滝田務雄「田舎の刑事シリーズ」第2弾『田舎の刑事の動物記』あらすじとネタバレ感想

滝田務雄さんの「田舎の刑事の動物記」のあらすじと感想をまとめました。

田舎ならでは(?)の非常に緊迫感のないのんびりした警察での、おかしな人たちが繰り出す事件解決短編集です。褒め言葉です。主人公の黒川、部下の白石・赤木、課長と個性派揃いですが、最強キャラは黒川の妻だと思います。

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「田舎の刑事の動物記」書籍概要

野生のサルの被害が問題になり、変人学者の主張でサル対策を警察が主動しなければならなくなった。しかも不可解な状況で発生したボスザルの死の謎をも解き明かす必要に迫られ、黒川刑事はしぶしぶ捜査に乗り出す―田舎でだって難事件は起こる。鬼刑事黒川鈴木、今日も奮闘中。第三回ミステリーズ!新人賞受賞作家による脱力系ミステリ第二弾、肩の力を抜いてお楽しみください。「BOOK」データベースより

  • 田舎の刑事の闘病記(2009年11月 東京創元社)
  • 田舎の刑事の動物記(2011年12月 創元推理文庫)※改題
田舎の刑事の動物記 (創元推理文庫) (文庫) / 滝田務雄/著

田舎の刑事の夏休みの絵日記

経費節約のため猛暑でもエアコンが使えない警察では、暑さに耐えきれなかった白石が子ども用のビニールプールで涼を取り、黒川に見つかってバミューダパンツ一丁で逃亡するという騒動が起こっていた。白石を追いかけた黒川は、暑さのせいか河川敷で川にゴミを捨てるなという河童の絵が描かれた看板が折れているのを見つけて拾い、川で白石が泳いでいるのを発見すると看板をバッド代わりに白石に向かって石を打ち付けるという暴挙に出た。おかげで通報を受けた刑事に黒川が手錠を掛けるという事態にまで発展した。誤解はすぐに解けたものの、黒川に手錠をかけた刑事は事情説明のため現場から離れなくてはならなくなった。

刑事の名前は狛沢犬彦、産廃業者の不法投棄の捜査で黒川たちの管轄にやってきたチームリーダーだった。署に戻った黒川たちは頭からつま先まで真っ白の月光仮面がアイスキャンデーをぼったくり価格で売っているのに遭遇する。紫外線対策をして小遣い稼ぎをしている黒川の妻だった。翌日、警察署に見学に来ていた署長の孫娘が描いたという絵日記の拡大カラーコピーを掲示板に貼るよう黒川は言われる。肌色の人間(白石)、河童の看板らしきものを持った人間(黒川)、全身真っ白の忍者(黒川の妻)などがクレヨンで描かれ、びしょぬれでカッパを持った犯人が実は刑事で、アイスキャンデーを買おうとしたけどお金が足りなくて泣き、隣の刑事(狛沢)に払ってもらったという身も蓋もない事実が描かれている物だった。

黒川がロビーの掲示板に貼っていると狛沢がやってくる。だがそれは犬彦ではなく、双子の弟の猿彦だという。姿かたちはそっくりだけど兄弟仲は良くないという猿彦も単独不法投棄を追っているらしい。翌日、白石と追いかけっこをした河川敷でビニールシートに包まれた遺体が発見された。背中を刺され死亡後に河川敷に投棄されたものらしい。なぜかビニールシートの外側に水を流した跡があったが血痕等は見つからなかった。被害者はフリージャーナリストを名乗る強請の常習犯だった。死後最低3日は経っており、黒川が犬彦に捕まって日以降に遺棄されていた。被害者は死の直前、知り合いに電話をかけ「刑事の狛沢」と言い残していたが現場から携帯は見つからなかった。ダイイング・メッセージを信じれば、犬彦か猿彦のどちらかが犯人である可能性が高かった。

 

携帯を持ち去るほど用心深い犯人が被害者が「刑事の狛沢」とメッセージを残すのを黙って見過ごすはずがなく、双子の片割れに罪を擦り付けようとしてわざと見逃したと黒川は考えました。犯人の決め手になったのが、署長の孫娘が描いた絵日記でした。

田舎の刑事の昆虫記

食品会社の研究施設でハチミツ泥棒が発生した。2階のバルコニーにある10個の巣箱のうち2個が盗まれた。研究用の特別な蜂だが金銭的な価値はないという。施設は施錠されていた為、犯人は梯子を使ってバルコニーに上がり、設置してあるクレーンを使って巣箱を下におろしたと思われる。クレーンは2階からしか操作できずワイヤーは全て巻き上げられていた。

警察は研究施設のアルバイト学生・針谷を蜂泥棒の容疑者として逮捕した。研究施設の主任が恩師の教授の蜂を盗んだと周囲に主張していたためだ。教授の六角信也は自宅の温室で育てている蜂に刺されてアナフィラキシーショックで死亡し、そこから出た火事で自宅も全焼していた。黒川は蜂の専門家がアナフィラキシー対策をしてなかったのを疑問に思う。針谷は主任が教授の蜂を盗んだことを証明するため、研究施設から巣箱を盗んだものと考えられた。

教授と研究施設はアフリカ産ミツバチの品種改良という同じテーマの研究をしていたが、教授の研究の方が先行するようになった。主任はリストラの対象となっていたが教授の死の直後というタイミングで新種の交配の成功し、対象から外れた。盗んだ教授の蜂という証拠を隠滅するという動機が主任にもあることが分かったが、主任は左腕にヒビが入ってギプスで固定されており、梯子を上ったり生きた蜂が詰まった巣箱を盗み出すという行動がとれたとは思われなかった。また施設の警備員から、最近の主任はそそっかしく骨にひびを入れたりハチミツを腐らせて全部捨てたりしていたと聞く。

蜂は危険が迫ると本能的に巣のハチミツを腹に飲み込んで逃げるという習性を知った黒川は、逃がしてはいけないものに逃げられる方が痛いと言って研究施設へと足を運んだ。

 

犯人は蜂を隠したかったのではなく、別の物を隠したかったため巣箱を持ち去ったのでした。

田舎の刑事の台湾旅行記

妻が台湾旅行を引き当て、日本語が通じない場所へは行きたくなかった黒川も不平不満を垂れ流しながら台湾の空港に到着した。空港では同じ飛行機に乗っていたと思われる小学生くらいの白人の子どもに情けない姿を写真にとられつつ、入国審査を済ませホテルへと向かう。故宮博物院へと観光に出かけた黒川たちは、そこで空港でみた白人親子を見かける。20分ほど費やして土産を買い込んだ黒川たちは、白人夫婦が血相を変えて学芸員に話しかけているのを見る。例の息子が誘拐されたらしい。

白人親子には鶴田という通訳のガイドがついていた。息子は建物の写真を撮ろうとデジカメを持ったまま外に出てそのまま攫われた。現地の警察官とともに当時の様子を聞いた黒川は鶴田が共犯者だと見抜いたが、息子を連れ出すのに協力しただけでそれ以上のことは分からなかった。通信ができるデジカメだったため父親宛に助けを求めるメールが送られてきた。大きな建物の中に閉じ込められていて、窓から「日本にようこそ」と日本語で書かれた大きな看板が見えるという内容だった。日本語ができない息子からの英語のメール「日本にようこそ」という部分はWelcome to Japanとあった。

台湾には日本語の看板や店は多くある。警察によると該当する建物は天ぷら屋の『ありがとう』、ソバ屋の『コンニチハ・ヤマダサン』、寿司屋の『おかえりなさい』、同じく寿司屋の『東京スキヤキ将軍』だった。これらの看板が見えるどこかの建物に息子が閉じ込められているのか、それとも全然別の場所なのか焦る黒川だったが、同じく休暇を取って東京に行っている白石からメイド喫茶に行くという暢気な電話を受け、ようやく息子が監禁されている場所が分かった。

 

黒川の活躍によって犯人グループは逮捕され息子は無事に救出されました。日本語って難しいものです。

田舎の刑事の闘病記

白石に説教をしている最中、神経性胃炎で倒れた黒川は病院に運ばれ入院した。そこでは最近不審者が出没しているらしく、患者が部屋を空けている時に侵入し、安いボールペンや新聞などが盗まれているという。一応警察に連絡はしたものの被害らしい被害がないため、簡単に調べただけで終わった。

黒川は部下の赤木に頼んで、被害が出る前にこの病院を指定して入院してきた患者がいるか調べて貰った。セキュリティーが万全のこの病院では、入院患者、付添人、見舞客と出入りが厳格にチェックされ、それぞれが専用のカードを使わないと入院エリアに入れないようになっている。何か目的があって病院に入りたい場合患者になるのが手っ取り早い。該当する人物は3人いた。不倫スキャンダルで騒がれていた時代劇俳優の鍵屋、検査入院の清掃会社職員・鎌田、足の手術をして車いすの老婆・新城ハツ。ハツには孫の紗枝が付添人として病院にいるが、誰の世話にもならないと言ってよく逃げ回っているらしい。

黒川が鍵屋の部屋で話をしているとハツが匿ってほしいと逃げ込んできた。窓から息子の車がやってくるのが見えたという鍵屋の言葉を機に、黒川がハツの車いすを押して鍵屋の病室から辞す。まもなくナースから再び不審者が侵入した形跡が見つかったと知らせがきた。過去、鍵屋、新城、ハツの部屋に不審者が入ったことがあるかと尋ねると、その通りだと返事が返ってくる。ナースのとりなしにより3人と紗枝に順番に黒川の病室に来てもらい話を聞くことになった。全員から話を聞き終えた黒川は、メモに書かれた4人の名前のうち1人を指で弾いた。犯人が分かったのだ。

 

4人のうちの1人が身分を偽って病院に潜り込んだ探偵でした。特に罪には問われないらしいですがたっぷりと説教はされたようです。

田舎の刑事の動物記

どんぐり不足で野生の猿による農作物への被害が深刻になりつつあるため、その対策会議が開かれなぜか警察からも刑事課の黒川が代表として出席することになった。猟友会や動物愛護団体、農家、保健所が猿を生け捕るか撃つかで意見を戦わせる中、保健所職員が電気柵を提案し、動物行動学者の日吉が自分が考案した罠による捕獲を提案し、人間を捕まえるのが得意という理由で警察が協力して日吉の猿の捕獲案に協力することになった。日吉によると”ヌエ”と名付けた腕の模様に特長があるオスの天才ボス猿を捕獲すれば被害が収まるという。日吉は自分の研究のため、どうしてもヌエを生け捕りにしたいらしい。

小雨が降るある日、スーパーにヌエが現れたと連絡がきた。黒川が現場に到着すると電柱で様子見をしていたヌエがスーパーの屋上へと逃げたらしく、駆け付けた日吉が電信柱を登ってヌエを追いかけようとするのを白石が止めていた。だが白石の隙をついて日吉は電信柱を登り切りスーパーの屋上に飛び移ってしまった。仕方なく黒川と白石もスーパーの裏手に回り非常階段から屋上へと行くと、屋上では死んだヌエの亡骸を抱きかかえて泣く日吉がいた。

日吉によると屋上に行ってみると既にヌエは死んでいた。また宿泊しているホテルに正体不明の人物からヌエの出現情報が入りスーパーに飛んできたという。様々な状況から考えてヌエを殺したのは日吉ではないと判断した警察だが、ヌエ殺しの犯人を見つけて自分が犯人ではないと証明されるまで取調室からは出ないと言い張る日吉を追い出すため、黒川はヌエを殺した犯人を見つけることになった。ヌエの死骸を保健所から引き取ってきた黒川は、白石の家で検視を行う。ヌエの足首にはくくり罠というワイヤーの跡が残っており、それで動きを封じられたあと殺されたと思われる。またヌエの性別がメスだと分かった。腕の模様は生まれつきのものではなく白髪染か何かでつけられたものだった。つまりこの死骸はヌエではないということだ。

ヌエに執着している日吉が、死骸を腕に抱くほど密着して別猿と間違えるはずがない。また電源が落とされていて暗かったスーパーの屋上にいる猿がヌエかどうか判別できない状況で、日吉はヌエだと断定した。白石はヌエというのは日吉が捏造した存在で、実在していないのではないかという。ヌエが捏造だと考えれば全ての辻褄が合うが、黒川は今回の事件が何者かが日吉を犯人として陥れようとして起きたものだと考えた。そして最終的に、犯人が日吉を殺害するために仕掛けた罠にヌエが先にひっかかってしまったと結論づけた。

 

犯人にとってヌエの死は全くの予定外のもので、それ故にボロを出し黒川につけこまれてしまいました。

田舎の刑事の冬休みの絵日記

軽トラックのミニローリーによる不正軽油の販売をしているグループの存在が浮かんできた。個人を対象としてネットや電話で注文を受けゲリラ的に直接販売を行っているためなかなか捕まえられなかったが、どうやら本拠地がこの警察署管内にあるらしいと分かった。田舎の方が不正軽油の原材料となるA重油(農作業機械などに使われる)が手に入りやすいためと思われる。不正軽油販売の陰に、胡麻という窃盗や詐欺の常習犯の存在が浮かび上がってきた。胡麻は傷害事件を起こして県警本部に拘束されていた。

黒川達の管轄地域内に、スクラップ前のミニローリーが大量に置かれている廃車置場がある。代理店直営の置場できちんとガソリンが抜かれナンバープレートも外されているため、並んでいるミニローリーはどれも同じに見えて区別がつかない。不正軽油の主犯格である胡麻のミニローリーも廃車手続きを済ませこの置場にあるようで見つけ出せば不正の証拠になる。だがタイミング良く廃車置場が何者かによって爆破され1/3ほどの車が粉々になった。おそらく胡麻の車も破損している。胡麻は爆破時のアリバイを作るためわざと傷害事件を起こしたのだ。

真っ暗な夜、山の中にある廃車置場で見分けがつかないミニローリーがずらりと20台並ぶ中、胡麻の共犯者はどうやって胡麻の車を見つけ爆破させることができたのか。あらかじめ目立つ印がつけられていれば、一通り車を点検する代理店の人間が気づいた筈だった。このまま共犯者の手口が分からなければ、爆発は故意ではなく事故として処理され胡麻が有利になる。

雪が降り積もる山中を捜査していた黒川は、道に迷ってさ迷っていたという白石と黒川の妻と出会った。2人はサンタとトナカイの格好をしてこの先の山小屋に泊まっている署長の孫娘達の所へ行く途中だった。白石たちから山小屋の浄化槽のトラブルなどの雑談を聞いていた黒川は、犯人がどうやって胡麻のタンクローリーを見分けることができたのか分かった。

 

本文の中でやけに不正軽油について詳細に説明されているなと思っていたら、事件を解くカギはそこにありました。

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第1弾より黒川のキャラが壊れていました。個性的なメンバーに振り回される常識人だと思っていたのに、黒川自身が変人であることが判明してしまいました。常識人枠は部下の赤木でした。刑事ものって堅苦しいイメージがあるのですが、田舎が舞台だけあってゆるい刑事もので面白いです。