滝田務雄『不良品探偵』あらすじとネタバレ感想

滝田務雄さんの「不良品探偵」のあらすじと感想をまとめました。

ライトノベル風の軽く読める一冊でした。コメディ部分の割合が多いので、事件→状況説明→解決までが非常にスピーディーです。関係者に話を聞いた時点でほぼ解決している感じです。

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「不良品探偵」書籍概要

手遅れ確定のダメ人間、ネジの抜け落ちた規格外の頭脳を太い鉄筋でつなぎとめている男。白城一馬の変わり者の先輩・藍須救武を評する言葉は数あれど、端的に言うならば、「伝説の不良品」だ。普段はしようもないお馬鹿な言動で一馬を振りまわす藍須だが、自らの高校やバイト先でひとたび謎を前にすると謎解きの天才に?!ミステリーズ!新人賞受賞作家による全五篇の連作短篇集。「BOOK」データベースより

  • 不良品探偵(2017年4月 創元推理文庫)
不良品探偵 (創元推理文庫)[本/雑誌] / 滝田務雄/著

不良品探偵、颯爽登場篇

学年縦割りの掃除当番で理科準備室を担当している先輩の藍須と後輩の白城だったが、天才的な推理力を発揮する時以外はダメ人間の藍須がホワイトボードに油性ペンで歪んだアンパンマンと署名を描いてしまった。落書きを隠すため世界最強のネオジム磁石を拝借してくると元素記号表を上から貼り付ける。そこに部屋が騒がしいからと覗きに来た女性生徒がいた。2人は何とかごまかすと余った磁石を元の場所に返してくれるよう頼む。快く引き受けた彼女が部屋を去ると、白城は彼女の名前が浜ナナカといい以前は大人しかったが、他校生を病院送りにしたという不良・藪坂と付き合い始めてから素行が悪くなったと話す。

その日の放課後、空き部屋となっていた排球部の元部室で藪中という男子生徒が殺害されていた事件を調べるため、海老根小梅刑事と蟹江永治刑事が2人のいる高校へやってきた。殺したのは岸辺彩。藪中と彩は付き合っていたが、藪中がナナカと付き合い始めたことで、彩はよりを戻そうと必死だったらしい。遺体は藪中の不良仲間が発見した。現場が荒れていないことから乱闘などは起きておらず、また殺害される直前に藪中と電話をしていた友人が背後でノックが鳴り続ける音と「彩のやつが来た」と言う藪中のセリフを覚えていた。また彩のロッカーにあったコートのポケットから血の付いたナイフと手袋が発見され、コート自体にも藪中の血が付着していた。発見したのは浜ナナカ、藪中が殺されたという知らせを受け彩の犯行だと言うと皆が見ている前で彩の持ち物を調べ出し見つけた。ただ不思議なことに、警察が到着する前にナイフが消えてしまった。

海老根と蟹江が事件について話し合っていると、油性ペンの落書きを消すためシンナーをこっそり持ち出そうとして先生に見つかった藍須と出会う。何か事件が起きたのかと問う藍須に刑事たちは口を噤んだが、物陰でこっそり話を聞いていた白城によって、藍須は必要な情報を手に入れた。警察の事情聴取を終え帰宅しようとしたナナカが校門へ向かうと、そこには藍須が待ち構えていた。不良仲間たちからもちょっと強引に話を聞き出したという藍須は、藪中を殺害した犯人がナナカだといい、犯行の手順、動機、なぜ一度見つかったナイフが消えてしまったのかという謎を解き明かしていった。

 

冒頭ではないですが文中にナナカが藪中を殺害するシーンがあるので、犯人は最初から判明しています。動機とナイフが消えた謎が今回のメインでした。

夏休み怪奇特集、みんなでお寺の味噌擂り坊主篇

狂暴で横暴な海老江が所轄の分署に左遷されたうえに今までの素行の悪さの清算のため精神修行と称してコンビというだけで巻き込まれた蟹江とともに送り込まれ、藍須と白城がアルバイトをしている本保鼓寺に、矢来という青年が相談にやってきた。矢来は大学で民俗学や社会学の見地から怪談を調査したり分析している真面目な怪談サークルに所属しており、ボランティアで町内会と協力して子ども達のための肝試しを企画しているという。今回は肝試しの会場として本保鼓寺を使いたいという相談だった。大学と本保鼓寺とは駅で5つほど離れているのに、なぜ会場に選んだのかと尋ねると、幽霊にここを開催場所にしてほしいと言われたからだと返ってきた。

20年ほど前、資産家の息子と家庭教師の女性が恋に落ち、息子は周囲の反対を押し切って家庭教師の家へ転がり込んだものの告訴騒ぎにまで発展し、結局2人は別れることになり家庭教師は町から姿を消した。その後息子は家庭教師を思い続けたまま事故で亡くなった。そして1か月前その家庭教師が亡くなったという噂が町内を流れた。肝試しの打ち合わせの帰り、町内会側のコンビニエンスストアオーナー夫人が死んだはずの元家庭教師に呼び止められたという。20年が経っているにも関わらず当時のまま姿だったらしい。翌日オーナー夫人の元に家庭教師を名乗る人物から肝試しを本保鼓寺でするよう公衆電話から連絡があったという。話を聞いた海老根や藍須たちが口々に微妙だの怖くないだの言いすぎたせいか、矢来は自分もその家庭教師を見たと言い出す。サークルの部室で見かけ窓から飛び出して追いかけたが影も形も消えていたらしい。また肝試し用の資料を作っているパソコンに見慣れない墓地の写真が入っていたこともあるようだ。すっかり怯えているオーナー夫人を安心させるため幽霊の頼みを聞いてこの寺で肝試しをしたいという話を聞いた住職は、矢来の相談を快諾した。

矢来から聞いた話を時系列にまとめていた藍須は、2週間後に決まった肝試し当日まで待つしかないと言った。

 

幽霊騒ぎはもちろん本保鼓寺で何かをするための口実で、矢来から話を聞いた時点でほぼ騒動の真相を見抜いていた藍須によって犯人の目論見は不発に終わりました。最終的には住職の協力もあって良い方向へ向かったと思われます。

アルバイト番外地・死闘タコやきんちゃん篇

タコ焼き屋でアルバイトを始めた藍須だったが、自作の奇天烈な着ぐるみとそばの公園にできた段ボールハウスのせいか客足が鈍っていた。タコ焼き屋は恰幅の良いおかみさんが1人奮闘しており、たまに雑誌に記事が載るフリーライターの旦那がいるが稼ぎはほとんどなく店のお金を持っていくような人間だったが、毎年結婚記念日の1日には何かしらのサプライズをしてくるという。だが今年は何もなかったうえ今どこにいるか分からない。またいかにも怪しい変装をした男が店に旦那を訪ねてくると、おかみさんから来月まで戻らないと聞いて文句を言いながらカレンダーで日付を確認して出ていくという事件もあった。藍須たちが店にある雑誌を捲ってみると「シシカバブー木林に愛人発覚」という芸能人のスキャンダル記事があり、旦那は社会派からは遠いライターのように思えた。

ホームレスに扮して段ボールハウスで張り込みをしている海老根と蟹江の所へ行った藍須は、タコ焼き屋の旦那・圧又が盗難事件の犯人として逮捕され、おかみさんが共犯とみなされていることを知る。シシカバブー木林の自宅で500万円が盗まれるという事件が起こった。翌日国内線の飛行機の中でコートの忘れ物がありポケットから10万円が入ったシシカバブー木林の事務所の封筒が見つかった。山奥に夜釣りに出かけていたシシカバブー木林は警察から連絡を受けて自宅に戻り、現金がなくなっているのに気が付いた。コートの人物が座っていた席が圧又が購入した場所だった。圧又は顔見知りの旅行代理店の窓口で行き先が同じ片道チケットを、日をずらして複数枚購入していたという。シシカバブー木林は自宅で見覚えのないチケットが入った封筒を見つけ、そこから圧又、旅行代理店、シシカバブー木林の指紋が見つかった。逮捕された圧又はコートは知らないと無実を訴えているが、残りの490万円をおかみさんが持っているのではないかと考えた警察は、張り込みをしていたのだ。

まだ暖かい時期に南へ行く人間がコートを着ていることに疑問を抱いた藍須は、自分の推理を海老根たちに伝えた。

 

無事に事件が解決し、藍須は警察から感謝状と特製紅白まんじゅうをもらったようです。

マグロの頭で警察署の見学篇

商店街の魚屋の店先でメバチマグロの頭(約4kg)を衝動買いした藍須は、海老根刑事がバーベキュー用の大型グリルを持っていることを知り連絡を取った。警察の倉庫にあるときき、藍須と白城は所轄警察署へと向かった。ロビーは無人で藍須が大声で挨拶してみても誰も来ない。案内表示で刑事課が地下1階にあると知った2人はエレベーターへと向かう。その時2人の耳にガッシャンという金属製の物がぶつかるかすかな音が聞こえた。地下階へと移動していったエレベーターがすぐに1階に戻ってくる。開いた扉からは鬼の形相の海老根が飛び出してきた。

2人からの連絡を受け海老根は倉庫からグリルを出して階段のドアに立てかけておいた。その時携帯に着信があり電波状態の良い刑事課の部屋へと戻る。すると廊下から何かが倒れる音がし慌てて駆けつけるとグリルが倒れ壊れていた。何者かがドアを開けた拍子にグリルを倒し、そのまま逃げてしまったらしい。そんな場所にグリルを置いた海老根が悪いのではないかという藍須の言葉を封殺し、海老根は犯人を見つけ出すと息巻き成り行き上2人も犯人捜しをすることになった。

犯人がエレベーター、階段を使って1階に逃げていないことは、1階のロビーにいた藍須と白城が証明している。犯人は地下階に隠れたままということになる。3人が給湯室に向かうと、コーヒーを飲むため電気ヒーターでお湯を沸かしている蟹江がおり沸騰したのかやかんから笛が鳴っていた。お湯の沸き具合から蟹江ではないとし、次はトイレに向かうことになった。男子トイレの個室が1つ使用中だった。犯人だろうと言いがかりを付け度の過ぎたいやがらせを行ったあと個室の人物が署長だと分かり3人は逃げだした。休憩室ではぎっくり腰で悶絶している課長がいた。署長の売れない自費出版本を無料で署員に引き取ってもらうため近所で高級アイスを買ったのち、本が詰まった段ボールを移動させようとして発症したらしい。

1階まで戻ってきた藍須は、これ以上曖昧なままにしておくとますます海老根が荒れて人の道を踏み外すといい、真犯人を指摘した。

 

3人の中に犯人がいましたが故意ではなく過失でした。とっさにとったトリックで場をうまく切り抜けたつもりでしたが、藍須にはすべて見抜かれていたようです。

アリスとアイス。そして十月の三月ウサギ篇

普段は閑古鳥が鳴く商店街もハロウィン仮装企画で賑わっていた。ホラーな仮装が多い中、商店街から依頼を受けた劇団では不思議の国のアリスをテーマにしておりアルバイトを頼まれた藍須もアリスに出てくる帽子屋・マッドハッターの格好をしていた。藍須がかぶっている帽子からは三月うさぎのぬいぐるみがバネで飛び出す仕掛けになっているが、今回は入っていない。商店街を歩いていると海老根達のブースがあり「臭い飯」や「豚箱」というネーミングの食べ物を売っていた。また劇団の責任者だという田端目白という女性とも出会う。アリス役の少女も見かけた。手にはチョコレート色のうさぎのぬいぐるみを抱えており、あれが本来藍須がかぶっている帽子の中に入る三月うさぎだろうと白城は言う。モチーフ通りにいくとアリスが抱えているのは茶色の三月うさぎではなく白の時計うさぎのはずだから、何らかのトラブルがあったのだろうと藍須達は考えた。

藍須達の会話を聞いていた田端が、白うさぎのぬいぐるみが昨夜ばらばらに切り裂かれていたと話す。新たに買い直す時間もなかったので三月うさぎに時計や帽子の部品をくっつけて時計うさぎに仕立てたらしい。おそらくアリス役の女の子についている変なファンの仕業だろと田端は説明した。未成年の彼女の安全のためにも劇団を辞めさせた方がいいのは分かっているが、看板女優なので抜けられると痛い。

休憩時間になった藍須と白城が事務所へ行くと、部屋では商店街の会長と田端、アリス役の夏見が沈鬱な面持ちで何かを話し合っていた。またうさぎのぬいぐるみが切り裂かれていたらしい。30分ほど前、休憩と着替えのために夏見が奥の部屋へ入った。着替えた夏見と田端は午後の進行について短い打ち合わせを行った。その後田端が衣装とぬいぐるみの回収のため奥の部屋へ入り、切り裂かれたぬいぐるみを発見した。傍には錆びた包丁が落ちていた。人通りが少ないビルの裏手なので窓からの侵入はさほど難しくないという。

窓から侵入した夏見のストーカーが、田端と夏見が打ち合わせをしている隙にぬいぐるみを切り裂いて逃げたと考える白城に対し、藍須は犯人は窓から出入りしておらずストーカーの仕業でもないと言い切り、推理を語って聞かせた。

 

自分の城を守りたい心理とでもいうのでしょうか、ストーカーにかこつけた劇団内のドロドロが起こした事件でした。

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ミステリー部分もしっかりしているのですが、コメディー&ギャグパートが多いせいか、あまりミステリーっぽくない一冊でした。推理ではなくキャラで魅せるタイプの本でした。