澤村御影「准教授・高槻彰良の推察」シリーズ第1弾『民俗学かく語りき』あらすじとネタバレ感想

澤村御影さんの「准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき」のあらすじと感想をまとめました。

民俗学ミステリーというちょっと変わったジャンル(?)です。民俗学にまつわる一見怪異とも見て取れる謎が、実は人為的に起こされたものだったというのが基本の流れです。事件そのものとは別に、主人公の深町、探偵役の高槻准教授ともに過去に不可思議な体験をし、ちょっとした能力を得ているという設定も面白い一冊でした。

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「准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき」書籍概要

嘘を聞き分ける耳を持ち、それゆえ孤独になってしまった大学生・深町尚哉。幼い頃に迷い込んだ不思議な祭りについて書いたレポートがきっかけで、怪事件を収集する民俗学の准教授・高槻に気に入られ、助手をする事に。幽霊物件や呪いの藁人形を嬉々として調査する高槻もまた、過去に奇怪な体験をしていた―。「真実を、知りたいとは思わない?」凸凹コンビが怪異や都市伝説の謎を『解釈』する軽快な民俗学ミステリ、開講!「BOOK」データベースより

  • 准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき(2018年11月/KADOKAWA)

第一章 いないはずの隣人

10歳の頃、山間の集落にある祖母の家を訪れそこで不思議な夏祭りに迷い込んだ結果他人の嘘を見抜く力を得てしまった深町尚哉は、以来人とは距離を置いて生きていくことになった。

青和大学に進学した尚哉は、学校の怪談や都市伝説等から民俗学について幅広くアプローチするという「民俗学Ⅱ」の講義を受けてみることにした。担当は民俗学考古学専攻の准教授・高槻彰良34歳、”意外に残念なイケメン”の高槻の講義は面白かった。ある日、尚哉は提出したレポートについて話をしたいと高槻の研究室に呼び出される。レポートには誰かから聞いた不思議な話や自分の奇妙な体験を書くとおまけの加点があるというもので、尚哉は幼い頃の夏祭りの話を書いていた。高槻は卒倒するほど鳥が苦手らしい。また嘘をつく人間ではないと分かる。人は息をするように嘘をつくものだと知っている尚哉にとっては、高槻の話し声は聞き心地の良いものだった。高槻に聞かれるがまま夏祭りの話をすると、民俗学の知識を交えての説明を加えながらそれは死者達の祭りだったのではないかと言われる。色々と教えてくれる高槻に対し、尚哉は嘘を見抜く耳をもったことまでは話せなかった。

高槻が開設しているサイト「隣のハナシ」では不思議な体験の投稿を募っている。投稿の一つに、借りているアパートが幽霊物件のようなので見に来て欲しいというメールがあったという。早速調査に行くと目を輝かせる高槻は、尚哉に助手のバイトをもちかけた。週末、高槻が極度の方向音痴だと判明しつつ、依頼人の桂木奈々子と会う。奈々子が二階建てのアパートに引っ越したのは二か月ほど前だという。一か月前の深夜、こつこつというノックのような音が隣室の壁から聞こえた。それが何日も続くため奈々子は抗議のため隣室へ行ったが返事はなく、大家に確認すると無人だと分かった。その後もノックの音は続きとうとう爪で壁をひっかく様な音までするという。仕事から帰宅すると、明らかに自分の物でない髪の毛が落ちていたり、2階のベランダ側の窓ガラスに外から手形がついていたこともある。奈々子は借りた部屋が事故物件ではないかと疑い管理する不動産屋へ確認へ行くと、事故物件ではないと言われたものの様子がおかしい。そんな時、友人から高槻が怪異事件の収集と調査を行っているという話を聞き、藁にもすがる思いで連絡をした。

高槻と尚哉は奈々子のアパートを調べることになった。奈々子がアパートを借りる時に仲介をしたという不動産屋の山口を訪ねると、大家から話は聞いているといい空室だという奈々子の隣室へと案内してくれる。山口によるとこの隣室が自殺者の出た事故物件らしい。若くて髪の長い女性が首を括ったという話を始める山口だったが、尚哉にはそれが嘘だと分かる。なぜ彼はそんな嘘をつくのか。高槻は奈々子の部屋側の壁に引っかき傷がついているのを見つける。山口の話は嘘なのに、なぜ本当に壁に傷がついているのだろうか。すっかり怯えてしまった奈々子に対し、高槻は一晩部屋を貸してほしいと言いだし、怪異に興味を持った尚哉も高槻に付き合うことにする。近所に住んでいるという山口におすすめのスーパーを教えてもらって食料を調達し、高槻から不思議な現象が怪異へと変わっていく過程などの話を聞いていた尚哉の耳に、突如何かを叩きつけるような激しい音が聞こえた。高槻がカーテンを引き開けると、ガラス戸には真っ赤な手形がべっとりとついているが、人の姿はない。が、隣室に人の気配がした。尚哉は手形を付けたのは幽霊ではなく人間だと確信し犯人を追った。

 

護身術も得意だという高槻によって犯人は捕まり、犯人の起こした一連の行動やその動機を高槻は明かしていきました。彼は最初からゆう例ではなく人間の起こした事件だと見抜いていたようです。

第二章 針を吐く娘

一回限りのバイトだと考えていたものの、本心から嘘を見抜く力がほしいと高槻に言われ、尚哉は引き続き助手を務めることになった。夏休みに入り一か月ほど経った頃、高槻から一緒に幽霊を見に行こうと連絡がきた。バイトではなくただの誘いで幽霊画を見るのだという。集合場所にいたのは、高槻のほかは彼の幼馴染で強面の刑事・佐々倉健司と、高槻の研究室の院生・生方瑠衣子だった。幽霊画展を堪能しお茶でも飲もうかと移動した先で、高槻が民俗学Ⅱを受講しているという女子大生2人、綾音と琴子に声を掛けられる。2人は高槻に相談したいことがあるという。カフェに落ち着いた6人は、2人から話を聞き始める。

怪異に遭っているのは綾音だという。彼女はコンサート帰りの夜の公園で、たくさんの針が突き刺さった藁人形を見たというレポートのおまけを写真付きで高槻に提出していた。その藁人形を見て以来、綾音の周囲に針がよく落ちているという。立ち上がった時、椅子の上に何本もの縫い針があったり、歩いている時ふと見ると足元に刺繍針が落ちていたりと種類や本数はバラバラだが繰り返し起きているらしい。一方、一緒に藁人形を見た琴子には何も起きていない。面白がって写真を撮ったせいで呪われたと泣く綾音に、彼女らの話を信じると言った高槻は、なぜ釘ではなく針なのかと考える。2人は高校時代手芸部だったので針が身近だったせいかもしれないと答えた。頼んだケーキを口にした綾音が叫び声をあげて口を押さえた。血とともに彼女が吐き出したのは縫い針だった。ぱらぱらという音を聞いた気がした尚哉が床を見ると、綾音の足元に赤い待ち針が何本も落ちていた。

綾音たちに付き添って病院へ行った高槻に聞かれ、尚哉は彼女たちは嘘をついていないと答える。高槻は尚哉に、普段の彼女たちの様子が知りたいといい尚哉の友人などを頼り聞き込みをしてほしいと言う。尚哉が友達はいないと答えると何故かバーベキュー大会を開くことになり、尚哉はそこで聞き込みを行うことになった。綾音と琴子は今も裁縫道具を持ち歩いていること、所属している英語サークルの先輩と綾音が付き合いだし3人で出かけていることなどを得た。高槻と情報を突き合わせている時、悲鳴が上がり琴子がうずくまっているのが見えた。二の腕が真っ赤に腫れあがっている。蜂に刺されたとその場を取り繕った高槻だったが、琴子の腕からは縫い針が出てくる。付き添った綾音とともに泣きじゃくり始めた2人のそばで、高槻が今回の事件とよく似た話を知っていると言い、お祓いをするので自分の研究室に来てくれるよう2人に伝えた。

お祓いの席に同席するよう言われた尚哉は、高槻から2人が嘘をついたら気づかれないよう教えて欲しいと依頼される。迎えた綾音と琴子の前で、高槻は江戸時代に奇談怪談を集めて書かれたという本の中から、体のあちこち針が出てくるという少女・梅の話を始めた。

 

梅の話の解釈から高槻は事件の真相に迫っていきました。怪異はやはり人間の手で起こされたものでした。今回毒(他人の嘘)に当てられ気を失った尚哉は、他人の嘘を見抜くことができるのは観察眼が鋭いからではなく、見抜く耳を持っているからではないかと高槻に指摘され、死者達の夏祭りで能力を手に入れてしまった過程と、その代償で孤独になってしまったことを打ち明けました。

第三章 神隠しの家

夏休みが終わり高槻の最初の講義は「神隠し」についてだった。天狗の話を聞きながら尚哉は高槻の研究室の院生・瑠衣子から、高槻の背中には翼を切られたかのような傷痕があることを聞いたのを思い出していた。高槻の助手という次なる尚哉のバイトは、友人が神隠しにあったという話だった。

依頼人は高校2年生の水谷はな。彼女の友人・紗雪は夏休み時、近所の山奥にある廃屋へと肝試しに向かった。誘われたはなが不法侵入だからと断ると一人で行ってしまったのだ。LINEで実況中継すると言っていたのに「これから行ってくる」というメッセージが来て以降は連絡がなく、翌朝はなは紗雪が行方不明になったことを知った。親に話す前に廃屋を確かめようと思ったはなは昼間に出かけた。目的地の廃屋の門扉に手を掛けた時、コンビニ袋を提げたジャージ姿の男にうちに何か用かと声をかけられた。慌てて謝りつつ友人が行方不明になった話をして尋ねるが、この辺りは神隠しがよく起こるから気を付けた方がいいと言われる。その翌日、紗雪が自宅から遠く離れた場所で倒れているのが見つかった。紗雪は意識が朦朧としたがアルコールの反応はなく、自分が肝試しに行った事も覚えていなかった。はなは、紗雪に何が起こったのか突き止めて欲しいと頼んだ。

いつもは目を輝かせる高槻の食いつきが悪いことから、尚哉は紗雪の行方不明が怪異ではないと高槻が考えていると察する。はなの依頼を受けた高槻は、紗雪が見つかった時、靴を履いていなかったにも関わらず足の裏が全然汚れていなかったことを聞いた。住人がいるという件の廃屋へと向かった高槻と尚哉、はなだが、どう見ても人が住んでいるようには見えない。周辺住民からはお化け屋敷として知られており、子どもたちは人魂を見た人間もいたらしいと口々に話した。高槻は可能性としてホームレスや犯罪者が勝手に入り込んでいる可能性を挙げた。

不法侵入になるので自分一人で家の中を調べると言い張る高槻に、彼が倒れる程苦手な鳥が廃屋に住み着いていることを挙げ尚哉は無理やり同行することに決める。夜を待って再び廃屋へ行った2人は、家の中であるものを見つけた。おそらく紗雪は肝試しにやってきて運悪くこれを管理している犯人と鉢合わせし、気を失わされた後遠く離れた場所に捨てられたのだろうと高槻は推測する。犯罪に関わる物品のため佐々倉に写真と場所をメールした時、廃屋の外で車の止まる音がした。侵入者の気配を感じた後、彼らが廃屋に火を付けて証拠隠滅を図ろうとしているのを知った2人は、バレないよう外へ逃げようとしたが真っ暗な中足元のバケツに気づかず大きな音を立ててしまった。犯人らに気づかれ逃げた部屋には、破れた窓から侵入し巣を作っている鳩たちがいた。途端にうめき声をあげて倒れた高槻と追いかけてくる犯人達が部屋に入ってこられないようにと必死にバリケードを作る尚哉は、しばらくして焦げ臭いにおいと煙が上がり始めたのに気付く。犯人らは家ごと尚哉たちを燃やしてしまうつもりらしい。意識を取り戻さない高槻を抱え、何とか逃げようとする尚哉の耳に佐々倉の叫び声が聞こえた。

佐々倉に助け出され高槻の家へ着きベッドに放り込むと、尚哉は佐々倉に高槻に一体何があったのか尋ねる。高槻は12歳の時に神隠しに遭い、1か月後に意識のない状態で見つかったという。発見時、高槻の背中の皮膚が2か所はぎ取られていたという。目を覚ました高槻は、行方不明の間の記憶を何一つ覚えておらず、異常に鳥を怖がるようになり、記憶力が半端なくあがり、たまに目の色が変わってみえるようになったと佐々倉は話した。

 

逃げた犯人達は無事に捕まり、高槻は過去の自分に何があったのか知るために研究を続けていることが分かりました。尚哉と高槻は、お互いの身の上に起きた不可解な事象の真実を知ることを決意しました。

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正統派のミステリーかと思いきや、主役2人が過去にそれぞれ怪異に遭い不思議な力を手に入れていたという特殊設定が加わっていました。謎解き部分はどれも人為的なものなので、個々の事件と2人の過去という2つのミステリーを追うだろう今後の展開が気になるシリーズ第1弾でした。