形後に町にやってきた運転手の安藤を武彦と見なし連行していった。安藤は否認している。圭介はあることを調べるため奈緒子とともに東京へ戻る。警察官だった亡き父のツテで、整形外科医の事件の話を聞き武彦のカルテも見せてもらう。

その後双子の友人だったという男に会い話を聞いた。彼によると元々社交的な文彦と物静かな武彦は仲が良くなかったらしい。だが二人は同じ髪形をし、食べ物や女性の好みは一致していたという。男が武彦を見かけたのは、戦地へ赴く前、国民服で人ごみの中を歩く姿を見たのが最後だという。

男の話を聞いて圭介は考え込んだ。今まで自分たちが信じてきた事を突き崩すような、事件の姿を一変する思いつきがあるという。整形外科医に頼まれて夕食を作って届けていたという近所の主婦に、外科医の発見時の様子や普段の生活などを尋ねた圭介は、事件の謎も武彦が整形外科手術でどんな顔になっていたのかも、すべて解けたと言った。

 

まとめ

事件の真相は、確かに今まで読んで積み上げていったことが根底から覆されるものでした。一卵性双生児と聞くと双子の入れ替えトリックをまず思いつきます。当然、この話でも使われていましたが、予想外の使われ方をしていました。

被害者と加害者が入り混じり、最後に圭介が指さした真犯人は意外な人物でした。

奇抜なトリックが面白い話でしたが、武彦の恋人の自殺の真相については後味が悪すぎました。

文彦と恋人の小夜子さん、本人には何の非もない完全な被害者で、可哀そうすぎます。

 

□□

双子を利用した大胆すぎるトリックでしたが、殺された立花が付髭だったと判明したあとは芋づる式に犯人につながる重要なことが分かると思うのですが、警察はそこにはまったくの手付かずで見当違いな捜査ばかりしていました。

わざとなのか無能の演出なのかは分かりませんが、その一点をうやむやに進めた時点で無理のあるトリックだと思ってしまいました。