澤村御影「准教授・高槻彰良の推察」シリーズ第4弾『呪いと祝いの語りごと』あらすじとネタバレ感想

澤村御影さんの「准教授・高槻彰良の推察4」のあらすじと感想をまとめました。

過去3冊は怪異と見せかけて人間がやっていた事件ばかりでしたが、今回は後半でとうとう(?)本物の怪異っぽいものと出くわします。ますます続きが気になる一冊でした。

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 准教授・高槻彰良の推察4 そして異界の扉がひらく

春。尚哉は変わらず高槻の助手をしている。ある建築事務所で起こった「4」にまつわる事件の真相は…!?ほか、大学に英国在住の高槻の叔父・渉が現れた!尚哉は「高槻が一番辛かった頃」に彼を育てた渉から、高槻の悲痛な過去を聞く。そんなある日、江の島の人魚騒動を知り、一行は現地へ。そこで「お母さんは人魚になった」と訴える少年に出会い―。「夢物語は、誰のことも幸せにしない」。凸凹コンビの怪異譚、新章開講! 「BOOK」データベースより

  • 准教授・高槻彰良の推察4 そして異界の扉がひらく(2020年5月/KADOKAWA)

第一章 四時四十四分の怪

4月、2回生になった深町尚哉は史学科に進んだ。高槻からは民俗学考古学専攻を勧められているもののまだ決めておらず、1年かけてじっくり選ぶと決めている。史学科の専門科目「民俗学Ⅱ」は相変わらずの人気講義で、初回はネットの巨大掲示板で広まった都市伝説「きさらぎ駅」を取り上げた『異界』をテーマにしたものだった。

授業後、高槻からバイトの連絡が入り研究室へ向かった尚哉は「四時四十四分の呪い」という依頼メールが来ていることを知り、高槻に付いて2人で依頼人に会う事になった。場所は「アン・ポエミ」というカフェ、依頼人と懇意にしている店らしく貸し切りとなっていた。メールを送ったのは遠山建築設計事務所の社員・沢木ゆかりだった。

4月4日に事務所で長めの打ち合わせを終えたゆかりと先輩の林(男)、同期の村田(女)、事務担当の大野(女)の4人は雑談の中でゾロ目の話が出たことがきっかけで、四時四十四分の呪いを遊びで試してみることになった。「4月4日の午後4時44分に4人の人間が集まって黒板に円を描き全員でその中に手を突くと、円が異次元への扉に変わり全員が異次元に引き込まれる」という学校七不思議の一つだ。遊び半分で行った時は何も起こらなかった。だがその後ゆかり達のスマホに知らないアドレスから「4444」というメッセージが届いた。翌日にも「4444」は届いたが、村田だけは「444」だった。4日後、村田は階段から落ちて怪我をした。朝の4時44分の事だったという。本人は周囲に人がいなかったにも関わらず誰かに足を引っ張られたらしい。再び村田以外の3人にメールが届いた。ゆかりと大野は「444」だったが林だけ「44」だった。3人は話し合い、災いが起きるらしい4時44分に一人にならないよう気を付けることにした。だが4日後、一人で書庫にいた林めがけて本棚が倒れてきた。幸い何ともなかったが、直後に社長の遠山が林を別室に連れて行き雇用契約の打ち切りを告げた。林はクビになるほどの仕事上のミスはしておらず突然の事だったという。そしてその晩、何者かに襲われた林は怪我をし会社を休んでいる。翌日、ゆかりに「44」大野に「4」が届いた。パニックになった大野は事務所を飛び出していき車に轢かれて入院してしまった。このままだと次のターゲットはゆかりになる。段々と被害が大きくなっていることに怯えたゆかりは、呪いについて死に物狂いで調べて高槻のサイトに行き着きメールを送ったのだった。

本物の怪異は存在しないがゆかりの周囲の人間に被害が出ているのは事実だとして高槻は調査を引き受け、4人が呪いを行った事務所を見せて貰うことにした。当日、事務所には足を怪我した村田と、立ち合いのため社長の遠山も同席した。村田に怪我をした時の話を聞き始めてすぐ、尚哉は彼女の説明が全て嘘だと分かる。つまり3人がかりでゆかりを騙しているのだ。だが村田は自作自演だと分かったものの、林が襲われたことと大野の事故は本物らしい。嘘をつく大野の歪んだ声に耳を抑えていた尚哉は、遠山がそんな尚哉を見ているのに気が付いた。

呪いに怯えているゆかりに自作のお守りを渡した高槻には、嘘が見抜ける尚哉とは別に今回のカラクリが見えているらしい。事務所を出る高槻と尚哉を見送りに出た遠山が、唐突に尚哉をアルバイトに勧誘した。林は辞める予定、大野も退院後も事務所を続けるかどうか分からないため、デスクワークのアルバイトに来ないかという話だった。だが高槻によってその依頼はきっぱりと断られた。

数日後、ゆかりは周囲を警戒しつつ緊張した面持ちで駅前の通りを一人で歩いていた。点滅している横断歩道も無理をして渡らず次の青信号を待つことにする。高槻から貰ったお守りの言葉を口の中で唱えていたゆかりの体が、突然何者かによって突き飛ばされ車道へと踏み出した。倒れ込む前にゆかりを助けた高槻は、同じく見張っていた尚哉に逃げた男を追いかけるよう叫んだ。

 

一連の呪いの話を聞きターゲットがゆかりだと見抜いていた高槻は、逆にゆかりを囮にして犯人を罠にかけました。今回初登場の遠山ですが、尚哉に降りかかった災いと縁の深い人物だと分かりました。今後もキーパーソンの一人として登場するのかな。尚哉達の味方になってくれれば頼もしいです。

第二章 人魚のいる海

地元漁師が目撃したというスポーツ紙の記事をきっかけに、江ノ島に人魚が出るという噂が広まっていた。高槻の講義でも「人魚」をテーマに取り上げている。だが特に高槻からのバイトの連絡もない日々を送っていたある日、尚哉はキャンパスで英国紳士風の男に声を掛けられ高槻の研究室まで案内することになった。英国紳士の正体は、高槻が10代後半の数年間イギリスで過ごしていた時、彼の預かり先だったアパートのオーナーもしている彼の叔父・高槻渉だった。イギリスでアンティーク商もしている渉は、今回商談で来日しており、可愛い甥っこの高槻の顔を見に来たと言う。そして鎌倉観光も兼ね、週末に皆で江ノ島へ行くことが決まった。皆の中には当然尚哉と高槻の幼馴染・佐々倉も含まれていた。

渉を駅まで送る最中、構内に現れた鳩を目にした高槻が意識を失い倒れた。友人の難波の協力で高槻のマンションまで彼を運んだ尚哉は、渉のやや強引な誘いで眠り続ける高槻を余所に勝手にキッチンを使っての自宅飲み会へとなだれ込む。高槻が尚哉を気に入っていることを見抜いた渉は、できる限り高槻の周りを味方で固めておきたいと言い、尚哉を高槻の事情に巻き込むため情報交換と称して高槻のイギリス時代の話を聞かせた。

土曜日、人魚に会えると浮き足立っている高槻だったが、江ノ島にはトンビが多くいるという情報を尚哉から聞いて断念し、代わりにツイッターで目撃情報の出ている稲村ケ崎へ向かうことになった。人も少なく調査もままならないが、人魚が目撃されたという海を見ながら一年前にここで女性の自殺者がいたことを話していると、突然小学生低学年くらいの男の子が割り込んできた。お母さんは死んでいない、人魚になったんだと言う。母親の友人でよく店の手伝いにくるサエちゃんが言っているらしい。原田陸と名乗った少年を自宅のイタリアンレストランへと送り届けた一行は、昼食も兼ねて店に落ち着きつつ、魚屋で働いており配達したついでに手伝っているという海野沙絵とお喋りを始める。沙絵は手相を見るのが得意だと言い、渉には仕事を頑張れば恋愛も成就するとアドバイス、佐々倉は苦労性で、尚哉には何か秘密を抱えていると言う。そして高槻の手相を見た沙絵は彼の目を覗き込み、「誰なの、そこにいるのは」と呟いた。どういう意味かと問う高槻に対して、そんな気がしただけとはぐらかした沙絵はできあがった料理を運んできたあとは陸と遊ぶと言い一行から離れていった。代わりに陸の父親から自殺した妻の話を聞く。

原田は陸の母親・夕子とはサーフィンをきっかけに出会い、レストラン経営を引き継ぐのを機に結婚した。だが陸の出産後から体調を崩していた夕子は店で倒れてしまう。原田は夕子の看病のために店を一時休業しようと決めたが、陸のためにもお金は必要だと彼女自身は反対していた。そして陸を連れて買い物に出かけたある日、原田は沖で誰かが泳いでいるらしき黒い頭を見かけた。だが季節は冬だ、誰も泳いでいるはずがない。嫌な予感がした原田が慌てて家に戻ったが夕子の姿はどこにもなかった。夕子が海へと入っていく目撃情報もあったため、病気を苦にしての自殺と断定された。遺体はあがらないままだった。母親の死を陸に告げることができず、沙絵は人魚になったと作り話を伝えた。それが今回の人魚騒動が起こったことで陸は盛り上がり、母親が帰ってきたと主張する。夜中に窓の外にやってきて歌をうたってくれたらしい。高槻は、いつか陸が現実を知った時に支えてあげればいいと原田を慰めた。

翌週、原田から高槻のところへ電話が入った。陸が「ゆうべお母さんがまた来た」と言っているらしい。陸は興奮しており証拠を見せるから来て欲しいと電話口で繰り返した。仕事と用事がある佐々倉と渉は無理だったが、尚哉は高槻と一緒に原田の店へと行くことにした。陸の言う証拠とは彼の部屋に面した裏庭の、雨で土がぬかるんだ地面に着けらている水が流れたような跡と、散らばっている魚の鱗(陸は人魚の鱗だと主張)だった。子どもの頃によく聞いた歌も歌ってくれたと言う。客商売なので妙な噂が立つと困るという原田は陸をなだめようとして失敗し困り果てていた。代わりに上手に陸を言いくるめた高槻は、尚哉と一緒に沙絵の働いている魚屋へと向かった。

あっさりと母親のふりをして歌をうたったり鱗を撒いたと認めた沙絵は、高槻が怒るのならもう止めると約束すると、待って欲しいという高槻の制止を振り切るように用があるといい店の中へと消えて行った。

モヤモヤとした違和感を抱えながら海沿いを歩いていた尚哉は、ようやく違和感の正体に気が付く。沙絵が陸に話した母親=人魚説は嘘だった。だが沙絵の話を聞いている最中、沙絵の声が歪んで聞こえることは一度もなく尚哉にはそれが嘘だとは分からなかった。つまり沙絵は、本当に陸の母親が人魚だと考えている(嘘をついていない)ということだ。高槻がはっとしたように沖へと目をやった。波の合間から誰かがこちらを見て笑っている。白い腕がおーいと言うようにこちらに向けて振られた。そして腕と頭が海面に沈んだ直後、大きな魚の尾が現れた。ガードレールを乗り越えて浜辺へと飛び降りようとした高槻を何とか止めた尚哉は、高槻から海にいた人物の顔が原田のレストランにあった家族写真の夕子の顔だったと言われる。足早にレストランへと向かう高槻を追いかける尚哉は、原田が飾っている昔の漁港の風景を写した白黒写真の、ある一点を高槻が差すのに目をやった。おそらく昭和初期と思われる漁港で作業している人々の中に、沙絵に生き写しの顔があった。親戚で沙絵と血が繋がっているのかもしれない。だが尚哉はここまで同じ顔をした親戚に今まで会ったことがない。

イギリスに帰国する渉を空港まで見送った高槻は、同行した尚哉に「沙絵は何者なのか、海の中に見た夕子と同じ顔のものは何だったのか」と口にする。あれは人魚に見えた。またあの日を境に沙絵は姿を消した。彼女も人魚だったのだろうか。とうとう自分たちは作り物ではない本物に出会ったのだろうか。本物の怪異に会いたいという夢が一つ叶ったかもしれないという高槻は、夏休みになったら尚哉が体験し嘘を見抜く耳を持った祭りのあった場所へ行き、祭りが何だったのか調べに行こうと約束した。

【extra】それはかつての日の話Ⅱ

「人魚のいる海」で渉が尚哉に語ったイギリス時代の高槻の話です。

 

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本人の口からではないですが、佐々倉や叔父の渉といった周囲の人間達から高槻の過去が少しずつ明らかになっていくのですが、肝心の高槻の過去「天狗に攫われ戻ってくるまでの空白期間」に鍵が掛かったままでもどかしいです。あと何冊あれば全てが明らかになるのでしょうかね、早く続きが読みたいです。