滝田務雄「ポンコツ探偵の名推理」あらすじとネタバレ感想

滝田務雄さんの「ポンコツ探偵の名推理」のあらすじと感想をまとめました。

職なし、金なし、妻子なし(妻とは別居中)の元刑事・八房が、おバカな元スリの探偵・弾正とともに依頼に取り組む話です。

推理力はあるけれどそれ以外はダメダメという「田舎の刑事」シリーズ同様コミカルなキャラものでもあります。

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「ポンコツ探偵の名推理」

大物政治家・久丸の脱税事件捜査が原因で刑事を辞めさせられた八房文次郎。彼を窮地から救ったのは警察時代の部下・鍋島だった。彼女は八房に、「3D」という探偵を派遣する組織に登録して、探偵になってほしいと依頼する。八房の相棒役は、鍋島の恋人・弾正勘八。かつて八房がスリで逮捕した男だった。口だけが上手い、ゆとり世代の弾正に振り回される八房に舞い込んだ、仇敵・久丸からの依頼!過去の因縁に決着をつけるため、事件に挑むのだが…。「BOOK」データベースより

  • ポンコツ探偵の名推理(2015年11月/幻冬舎)

ポンコツ探偵、吠える

刑事を辞めてから無職続きで奥さんに逃げられた八房紋次郎は、河原で現状を大いに嘆き倒していたところを不審者と思われ近隣住民に通報され留置所に入れられた。そこに来たのが刑事時代の部下・鍋島眞子だった。鍋島は探偵の派遣組織に転職しており、名探偵になっていた。八房の身元引受人になった鍋島は、自分の恋人が担当する依頼の手伝いをしてほしいと言う。

依頼人は刑事時代の八房と鍋島の因縁の相手・久丸だった。かつて八房たちは政界のドンである久丸の巨額脱税を突き止め追い詰めたものの破れた。久丸も病気で倒れ政界を引退している。久丸の屋敷には当時の腹心の部下・下仲が執事となって久丸の世話をしていた。久しぶりに対面した久丸は病気の後遺症で車いす生活を余儀なくされており、八房はパソコンで打った依頼内容のプリントを下仲に見せるなと言われ渡された。その中には下仲に命を狙われているとあった。

八房が助手としてつく探偵は弾正勘八、以前八房が捕まえたこともある元スリの飄々とした性格の男だった。弾正の探偵ランクは最低のFランクだという。鍋島は最高のSランク。依頼人は探偵のランクを指定し、派遣組織がそのランクの中から最適な探偵を選んで派遣するというシステムだった。忠誠を誓っている下仲が久丸を殺そうとしているなんで、久丸の妄想か思い違いではないかと考えるものの念のため屋敷の捜索やお手伝いの女性に話を聞く。めぼしい情報は久丸の孫娘の婿が次の知事選に立候補する事くらいで、下仲については分からなかった。ちなみに孫娘の婿は久丸のダーティーなイメージを切り離したがっているらしい。

翌日、再びプリントアウトした紙面で次の指示が出された。車庫にある好きな車を使っていいので屋敷の裏のてっぺんまで行き、そこから丘のふもとにある小屋を見張れとのことだった。小屋で下仲が誰かと会う約束している電話を聞いたらしい。丘の上には鉄板で古井戸に蓋をしており、その鉄板の上からなら小屋からも死角になるとあった。真夏の炎天下の張り込みがエアコン付きの車の中でいいとあり、八房たちは喜んでベンツに乗って丘へと向かった。

弾正は、下仲が自分たちを屋敷から遠ざけるためにわざと電話の内容を久丸に聞かせたのではないかという。それについては手を打っていると答えた八房は、一番気になるのが狡猾な久丸がそんな見え透いた罠にあっさり引っかかったことだと言った。

 

自分の命が狙われているのにあの久丸が最低ランクの探偵を頼む時点でおかしいと八房は考え、そこから推理を展開し下村の真意に気づきました。八房はこっそりと鍋島の派遣を依頼して事件を解決に導きましたが、Sランクの鍋島の依頼料はバカ高かったようで、その返済のためしばらくは弾正の助手に甘んじることになったようです。

ポンコツ探偵、食べる

弾正に屁野頃山町にある「屁野頃山ラーメン会館」から依頼が来た。行ってみるとまだオープン前で、社長室には麦面又郎という男がいた。本家是羅亭の社長だという。麦面によると元祖是羅亭が本家を逆恨みして何かと因縁をつけて困っているらしい。このままだとオープニングイベントで取っ組み合いの喧嘩に発展しかねない。大きな騒ぎにしたくないのでイベントが終わるまで元祖是羅亭を監視し、何かあれば阻止してほしいというのが依頼だった。

八房と弾正は昼食のため近所のラーメン店へ入ると本家と元祖の話を聞く。屁野頃山ラーメン会館は本家是羅亭の本社ビルだという。是羅亭の先代が後継者を決めないまま急死し、麦面と十水丁次郎が同時に名乗りを上げ、以降本家と元祖に分裂したが先日裁判で麦面の本家が勝訴した。おまけに十水は火の不始末でボヤを出し両手に大やけどを負って店は休業を余儀なくされている。ただ本家を大きくするため麦面はすでに厨房に立っておらず、是羅亭の味はチーフの北中の腕だのみらしい。

どう考えても麦面に有利で、元祖の嫌がらせを警戒する理由が分からない。八房は、元祖の十水が本家の致命傷になるような切り札を持っているのではないかと考えた。考え事をしている最中にラーメンの具をほとんど弾正に取られたと気づいた八房は店で大暴れして通報され、壊した店の弁償のため更に借金を増やしてしまった。

ラーメン会館に戻った八房たちは北中と出会い一緒に社長室へと向かった。社長室を開けた北中は、床に倒れている麦面を発見した。脈を測った八房は手遅れだと言い服の袖口が汚いと呟いた。麦面の首にはパソコンのコードが巻かれていた。そしてもう一つ、天井からぶら下がっている首吊り死体があった。こちらは元祖是羅亭の十水だと北中が言う。パソコンには十水の遺書があり、麦面を殺して自分も死ぬという趣旨のことが書かれていた。だが長年の刑事の経験から、十水の首に残る跡は自殺ではなく他殺でつけられたものだと断定した八房は、ノックにうるさい麦面の部屋にノックもせずにドアをあけた北中に、麦面が死んでいることを最初から知っていたと指摘する。このままだと麦面と十水2人の殺人犯として逮捕されると脅した八房は、麦面殺しを北中に認めさせ、なぜ・どうやって十水がラーメン会館で首を吊って死んだのか説明していった。

 

麦面がろくでもない男だったという話でした。依頼人が死んでしまったのでギャラはなく八房の借金だけが増えた事件でした。

ポンコツ探偵、捜す

屁野頃山電子産業の営業マンとして再就職した八房だったが、給料をもらう前に社長が夜逃げし会社が潰れてしまった。そこに弾正から連絡があり探し物の助手をすることになった。タクシーで向かった先は郊外にある雑木林の奥に建つプレハブ小屋。依頼人は夜逃げした屁野頃山電子産業の社長・耳鳴だった。プレハブには耳鳴の弟と叔父の3人がいて、今朝方亡くなった父親の遺産探しをしているという。遺産が見つかれば退職金が払えると聞きがぜん八房は乗り気になった。

父親はある画家と親友だった。画家も既に他界しており、社長室で見つかった画家の書簡によると喜寿の祝いに父親に贈った絵が最後の作品だと分かった。書簡自体も10万以上の価値があり、未発表・人生最後の作品はオークションにかければ最低4千万になるらしい。父親の遺言に従って開けた金庫から画家の絵の隠し場所を示した地図と手紙が見つかり、地図の場所がこの雑木林だと分かったが、そこから隠し場所までの道順を記した手紙で困って探偵に頼んだという次第だった。手紙と懐中電灯を借り、八房と弾正は宝探しへと出発した。

手紙の通りに道を辿ると雑木林の中をぐるりと一周するだけだった。地図の東西南北が分からない弾正に呆れる八房だったが、それがヒントになって絵の隠し場所を見つけた。だが見つかった包みをプレハブに持ち帰って開けてみると、中にあったのは絵画ではなく刺青を入れる道具だった。意味が分からないと茫然とする耳鳴らの一方、八房はこれで全てが繋がったと満足そうに言った。

 

絵の場所は分かりましたが退職金に化けるかは不明です。今回も依頼料を貰い損ねたとぼやく八房に対し、スリの腕を活かして書簡を手に入れていた弾正は正当な報酬だと返していました。報酬として八房は1割貰えるようです。

ポンコツ探偵、出かける

傷だらけになりながら迷子の猫を無事捕獲した八房と弾正は、猫を依頼主の元へ届けることにした。場所はバス停から20分も歩いた先にある寂れたところに建つペンション。近くの人工湖の釣客を相手にしているらしい。事前の連絡なしに訪れたせいか呼び鈴を鳴らしても反応がない。しばらくして、昨日採用されたばかりという住み込みのバイト・風見倫子が姿を見せた。キッチンで夕飯の準備をしているオーナーを呼んでくると2人を部屋に通して出ていった倫子だが待てども音沙汰がない。キッチンを覗いた2人は、芋や山菜が作業台に出しっぱなしの無人のキッチンと開きっぱなしの勝手口、2つ並んだスリッパを目にした。オーナーがいないと倫子は外を探していた。ガスの火は消えていたが鍋からは湯気が上がっているので、ついさっきまでオーナーがここにいたのは間違いなさそうだ。2人も倫子に協力してオーナー探しを始めた。

捜しながら八房は倫子から自分たちがペンションに着くまでの行動を聞いた。2人が来る少し前まで裏庭で薪割をしていたという。初めて薪を割る倫子を、危ないからとオーナーが見ていたらしい。倫子の手は絆創膏だらけだった。薪はそばの納屋から出したものではなく予め出してあった。八房が納屋を確認すると閂と南京錠で厳重に施錠されていた。その後オーナーはキッチンへ、倫子が2階で掃除機をかけている時にチャイムが鳴ったので応対に出た。キッチンにオーナーを呼びに行くと勝手口のドアが開きスリッパがそろえて置かれていたので、外に行ったのだろうと考え探していたらしい。

オーナーに電話をかけて貰ったが電源を落としているのか繋がらなかった。裏庭に伏せて置かれているボートの下を覗くと、新しいスパナの束やペンキを塗るローラーが見つかった。意図して置かれたものだろうが目的は分からない。一通り外を調べた後、ペンションの中の捜索に移った。ペンションでちょっとした検証を行った八房と弾正は、まるで自分たちが来たからオーナーが逃げ出したような印象を受ける。

スタッフルームで八房は額縁に入った写真を見つける。悪人面と優しそうな風貌の2人の男が映っており、倫子によると優しそうな方がオーナーだという。時折見せる倫子の不自然な態度から何か隠し事があると気づいた八房は、弾正のスリの腕を利用して隙を作りスタッフルームから同じ日付・同じ字で書かれた風見倫子と岩井芳枝の2通の履歴書を見つけた。一方倫子の財布をすり取った弾正も、免許証から倫子の本名が岩井芳枝であると知る。岩井芳枝については鍋島に調べてもらうことにし、2人はいったんペンションから帰ることにした。

夕方になりオーナーが戻ってきた。キッチンの外で珍しい鳥を見つけて追いかけていたらしい。探偵はまた翌日に来るという伝言をつたえる倫子の背後にオーナーはゆっくり回った。

 

八房はオーナーの顔を知りませんでしたが、依頼を受けた弾正は猫の飼い主であるオーナーを知っていました。オーナーは弾正に姿を見られるのを避けるため逃げ出していました。

ポンコツ探偵、語る

母子家庭で育った依頼人の母親が病気で急死した。2人に生活の援助をしてくれた「足長おじさん」のおかげで大学に進学した依頼人は在学中に起業して成功し、今では賃貸マンションを一棟経営するまでになった。依頼人は足長おじさんに感謝し直接お礼を言いたいと願っていたが、母親は教えることはできない・詮索してもいけないと言うばかりだった。だが依頼人に正体を秘密にする一方、母親の方は足長おじさんと面識があり年に何度か会っていたらしい。そのうち母親は差しさわりのない範囲で、足長おじさんとどのような話をしたのか聞かせてくれるようになった。母親が急死したのは、足長おじさんに会いに出かけた日だった。その時に聞いた話を依頼人はおおよそこんな内容だったという。「久しぶりにあの人に会えた。あの人はお前(依頼人)のマンションの住人の人数をしきりに気にしていたようだった。別れ際にマンションの住人の人数を、きちんと確認したほうがいいと伝えるよう言われた」と。

母親の葬儀を終えた依頼人は、探偵に依頼して足長おじさんの身元を探ること、母親の言葉に従いマンションの住人の人数を確認することの2つを実行した。結果的にマンションの書類上の人数と実際の住人の人数に差異はなく、なぜ足長おじさんは母親にそんな伝言をしたのかさっぱり分からないと探偵に調べを依頼した。八房がマンションの住人名簿を依頼人に見せてくれるよう頼んだところ、金庫の中から名簿を取り出して渡してくれた。その名簿はカタカナでマンションの住人の名前がずらりと並んでいた。それを見ただけで八房には母親の伝言の真相に気が付いた。

 

全て八房の語りのみで構成された短編です。おそらく依頼人への調査報告の前に「足長おじさん」の所へ行き、自分が調査に携わった依頼について語って聞かせています。依頼人と足長おじさんの関係は明らかになっていません。

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このまま弾正の助手に甘んじて食うのにも困る貧乏生活を続けるつもりなんでしょうかね。探偵としての素質は認められているのですから、さっさと探偵に鞍替えして借金返して生活を整えて逃げた妻に会いに行った方が建設的な気がします。八房さんのプライドが良く分からないです。読む分には面白いからいいですけど。