ライトノベルのような軽い文体ながらも、トリックや謎解きの過程は本格的なミステリーといえば、私の中では「東川篤哉(ひがしがわとくや)」さんです。
読む本読む本すべてにギャグや冗談としか思えない設定を盛り込みつつ、メインの謎解き部分は真面目なのです。登場人物たちは何も考えてないんじゃ?ってくらい(褒めてます)、能天気にユーモラスな掛け合いをするので、殺人事件が起きているのにあまり暗くならないのです。
そんな明るく楽しいミステリーのシリーズを、今回はご紹介します。
東川篤哉さんとは
1968年生まれ、広島県尾道市出身です。
デビューは2002年とのことですから30代の時ですね。ミステリー作家は若くしてデビューする人が多いというイメージが私の中ではあったので、比較的遅咲きの作家さんの部類に入るのかもしれません。
本格的なトリックを用いながらもユーモアを多分に交えたミステリーを書かれるのが特徴で、シリーズ名や地名などでもそのあたりの個性が出ているのが分かるかと思います。
とにかく「楽しいミステリー作家」さんです。
烏賊川市シリーズ いかがわしシリーズ
架空の地方都市「烏賊川市(いかがわし)」を舞台に、私立探偵の鵜飼杜夫が助手(?)の戸村流平、探偵事務所のビルの管理人・二宮朱美たちとともに様々な事件解決に挑むシリーズです。
レギュラーメンバーとして警察のデコボココンビが登場しますが、彼らもとってもいい加減(褒めてます)です。
- 密室の鍵貸します(2002)
- 密室に向かって撃て!(2002)
- 完全犯罪に猫は何匹必要か?(2003)
- 交換殺人には向かない夜(2005)
- ここに死体を捨てないでください!(2009)
- はやく名探偵になりたい(2011)※短編集
- 私の嫌いな探偵(2013)※短編集
- 探偵さえいなければ(2017)※短編集
烏賊川市というだけあってイカのゆるキャラがいたり、実際にイカの生体(?)が事件の鍵を握っていたり…と推理はなかなか本格的です。
最初の「密室の鍵貸します」で戸村が鵜飼探偵事務所に出入りするようになるきっかけの事件が起きるので、ぜひ発行順に読んでみて下さい。
謎解きはディナーのあとでシリーズ
テレビドラマ(フジテレビ系/2011年10~12月)にもなりましたので、知っている人も多いシリーズかと思います。
大企業のご令嬢という身分を隠して新人刑事をやっている宝生麗子の持ち帰る事件の謎を、クールな執事・影山が話を聞いただけでたちまち解決してしまうシリーズです。
- 謎解きはディナーのあとで(2010)
- 謎解きはディナーのあとで 2(2011)
- 謎解きはディナーのあとで 3(2012)
※すべて短編
主人に対して慇懃無礼に無礼なセリフを連発する執事も凄いですが、それを結局許す麗子の度量の深さも良いです。
私の記念すべき初東川作品が「この謎解きはディナーのあとで」でした。
鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ こいがくぼ がくえんたんていぶ シリーズ
架空の高校「鯉ヶ窪学園」のお気楽な探偵部のメンバーが主となった学園ミステリーです。推理小説研究のような活動はせず、実践的に探偵をする部ということでしょっちゅう事件に巻き込まれています。そしてよく野球の話が出てきます。鯉ヶ窪学園野球部は弱いようです。
- 学ばない探偵たちの学園(2004)
- 殺意は必ず三度ある(2006)
- 放課後はミステリーとともに(2011)※短編集
- 探偵部への挑戦状 – 放課後はミステリーとともに 2(2013)※短編集
平塚おんな探偵の事件簿シリーズ
私立探偵のエルザと助手の美伽、女性コンビによる探偵小説です。女性らしい可愛らしさと女性ならではのずぼらさ(?)、いつもどおりのふざけた刑事も登場し、軽妙な掛け合いとともに様々な事件を解決していきます。
タイトルの「ライオン」というのはエルザのことです。なぜライオンと称されているのか…ぜひ手に取ってみて下さい。
探偵少女アリサの事件簿シリーズ
こちらもテレビドラマ化しました。(テレビ朝日系/2017年1月)
スーパーをクビになり「何でも屋」を開いた橘良太のもとにやってきた依頼は、探偵を名乗る10歳の美少女・アリサの御守り。気の強いアリサに翻弄されまくるヘタレな橘のコンビが事件を解決していくお話です。謎を解くのは、両親を探偵に持ち自らも探偵を称するアリサの方です。
- 探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて(2014)
- 探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます(2017)
子どもらしい幼さと冴える推理力というギャップも面白いシリーズです。御守り役を不本意に思っている橘も、だんだんとアリサの扱いが上手になっていくのも見どころです。
魔法使いマリィシリーズ
どMな刑事・小山田と魔法使いマリィのコンビが事件を解決していくシリーズです。魔法使いというちょっと特殊な設定がありつつも、いつもどおりコミカルに謎を解いていってます。
- 魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?(2012)
- 魔法使いと刑事たちの夏 (2014)
- さらば愛しき魔法使い(2017)
※すべて短編
きちんと推理はするのですが、魔法使いという特殊能力の持ち主が登場するので、好き嫌いが別れそうな作品ではあります。
どのシリーズも共通ですが、1冊目に出会いなどが書かれることが多いので、発行された順番に読んでいくのがおすすめです。
東川さんはこれらのシリーズ以外にもいくつか本を出されています。全体を読み通して何となく思うことは「コーヒーがお好きなのかな?」ということです。コーヒーを飲みながら、気楽に読んでいってもらいたいミステリーです。