近江泉美「オーダーは探偵に」シリーズ第1弾『オーダーは探偵に 謎解き薫る喫茶店』あらすじとネタバレ感想

近江泉美さんの「オーダーは探偵に 謎解き薫る喫茶店」のあらすじと感想をまとめました。

思うように進まない就活生の主人公・美久と、美久を振り回す(罵詈雑言とともに冷たくあしらう)高校生探偵・悠貴のコンビのシリーズもの第1弾です。ちぐはぐ感が強いですが、この先巻数が増えるとこのコンビもしっくりいくようになるんでしょうか。乞うご期待の1冊でした。

スポンサーリンク

「オーダーは探偵に 謎解き薫る喫茶店」書籍概要

就職活動に疲れ切った女子大学生・小野寺美久が、ふと迷い込んだ不思議な場所。そこは、少し変わったマスターと、王子様と見紛うほど美形な青年がいる喫茶店『エメラルド』だった。お伽話でしか見たことがないその男性に、うっかりトキメキを感じる美久。…が、しかしその王子様は、なんと年下の高校生で、しかも口が悪くて意地悪で、おまけに『名探偵』で…!?どんな謎も解き明かすドSな『探偵』様と、なぜかコンビを組むことになった美久。謎解き薫る喫茶店で、二人の騒がしい日々が始まる。「BOOK」データベースより

  • オーダーは探偵に 謎解き薫る喫茶店(2012年11月/メディアワークス文庫)

第一話 ホットミルク

企業説明会に参加するため乗りそびれたバスを追いかけて疾走し貧血で倒れた小野寺美久は、『貴方の不思議、解きます』と壁に貼ってある喫茶店「エメラルド」で目を覚ました。店長の真紘からコーヒーとケーキをご馳走になり就職活動の悩みを話しているところに橋爪という男性客が訪れ、応対した美久に探偵に探し物を依頼したいと切羽詰まった様子でいう。困惑しているところに倒れた美久をゴミ捨て場に運んで放り投げた真紘の弟・悠貴が現れると、「失踪した妻の幽霊を探す」というとんでもない依頼を引き受けてしまった。

口も悪く美久を見下す傍若無人な年下の高校生の悠貴とそれに反発する美久とだったが、真紘のとりなしで2人で橋爪のマンションに向かうことになった。

橋爪曰く、今年の1月に妻の結が事故で急死し赤ん坊の奈緒と橋爪が残された。妻の死から10日あまり後、突然触れてもいない家のテレビがついたりミニコンポの音源が鳴り始めるという現象が毎日のように起こりはじめた。また夜泣きが酷く抱き上げないと泣き止まない奈緒が、橋爪が持ち帰った仕事を始めるととたんに静かになる。まるで妻の霊が家にいるようだという。だが4月になり突然妻の気配が家から消え、再び奈緒の夜泣きが始まった。いなくなってしまった妻の霊を探してほしいと橋爪は言う。

橋爪のマンションの前は、幹線道路の拡張工事に伴い大型トラックやダンプカーなどが会話がかき消されるくらいの轟音を立てて走っていた。橋爪によると夜も酷く地鳴りもするという。室内に通された美久は綺麗に整ったキッチンに感嘆の声をあげるが同時に何かの違和感を感じた。ベッドに寝かされている奈緒の首や肘の内側にポツポツと赤い発疹を見つけると、妻の霊が失踪してから出始めたと橋爪が言う。また義母がぎっくり腰になる3月の中旬くらいまでは掃除や洗濯を請け負ってくれていたらしい。

美久は文句を言いつつも悠貴に命じられるまま洗面台にある洗剤や石鹸、キッチンのゴミ箱のチェックなどをしていくが、結果を聞いた悠貴は何か納得した風であるものの美久には何一つ教えてくれない。また妻がパソコンでつけていたという家計簿を見せて貰った悠貴は、動作の遅い旧型のパソコンについて尋ねると、橋爪はネットショップを経営していた妻に新しいパソコンを買えばと提案したこともあるが「奈緒のお気に入りだからダメ」と断られた事を話す。

しばらく考えたあと橋爪の妻がどこに消えたのか分かったと言った悠貴は、翌日必ず結に会わせてあげると橋爪に伝え、美久にも幽霊の正体を見せてやると言い放った。

 

ある意味「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ってところです。様々な事象が絡み合い、橋爪は幽霊がいたと認識していたのでした。

第二話 コーヒーシュガー

雑誌の星座占いの占い師には人の心が分かるので、テレビでタレントの過去を言い当てたり適当に選んだトランプのカードが何なのか前もって予言して当てることができると言う美久に対し、悠貴はそのくらい自分でもできると口にし、もし悠貴が占い師と同じことができたら美久が「エメラルド」で一週間ただ働きをするし、できなかったら美久の事を小野寺先輩と呼ぶという賭けを行うことになった。マジシャンズセレクトを使って悠貴が勝ったのち、今度は美久が決めたルールでゲームを行い、悠貴が勝てば美久は二週間のただ働きをする約束をした。優位にゲームを進め勝ちを確信していた美久だったが、論理の盲点を突かれ結局負けてしまった。

 

ミステリーというより日常の一コマといった短編です。お互い相手に対して刺々しいので特にほのぼのとしているわけでもありません。

第三話 トーストセット

コーヒーは美味しくて料理の腕が壊滅的な真紘だが、美久がバイトで厨房に立つようになってから食べ物メニューの注文も増えた。ある日常連の北川夫妻が大声で喧嘩を始める。普段は仲睦まじい姿を目にする事も多かったので驚いた美久が席に行くと、ランチのトーストセットについている目玉焼きに醤油をかけるかソースをかけるかで揉め、お互いを味覚バカだの普段の料理の味付けが薄すぎるだのと罵り合っていた。

数日後、妻の芳乃が一人で来店しまだ喧嘩が続いていると聞いた美久は、何とかして仲直りができないかと考え悠貴に相談するものの、頼まれてもいないのに他人の事情に首を突っ込みたくはないとすげなく断られる。美久は自分だけでもなんとかできないかと、一人でやってくる芳乃や夫の敦雄から話を聞く。そのうち二人の喧嘩の原因にはいつも何かしら食べ物が絡んでおり、懐かしそうに語る二人の思い出話も最後は相手に対する怒りで終わってしまうことが判明した。いい加減諦めろという悠貴に対し、美久は絶対に諦めないと返すと仲直りの方法が分かったと芳乃と敦雄をエメラルドに呼び出した。だが美久のする事はことごとく裏目に出、夫婦仲は悪化、罵詈雑言の応酬になり離婚の文字がちらつき始めた頃、悠貴が現れかつて恋人時代の芳乃と敦雄の喧嘩の原因になったアップルパイとコーヒーフロートを2人の前に置いた。

 

場をかき回すにしても他人の忠告に耳を貸さず事態を大ごとにし、結局収集がつかず助けてもらうという非常に腹の立つ主人公は初めてかもしれません。

第四話 キャラメルコーヒー

こたつで居眠りをし深夜にふと目を覚ました少年は、枕元に着物姿の見知らぬ女性が座っているのに気付いた。自分の事をお雛様だという女性に、嘘だと部屋に飾ってある7段飾りの雛人形を指さした少年は驚いた。最上段のお内裏様とお雛様が姿を消していた。宴から抜け出してきたというお雛様の話に夢中になった少年はまた明日も会えるかと尋ねると、3月4日だからもう会えないと返し、残念がる少年にキャラメルを口に入れてくれた。翌朝、目を覚ました少年は母親に話すが夢の話だと思われ取り合ってもらえない。雛段の最上段に戻ったお内裏様とお雛様を見た少年は驚いた。内緒だとお雛様に言われたにも関わらず母親に話してしまった少年に向かい、お雛様は目をぎょろりと飛び出させお内裏様とともに不気味な薄笑いを続けたのだった。

バイト先のエメラルドの店長・真紘からお使いを頼まれた美久が指定された場所に向かうと悠貴がいた。そこにやってきたのが今回の依頼人・大学生の池田将平だった。名古屋から帰省中だという将平の実家は浅草にあり昔から地域住民のつながりが深い。将平の依頼は「お雛様を探す」ことだった。子どもの頃(10年前)に体験したお雛様との一夜限りの邂逅や翌朝のひな人形の目が見開いていたことなど、夢だと思っていたのが偶然見つけた写真・10年前の3月3日の日付の家の中を撮った写真に、着物姿の若い女性が写りこんでいたことで夢とは思えなくなってきた。だが家族に聞いても10年前のこの日に訪問客はいなかったという。つまりお雛様は夜中に勝手に将平の家に上がり込んだことになる。話を聞いた悠貴は依頼を引き受けると言い、将平にお雛様がいなくなった翌日に何か無くなっていたものはないか、将平の家族構成などを質問する。

将平は一人っ子で彼が2歳の頃に叔母が16歳で亡くなっているが、叔母の話は祖父が嫌がるので詳しい話は知らなかった。将平に出して貰い実際の雛人形を見た美久の感想は「普通」だった。将平も普通のお雛様に見えるが、10年前は確かに目を見開いていたという。自分の記憶違いだったかもと口にする将平に対し、悠貴は将平の記憶は正しく、10年前のあの日に何があったのか全て分かったと言った。

 

雛人形に関する知識がないと解けない謎でした。池田家の雛人形に隠されていた秘密から、悠貴は10年前、池田少年の前に現れ自らをお雛様と称した着物姿の女性の正体を明らかにしていきました。

□□

これをミステリーの中に含めていいのかと思ったくらい、ものすごくごった煮感の強い1冊でした。あと主人公がやたら騒がしいので静かに読みたい時には向いていないかもしれません。