澤村御影「准教授・高槻彰良の推察」シリーズ第2弾『怪異は狭間に宿る』あらすじとネタバレ感想

澤村御影さんの「准教授・高槻彰良の推察2 怪異は狭間に宿る」のあらすじと感想をまとめました。

ミステリー部分をきっちり抑えながら民俗学(怪談)部分のうんちくもあるという一粒で二度美味しいシリーズだと思います。文武両道、眉目秀麗な高槻准教授という設定に最初は抵抗がありましたが、2冊目ともなると慣れました。

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「准教授・高槻彰良の推察2 怪異は狭間に宿る」書籍概要

「怪異が潜むのは、『日常』と『日常』の隙間にある『非日常』だよ」―怪異収集家の准教授・高槻と、嘘を聞き分ける耳を持つ大学生・尚哉の下に、小学校で噂のコックリさんの調査依頼が。「あなたは誰?」という質問の答えは、かつてそのクラスにいた児童の名で―。ほか、尚哉の耳に異変が起こる中、有名女優から幽霊相談が持ち込まれて…!?高槻の謎めいた過去も語られ、ますます目が離せない、大人気民俗学ミステリ第2弾!「BOOK」データベースより
  • 准教授・高槻彰良の推察2 怪異は狭間に宿る(2019年5月/KADOKAWA)

学校には何かがいる

学校の怪談をテーマとした民俗学の授業後、尚哉は高槻から以前の事件で知り合った小学生・智樹から相談を受けたと言う話を聞く。怪談の名前は「五年二組のロッカー」。クラスの女子児童たちが放課後にコックリさんで遊んでいたが、そのコックリさんが帰ってくれずに掃除道具入れのロッカーに住み着き、勝手に扉が開いたりするようになった。そのロッカーに近寄ると中に引きずり込まれ違う世界に連れて行かれるという怪談に子どもたちが怖がって授業にならないうえPTAも騒ぎ始めた。智樹経由で高槻の事を知った学校は、お祓いをするより大学の先生を呼ぶ方がましと考えたのか、クラス担任の平原まりか経由で正式に依頼がきたため尚哉たちは小学校へ調査に行くことになった。

休日、高槻はコックリさんで遊んでいた3人の女子児童も学校に呼んでもらう。平原によるとコックリさんをしていた時は自分も一緒に教室にいたと言い、問題のロッカーは子どもたちが怖がるので空き教室に移動とのことだった。当時コックリさんで遊んでいた時の様子を3人が再現しつつ平原が補足を加える。子どもたちはロッカーに住み着いたのは元クラスメートの「千夏」の生霊だと口々に騒いだ。千夏は、生まれつき心臓が悪く小学校にもあまり通えないまま夏前に手術のために引っ越していった児童だった。

問題のロッカーを見た高槻は、異世界に繋がることもないただのロッカーだと言い、「五年二組のロッカー」の怪談はコックリさんと金具が緩くなったロッカーが開いたタイミングが合ってしまったせいで起こった子どもたちの思い込みだと断言した。そして尚哉にこれから嘘をつくと宣言し、五年二組の児童を集めてロッカーに憑いたコックリさんのお祓いをすると言った。子どもたちと同じ目線で怪談を払拭した高槻は、学校を辞する間際「五年二組のロッカー」の怪談を作り上げた人物に真相を語った。

 

思いがけず大騒ぎに発展しましたが、元々は悪意のない思い付きから始まった騒動でした。

スタジオの幽霊

大学の文化祭「青和祭」直前に風邪を引き中耳炎になった尚哉は、周囲の嘘が分からなくなっていることに気が付いた。嬉しいと思うと同時に、他人の嘘を聞き分ける力を失った自分は高槻にとって必要な人間ではなくなったのではないかと思い高槻に打ち明けられずにいた。

青和祭では、特設ステージで青和大学出身の女優・藤谷更紗と高槻のトークショーが行われる。更紗は在学時に映画の主役に抜擢されデビューしたが現在はあまり役に恵まれているとは言えず、バラエティーへの出演をきっかけに「霊感女優」として名を広めている。トークショーの中で更紗は幼い頃に祖母の霊を見たという話をしていた。トークショー後研究室へ行った尚哉は、そこに更紗とマネージャーの宮原がいるのに気が付いた。現在撮影中のホラー寄りのサスペンス映画のスタジオで怪異が続いているので高槻に調査に来て欲しいという依頼だった。本物の怪異を求めている高槻の食いつきが悪いことから、尚哉は高槻が今回の件は怪異ではないと判断していると分かるが、嘘が聞き分けられない尚哉には更紗の話の真偽は分からない。高槻と尚哉はスタッフを刺激しないよう見学と称して撮影スタジオに調査に行くことになった。

スタジオでは撮影中に鳴り響いたオルゴールを皮切りに音声トラブルが続き、更紗自身も髪の長い白い服の幽霊を見たという。怪異に遭ったという音楽担当と小道具担当からそれぞれさりげなく話を聞き出した高槻たちは、主役の更紗の撮影現場に立ち会う。その最中、更紗が突然小さな悲鳴を上げた。彼女の指さす方向に白い服と顔の前に垂らされた長い黒髪の姿を全員が目撃した。すぐさま高槻が追いかけたものの幽霊らしき人物は捕まえることができなかった。半ば追い出されるような形でスタジオを出た高槻に、追いかけてきた更紗が引き留めようと腕に手を掛けた瞬間、張っていたフリージャーナリストと称する男に写真を撮られた。

大学の尚哉のもとまで執拗に追いかけてきたジャーナリストに写真は圧力で潰された、今後は「神隠し事件」を調べるので高槻の情報を流せと無理やり取引を持ち掛けられていた尚哉は、自分の耳の力が戻っていることに気づく。ジャーナリストを振り切ったあと念のため刑事で高槻の幼馴染の佐々倉に連絡を入れた後研究室へ向かった尚哉は、そこに更紗がいるのを見た。もう一度調査に来て欲しいと高槻に言い募る更紗に対し、彼は更紗の話が嘘だという確証が得られたのでもう止めにしようと言い、なぜ彼女がそのような嘘をついたのか真意を話し始めた。

 

最初から最後まで嘘だと思っていた更紗の話ですが、幼い頃の霊体験だけは本物だと知り、彼女を帰してしまったことを後悔する高槻でした。

奇跡の子供

「奥多摩の奇跡の少女」を調べて欲しいという依頼があった。依頼人の両親は「神頼み」が好きらしい。人に誘われて「奇跡の少女」に会った後に人身事故を回避できた為すっかり信望者になってしまい、少女が母親とともに奥多摩に引っ越した後も度々手土産を持参で足を運んでいる。依頼人は奇跡の少女「まな様」が怪しい宗教団体でないか調べて欲しいという。高槻は尚哉と佐々倉を伴い、バイト代と慰安旅行を兼ねて泊りがけで奥多摩に向かうことにした。

まな様こと刈谷愛菜は小学4年生。春の学校の遠足でクラスごとにバス3台が連なって奥多摩を訪れた時、最後尾のバスの運転手が心臓発作を起こして横転、バスごと奥多摩湖に落ち愛菜以外の全員が亡くなった。警察によると愛菜は開いていたバスの窓から外に放り出されたらしく膝に擦り傷を負った程度だったため「絶対に助からないような事故を無傷で生き残った少女」として記事にもなった。以降、彼女の家を訪れる人が口づてに増えていった。話によるとお布施を取ることもなく何か売りつけられることもないようで、手土産は参拝者らの純粋なお礼の気持ちらしい。依頼人の両親がお守りにと愛菜から貰ったという絵は、天地がさかさまになったバスと、バスの外には左右で靴の色が違う少女(愛菜)が立っている絵だった。

佐々倉の運転で奥多摩に向かった高槻らは列に並び「まな様」と会う。愛菜と母親の住まいは、本が逆さまに棚に入れられていたり外に洗濯ものが干してあったりと生活感あふれる場所だった。愛菜は客には無関心で口をきかず絵を描いており、代わりに母親が来客対応をしていた。母子家庭で経済的にも困窮していた愛菜と母親だったが、事故以来参拝者が増え「手土産」のおかげで生活に困らなくなったため母親はパートを辞めずっと愛菜のそばにいた。参拝者の一人から奥多摩の一軒家の提供を受けた為引っ越してきたのだという。愛菜は学校へ通えない状況で勉強は通信教育でやっているらしい。母親の話の中に「事故現場から近い場所で暮らす方が亡くなった人への供養になる」という部分を除いて嘘はなく、愛菜側から何かを要求したり購入を強要したりといった宗教的な要素は皆無だった。

日原鍾乳洞を観光し温泉付の宿に宿泊した翌日、高槻の提案で「見はらしの丘」へ寄る事になった。頂上には手に「えんそくのしおり」という冊子を持った愛菜がいた。どうやら遠足で来た場所らしく、周囲を見回したり柵から展望台の下をのぞき込んだりしている。何を見ていたのかと高槻が質問をすると、彼女は応えることなく高槻を突き飛ばして家に戻っていった。愛菜と同じように柵から下を見下ろした高槻が何かを見つけたらしく、ロープで降りると無茶を言いだす。代わりに斜面を降りた佐々倉はある物を見つけた。それを目にした高槻は、順番待ちの列を無視して強引に愛菜の家に上がり込み、母親にすぐにこんなことをやめて愛菜を病院へ連れて行くよう強い口調で言い放った。

 

現代の流行神(人伝てに話が広がり一時的に熱狂的なブームになること)の話でしたが、高槻は見聞きした情報から愛菜が事故をきっかけに発症した病気とその原因を言い当て、一連のブームを終わらせました。高槻が佐々倉のこの件に入れ込むなという忠告を無視して動いたのは、彼自身の過去とリンクしていたせいだと尚哉はあとで高槻自身から聞くことになりました。

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「スタジオの幽霊」と「奇跡の子供」で高槻の遭った「神隠し事件」とその後の家族との確執が明らかになった一冊でした。このシリーズがどのくらい続くのかは分かりませんが、早く事件自体の真相が知りたいものです。