滝田務雄『長弓戯画 うさ・かめ事件簿』あらすじとネタバレ感想

滝田務雄さんの「長弓戯画 うさ・かめ事件簿」のあらすじと感想をまとめました。

イケメンだけどオネエ言葉の少女漫画家と担当編集のコンビだと思うのですが、ヒロイン役と思われる女性編集が暴力的すぎていまいちハマりきれませんでした。

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「長弓戯画 うさ・かめ事件簿」書籍概要

雑踏のなか、和弓で射殺された男性。誰が、どうしてそんな目立つ凶器で殺人を行ったのか?しかも、日本有数の弓の名手でもなければ犯行が困難な状況で…。美男子なれどヘナチョコな少女漫画家マーチ宇佐輝先生と、ドSの編集者カメちゃんこと小亀ミドリは心ならずも事件に巻き込まれる。次々現れる新事実、その度に繰り返される推理の構築と否定。どこまで行っても五里霧中、謎多き和弓殺人事件の真相は?“田舎の刑事”シリーズで既にお馴染み、第三回ミステリーズ!新人賞受賞作家が満を持して贈る新シリーズ第一弾。長編本格コメディ・ミステリ。「BOOK」データベースより

  • 長弓戯画 うさ・かめ事件簿(2010年6月/東京創元社)

三月うさぎのお茶会で

ある晴れた平日の昼下がり、ファミレスで少女漫画家のマーチ宇佐輝こと鹿野山宇佐輝は、担当編集の小亀ミドリと向かい合って座っていた。3時間程グダグダと引き延ばした挙句に切り出したのは締め切りの延長だった。日本の最高学府・帝都大学から講演依頼が舞い込んだのでその準備をしたいと言う内容だったが、ミドリからは締め切りさえ守ってもらえれば何をやるのも自由だと冷たく切り捨てられる。依頼内容を確認したミドリは、依頼主が大学ではなく帝都大学の学生サークル「伝統武術研究会」であることから、少女漫画家としての講演ではなく、宇佐輝の人気作品「金剛石の神剣」で武術に関する知識に期待しての事だと知り青ざめた。評価の高い宇佐輝の武術描写は、刑事である厳格なミドリの父親・小亀上月(カミツキ)から得たものを資料として提供していたからだ。

見た目はイケメンだが口を開けばオネエ言葉、気も弱くヘナチョコな宇佐輝のイメージダウンを防ぐため、渋々ミドリは宇佐輝に武術に関する知識を叩き込むことにしその場で父親との面会の日程を調整した。

娘からの呼び出しに応じた上月は待ち合わせ場所に向かう途中殺人事件に出くわした。騒ぎの元へと行くと、背中に黒い矢が突き刺さったうつ伏せに倒れた男がいた。背後から心臓を打たれたようで既に脈はなかった。人ごみを狙った無差別殺人を考慮し犯人を追おうと考えた上月のところへ同じく騒ぎを聞きつけたミドリと宇佐輝がやってきた。宇佐輝は現場の状況を見て被害者自身が狙われたか、誰か一人が被害に遭えば犯人は満足しただろうから次の被害者はでないと言い切ると、矢が発射されたと思われる場所を示した。

凶器は伝統的な竹製の和弓の矢だった。また宇佐輝が示した場所からは、犯人が置いていったと思われる弦の切れた和弓と犯人の足跡が見つかった。弓道を嗜んでいる刑事により、その足跡は弓道の作法を知っている人間のものだと考えられた。人ごみの中、建物で視界が制限される場所で一発で被害者の心臓を撃ち抜いたことから犯人はよほどの弓の名手と思われる。ファミレスで上月から話を聞いた宇佐輝は、今回の事件は計画殺人だと言う。そんな宇佐輝とミドリに、上月は衝撃的な事実を公表した。被害者は、宇佐輝に講演を依頼した伝統武術研究会に所属する大学生・蟇目郷四郎だった。

それぞれの夜に、なに見て跳ねる

月刊少女漫画雑誌「ココナッツ」の編集部に戻ったミドリは、編集長の蜷川香織に事件の事を報告する。事件についてはニュースにもなっており、香織は犯人は同じ大学サークルの人間化もしれないと言う。凶器となった和弓はオーダーメイドで作られた被害者・蟇目自身のものらしい。つまり凶器を持ち出せたのは同じサークルで同じ趣味を持つ人間とも考えられるのだ。

事件の通報者となった上月は捜査から外れる予定だったものの、チームの一員となるよう要請がくる。その理由として、一年前にY県の山中で起きた転落事件の被害者・多幸の自宅金庫にしまわれていた矢と同じ種類のものが今回の殺人事件で使用されていたことが挙げられた。矢は特注品でどこで作られたものなのかは分からないままだという。

多幸は登山用品店を経営する傍ら林道監視員として数々の実績を挙げる山の専門家だった。多幸の転落死は警察が念入りに調べた結果不審な点はなく事故死として処理された。だが当時他殺説も根強かった。同行者のいない多幸の転落場所が人の滅多に通らない山奥だったにも関わらず通報が非常に早かったことが挙げられる。いったんは事故死で落ち着いた事件の被害者が所持していた矢と同種のもので大学生が殺害された。連続殺人事件の可能性を考慮して上月に声がかかったのだ。

伝統武術研究会の代表・鏑鞘華から呼び出された相談を受けた宇佐輝はミドリを呼び出すと、被害者の蟇目が一年前の山中で見つかった遺体の発見者だったという情報を伝える。通報すると長時間警察に拘束されることになるため、蟇目は名前を告げず場所だけ教えて電話を切ったらしい。鞘華は今回の事件について警察だけでなく宇佐輝に頼りたいと言い、蟇目の恋人の存在を明かした。事件の日、蟇目は彼女と待ち合わせしていた。が目の前で恋人が殺され騒ぎになったことで怖くなり逃げ帰った。「次は私」と呟き震えている彼女から相談を受けた鞘華は、一年前の事件について警察から尋ねられた時に彼女のアリバイ工作を引き受けてしまったものの、彼女が本当に一年前に蟇目と一緒に山へ行ったかどうかは聞いても教えて貰えないままだった。

上月達捜査チームは一年前の多幸の死は蟇目によるもので、今回の蟇目の事件は何者かが復讐のために形見の矢を使ったと推理した。また多幸の転落の通報は女性の声だったため、当時蟇目には女性の同行者がいたと考えられる。蟇目の彼女が怪しいがアリバイがあるため張りつくことは難しい。まずは一年前に蟇目の同行者を特定することになった。

編集部を出ようとしたミドリは、ビルの警備員から心当たりはないかと帝都大学の学生証を見せられた。中を確認したが鞘華のものではないため大学に直接連絡するよう言い警備員に返却した。

二兎を追う者はヒントを得る

講演会場の下見に向かったミドリは、なぜ学生たちが講師に宇佐輝を選んだのか疑問に持つ。そもそもなぜ編集部を通さず直接宇佐輝に連絡が取れたのか。どこかから紹介して貰ったのでは?とヘラヘラと答える宇佐輝に攻撃を加えつつ会場で会った鞘華に紹介元を尋ねると、講師を選定したのは蟇目だったという。会場には上月の同僚刑事・雁尾も来ていた。蟇目の彼女・的村紅奈の警護だった。その名前を聞いてミドリは驚く。編集部のあるビルに落ちていたという学生証の持ち主だった。宇佐輝は雁尾から矢の矢羽が最高級品のクマタカの尾羽が使われていたこと、蟇目を殺害したのは和弓の上級者であることを聞くが、警戒しているのか肝心の紅奈からは何も情報を引き出せなかった。

ころりころげた木の根っこ

警察が伝統武術研究会のメンバーに的を絞ったとはいえ、大学以前からの弓道経験者は鞘華と蟇目しかいないうえ鞘華には事件のあった時間は大学で試験を受けていたという強固なアリバイがあった。教授は抜き打ちでテストをすることが多く、あらかじめ解答用紙を用意することは不可能だという。編集長の蜷川と事件について話していたミドリは、学生証を拾ったという警備員が偽物の可能性に気づいた。警察経由で紅奈に確認すると、学生証は気が付いたらなくなっていたのでいつどこで紛失したかは不明だという。

一方、講演会場の下見から帰った宇佐輝は夜行バスで多幸が転落死した山へと向かったものの、パーキングエリアで休憩中、車内に怪しい男を発見し逃げ出した。男も慌てた様子で宇佐輝を追ってくる。宇佐輝は逃げ込んだ山の中で小一時間ほど逃げ回った挙句、追いかけてきた男の正体が探偵だと知る。依頼人は蟇目の恋人の紅奈で、蟇目を殺した犯人捜しを頼んだらしい。探偵は紅奈から預かった学生証を使って怪しい人物を探っているところ、殺人現場にタイミング良く現れた宇佐輝を犯人だと目星をつけ尾行していた。山中で迷子になった2人で事件について話し合ううち、宇佐輝は紅奈が「一年前に山へ行ったこと」ではなく「山へ行った理由」を隠そうとしていることに気づいた。バスの運転手の通報により交番のお巡りさんに発見された宇佐輝は身元の引受けにやってきたミドリとともに、この辺りでクマタカの密猟が行われていると言う話を聞く。

一年前、蟇目は最高級品の矢羽となるクマタカの羽根を目当てに山中に入り、密猟防止のため林道監視員の多幸も山にいた。その後事故で多幸が転落したため、蟇目と同行者は善意で通報した。おそらく蟇目は直接手を下したのではなく、間接的な加害者だったと宇佐輝は考える。多幸はクマタカの巣を荒らした証拠として矢を金庫に保管していた。

多幸と蟇目がつながったものの、では一体誰が蟇目を殺したのかまでは分からない。最有力候補と思われる弓の名手・鞘華には鉄壁のアリバイがあるのだ。インターネットカフェに落ち着き話し合っていると思いがけずあるサイトが開く。ミドリがストローでジュースを飲んでいる姿を見た宇佐輝は、犯人が蟇目を殺害したトリックに気が付いた。

うさぎは餅と嘘をつく

宇佐輝の講演会当日。鞘華も含め伝統武術研究会のメンバー達は、共同主催となったココナッツの編集長・蜷川と最終打ち合わせを行っている。控室に入ったミドリは、いつもヘラヘラと軽い宇佐輝が、事件については頑なに口を噤んでいるのが気になった。宇佐輝によると講演日の今日が勝負の日だという。宇佐輝は一年前に山へ行った蟇目の同行者が紅奈で間違いないのかと疑問を口にした。

警察でも蟇目の同行者は紅奈ではないと考え、上月が密かに本当の同行者を探していた。そして宇佐輝からのアドバイスで見つけ出した。この同行者こそがトリックを使って蟇目を殺害した犯人だった。講演終了後、宇佐輝によってトリックを暴かれ追及された犯人は罪を認めた。

エピローグ かめが寝ている間にゴールしたうさぎ

上月をはじめ警察関係者の前ではオネエ言葉を使わなかった宇佐輝に対し、ミドリは一体いつからオネエ言葉を使うようになったのか問うが、いずれ話してあげるとその場をごまかされた。

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蟇目を殺害した和弓のトリックは、結構難しそうで無理があるのでは?と思ってしまいました。2m近くある弓を持ち歩く時点でけっこう人目を引く気がします。続編以降で宇佐輝がヘラヘラするようになったきっかけの事件が明かされそうですが、読めるといいなと思います。