澤村御影「准教授・高槻彰良の推察」シリーズ第3弾『呪いと祝いの語りごと』あらすじとネタバレ感想

澤村御影さんの「准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと」のあらすじと感想をまとめました。

巻を追うごとに少しずつ高槻准教授の過去が明らかになって行くのがもどかしいです。早く続きを!となるのですが現時点ではまだこの3巻が最新なのが焦れるところです。

一つ一つの短編も噂や言い伝えとうまく絡んだミステリーになっており、ライトノベルっぽい表紙に食わず嫌いをしていたのがもったいなかったと思う一冊です。

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「准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと」書籍概要

尚哉の友人・難波の元に不幸の手紙が届いた。時を同じくして高槻と尚哉は「図書館のマリエさん」という聞き慣れない都市伝説を知る。図書館の蔵書に隠された暗号を解かないと呪われるというが…。ほか、鬼神伝説が残る村で、一行は額に穴のあいた頭蓋骨を見つける。その直後、高槻に思いがけない受難が!?「この世はなんてたくさんの呪いに満ちているんだろう」―。高槻と、幼馴染の刑事・佐々倉の幼い頃を描いた番外編も収録。「BOOK」データベースより

  • 准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと(2019年11月/KADOKAWA)

第一章 不幸の手紙と呪いの暗号

大学の秋期試験が終わった日、尚哉は同じ文学部1年の難波の落ち込んだ様子に思わず声を掛ける。難波は不幸の手紙を無視して以降災難続きになったため、呪われてしまったと凹んでいた。話を聞いた尚哉は高槻の研究室へと連れて行く。尚哉と難波に「不幸の手紙」についての蘊蓄や呪いのシステムなどをミニ講義をしたあと、高槻はお祓いをするといい折り紙のやっこさんを形代にと4つ作り、不幸の手紙が指定した5人目に高槻自身を宛先にさせる。自分に掛かった呪いを高槻に移すのは気が引けるという難波を説き伏せお祓いを終えた高槻は、難波が帰ったあと尚哉にお祓いの真意を説明する。

その後、高槻のサイト「隣のハナシ」に『図書館のマリエさんの呪い』の調査依頼が届き、2人で早速調査に出向いた。依頼人は女子中学生2人、部活の先輩からの話で、通っている図書館の本にはたまに赤いインクで4つの数字の組み合わせで作られた暗号みたいなものが書き込まれており、見つけた人は暗号を解こうとはせずすぐに本を閉じて「マリエさんお忘れください」と3回唱えなければならず、もし呪われてしまったら3日以内に暗号を解かなければならないというものだった。マリエさんはよくその図書館に通っていた女子高生で事故で亡くなったらしい。中学生の片方・美弥の所属する部活ではマリエさんの話は知られておらず暗号を見つけたのに3回唱えず呪われてしまったと怯えていた。美弥の持っていた図書館の本を確認すると、赤のサインペンで「次は933-2-42-153」とあった。

高槻は「マリエさん」の話を持ってきた柚香に噂話の元を辿ってもらうよう依頼する。同時に周辺で聞き込みをした結果、マリエさんの話は美弥と柚香の学校のごく限られた場所で伝わっているものであり、大元は「妹が図書館の人から聞いた」だと分かる。早速図書館職員に話を聞いた高槻らは、雪村という司書が高校時代の同級生・茉莉江が彼女に告白してきた後輩への返事を図書館の本の中に暗号として隠したと利用者の女の子に教えた話が、まわりまわって怪談話に発展したことが分かった。茉莉江は暗号を隠した直後に事故で亡くなったため後輩が暗号を解けたかどうかも分からない。可哀そうと呟く中学生2人に、高槻はせっかくだから暗号を解いてみるかと尋ねる。高槻には暗号の意味が分かっていたらしく、種明かしを聞いた中学生と尚哉は解読に挑戦する。

 

全部解読するとカップル未満の2人の顛末が分かる仕組みになっていました。青春ですね。

第二章 鬼を祀る家

高槻の研究室の院生・瑠衣子の両親が脱サラして山梨でペンションを営んでおり、近くには鬼を祀った洞窟があるという。2泊3日の予定で高槻に誘われた尚哉は、犯人と格闘して怪我を負い療養中の佐々倉の運転で3人でペンションへ向かうことになった。道中、名物料理を食べ土産物屋に寄るというごく普通の旅行をしていた尚哉の前に、追い払われてもなお高槻を狙っているフリージャーナリストの飯沼が現れ尚哉から情報を引き出そうと付き纏う。高槻と佐々倉が追い払い、ペンションに着いた尚哉は元料理人の瑠衣子の母の料理に3人で舌鼓を打つが、偶然幼い頃の高槻を知る夫婦と遭遇し、元々は家族仲の良かった高槻が誘拐事件後、実家から多額の手切れ金を渡され縁を切った状態になっていることを知る。

翌日3人は車で30分ほどの場所にある鬼の首が祀られているという洞窟へと向かう。地元の話では鬼頭という地域で一番金持ちだった家の人間が詳しいというが「人食いの家だから近づくな」と昔の人間は話していたらしい。洞窟へと着いた3人は、そこから小学生たちが悲鳴とともに飛び出してくるのに遭遇した。何日か前の地震で祠がくずれ鬼の頭蓋骨が出てきたという。確認した高槻と佐々倉は、子どもたちが見つけたのは鬼ではなく人の骨だと断定し通報した。警察、野次馬で騒ぎになっているところへ鬼頭老人と息子の嫁だという美和子がやってくる。祀っているのは鬼の骨だと言い張る鬼頭となだめる美和子に、高槻はこの地域でのみ伝わる鬼の伝説について話を聞きたいと申し出、受け入れられた。鬼頭家は現在大きな屋敷で2人暮らしだった。元々美和子は夫である鬼頭老人の息子と東京で暮らしており、妻を亡くし一人暮らしになった老人を心配して東京に呼び寄せようとしたが老人が頑なだったため、世話をするため美和子がこちらにやってきた。夫は仕事が忙しく正月も帰省しなかったらしい。東京に会いにいけばいいという高槻に、迷惑になっては悪いからと遠慮がちに美和子は話した。

鬼頭の話す言い伝えは以下のものだった。ある日この集落に一匹の鬼がやってくると村で暴れ家畜を襲い盗みを働いた。見かねた鬼頭の先祖は鬼を家に招き入れ酒と食べ物で歓待し、鬼が眠ったのを待って殺すと首を刎ね家の裏手の滝から投げ捨てた。翌日川を下って洞窟の前に流れ着いた首を祠におさめ祟りがないよう祀り続けている。だから祠を暴けば鬼が復活し災いが起こると老人は語った。

ぶっきらぼうで怒りっぽいが、美和子が暮らしやすいように取り計らったくれたりと優しい義父だという。美和子の案内で滝を見に行くことになり、興味津々で滝を覗き込む高槻に尚哉が注意をしようと思った時、突然の轟音が周囲に鳴り響き大量の鳥たちが一斉に飛び出した。羽音に気を失った高槻はそのまま滝へと落ちて行く。偶然滝の淵に居合わせた飯沼と後を追って飛び込んだ佐々倉によって何とか救出されたものの高槻は気絶したまま、滝つぼに飛び込んだ2人も寒さで動けない状態となる。自分の鹿打ちの銃声が原因だと鬼頭老人により尚哉たちは鬼頭家に一泊することになった。飯沼と佐々倉が風呂に入っている間に高槻の着替えを頼まれた尚哉は、話で聞いていた高槻の背中の傷跡を目にする事になった。事件から20年以上経ってなお生々しい傷跡や異常な鳥への恐怖心を見せる高槻に、本人すら覚えていない高槻の過去を思い尚哉は圧倒された。

翌日、風邪を引き高熱を出した飯沼を病院に運ぶ佐々倉に自分が戻るまで大人しくしていろと言われた高槻と尚哉だったが、高槻はさっそく鬼の話の調査をしようと尚哉を誘う。地元住民に話を聞きつつ洞窟へと着いた高槻は、祠のお供え用の食器が綺麗だと呟く。鬼頭老人が熱心にお参りしているという噂は本当らしい。住民らの噂話と合わせて、高槻はここに祀られていた人の骨はいったいどういう人物だったのかと口にすると、古事記の千引の岩を引き合いに出し、この洞窟は恨みを残して死んだ人間を封じる場所だったのではないかと言う。そして、鬼退治に行くといい、鬼頭家へと向かった。

 

高槻はこの地域に伝わる鬼伝説の背景には、かつて行われていた村の陰鬱な風習があったと説明を始めます。その風習を実行する役割を担っていたのが代々の鬼頭家であったこと、現在ではただの昔話として話が伝わっていることを認めた鬼頭老人に対し、高槻はさらについ最近もこの辺りで人が死んでいる筈だと追及していきました。完全なハッピーエンドとはいきませんが、高槻のおかげで鬼頭家も軌道修正できたのではないでしょうか。

【extra】それはかつての日の話

高槻と幼馴染の刑事・佐々倉の子ども時代の出会い編です。ミステリー(謎解き)要素はほぼなし。

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テンションが高すぎる34歳准教授(現在は35歳)というキャラになかなかなじめませんでしたが、思いのほか思慮深い人だというのも分かり個人的に読みやすさが増した3巻でした。