米澤穂信『インシテミル』あらすじとネタバレ感想

米澤穂信さんの「インシテミル」のあらすじと感想をまとめました。

隔離された地下施設に人々が集められ1週間を過ごすという、いわゆるクローズドサークル物です。特異なのがゲームとして殺人が推奨され、監獄や霊安室が用意されていること。

「そして誰もいなくなった」的な展開になっていくのか……楽しみに読み始めました。

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「インシテミル」書籍概要

「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった―。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。「BOOK」データベースより

  • インシテミル(2007年8月/文藝春秋)
  • インシテミル(2010年6月/文春文庫)
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時給11万2千円のモニターのアルバイトに応募した結城理久彦は、他の参加者とともに地下施設「暗鬼館」で1週間を過ごすことになった。鍵がなく防音のしっかりした個室には、「おもちゃ箱」が置かれていた。開錠に必要なカードキーには施設内でのルール(十戒)が書かれており、主催者からの説明によると人を殺したり犯人を見つければ報酬が何倍にも増え、監獄に入れられたり推理が外れると報酬が激減、死ぬとストップする。

「おもちゃ箱」の中には古今東西のミステリー小説の紹介とともに、その中で使われた凶器が一つ入っていた。理久彦は「火かき棒」だった。

何事もなく無事に過ごすだけで1,800万円が手に入る。男女12人による暗鬼館での1っ週間が始まった。

登場人物など

  • 結城理久彦:大学生。車を買うために応募。凶器は火かき棒(殴殺)
  • 須和名祥子:バイト雑誌を見ている理久彦に声を掛けてきた。凶器はニトロベンゼン(毒殺)
  • 安東吉也:ビームライフル部。リーダー的性格。凶器は縄(絞殺)
  • 大迫雄大:大学生。リーダー格で1週間を無事に過ごせるよう心を砕いている。凶器はマンドリン(撲殺)
  • 若菜恋花:大迫の恋人。凶器は22口径の空気ピストル(銃殺)
  • 箱島雪人:クールで割り切りが良い性格。凶器はスリングショット(撃殺)
  • 釜瀬 丈:大迫にくっついて行動している。凶器は氷のナイフ(刺殺)
  • 渕 佐和子:弁当屋を営む。
  • 関水美夜:刺々しい雰囲気の少女。凶器はニコチン(薬殺)
  • 西野 岳:参加者の中で最も年かさの男。
  • 真木峰夫:ビジュアル系で単独行動が多い。凶器は手斧(惨殺)
  • 岩井壮助:金髪。置かれた状況に最も恐怖している。凶器はボウガン(射殺)
  • ガード:施設内を巡回するロボット。夜の時間帯に出歩き4回目の警告を受けた場合、ガードはその人物を殺害する。参加者はガードを召喚することができ、施設内で暴れている人物の制圧もガードに命じることができる。

あらすじ

地下の暗鬼館へは着替え以外の持ち物は取り上げられた。1日目は何事もなく過ぎ2日目、施設内での殺人ゲームのルールや報酬などが知らされる。だがゲームに参加しなくても高額のバイト代が手に入ることを知り、参加者たちは落ち着いていた。

3日目の朝、西野の遺体が霊安室で発見された。9ミリ弾の銃で撃たれたらしく体には8発の穴が開いていた。強制的にゲームに巻き込まれた参加者たちは、大迫の発案のもと、何か行動する時は必ず3人以上で固まって動くことになった。

夜の時間帯は各自が個室に籠もり部屋から出てはいけない。眠れぬ夜を過ごした4日目の朝、個室同士を結ぶ回廊で真木の遺体が発見された。ボウガンが突き刺さっていた。真木は西野が殺される直前まで一緒に飲んでいた人物であり、疑心暗鬼にかられた岩井によって殺された。「おもちゃ箱」で岩井にあてがわれたのがボウガンだった。理性を失った岩井はガードによって制圧され、監獄に入れられた。取り上げられたボウガンと牧の手斧は、鍵付きの金庫室に放り込まれた。

誰が西野を殺したのか、2手に別れてそれぞれの凶器を調べることになった。理久彦は安藤、須和名、関水の4人で凶器を確認しあった。大迫、若菜、釜瀬、箱島、渕もそれぞれ確認し合ったらしく5人の中に西野を殺した人間はいないと大迫が言った。

夜、巡回するガードの目をかいくぐり、3人一組で見回りをすることになった。最初が大迫・若菜・渕、次が箱島・釜瀬・関水。最後の明け方が結城、安藤、須和名に決まった。

間もなく夜が明けるという頃、ぐるぐると回廊を見回っていた結城たち3人は、霊安室で倒れている大迫と箱島を発見した。霊安室は吊り天井になっており、何者かによって落とされた天井で頭を砕かれたものらしい。辺りは血の海だった。逃げた釜瀬が吊り天井の仕掛けボタンを持っていたが、ラウンジに置いてあったものを見つけただけで本人は何も知らないと言い張る。

西野、大迫、箱島を殺害したのは誰か。残った7人が集まった席で、夜の巡回についての確認が行われた。1組目は何事もなく巡回を終えた。2組目の関水と釜瀬は巡回をしていないと言う。2人とも迎えに来た箱島に対し、巡回への参加を断った。それを聞いた若菜が激昂した。大迫を殺したと隠し持っていた銃を釜瀬に向ける。止める間もなく釜瀬は死に、そのまま若菜も自殺してしまった。

夜、理久彦は個室を抜け出し西野の部屋にいた。枕の下に赤い丸薬を見つけたところで、巡回していたガードに見つかり2回の警告を受け逃げ出した。おかげで収穫があった。

6日目、理久彦は西野殺害の解決を宣言した。ルールによると、解決とは何が起こったのかを明らかにすることではなく、多数決で犯人だと名指しされる人物がいることだった。また探偵と探偵に指名された助手、探偵に犯人だと指摘された人物は多数決に参加できない。理久彦は全員賛成で西野の事件を解決した。だがそれがプライドの高い安東の不興を買った。

関水と組んだ安東が、大迫・箱島殺害の解決を宣言した。吊り天井のスイッチを手にする機会は誰にもあったとし、彼は理久彦を犯人だと指摘した。多数決に参加できるのは、探偵・助手・被告人を除いた渕と須和名の2人。手を挙げたのは渕のみだったが、「半数以上の賛成」というルールが成立し、理久彦は監獄に収監された。

先に監獄にいた岩井を心配していたものの、岩井は怪我もなく元気だった。部屋に設置してあるテレビでラウンジや食堂の様子を見ることができるため、理久彦や安東の「解決」も知っていた。誰にも言わなかったが理久彦は四大ミステリ倶楽部の幹部をやっており、岩井も倶楽部のメンバーだった。ゲームから外れた2人は意外と快適な監獄内で事件について検討し合うが、渕の凶器と吊り天井のボタンの持ち主が分からないままだった。

7日目、テレビ画面の向こうで渕が脱出を目論んでいたことが分かった。暗鬼館には一つだけ秘密の通路が隠されており、脱出に成功した時点でモニターが終了する。あと半日で全日程が終了するが、1分もここにいたくないという。渕はひそかに脱出口を見つけており、安東、関水、須和名も従うことに決めたようだ。その間、監獄で理久彦は計算を続けていた。理久彦はもう一人死ぬと呟いた。何通りもの計算をしても足りないから、大迫と箱島を殺した犯人が死ぬ。

監獄が暗闇に覆われた。抜け道を通り外への扉の前の部屋にたどり着くと、暗鬼館へのエネルギー供給がすべて止まるというルールが発動したものだった。監獄の電子ロックも無効になり、監獄の扉が開くようになった。

まとめ

西野を殺した犯人と、大迫・箱島を殺した犯人は別でした。大迫、箱島を殺した人物はある目的を達成するため殺人ゲームに乗っかったものの、理久彦の計算通り「足りない」ことに気が付き、最後は自らが死ぬことを選びました。

最終的には理久彦の機転により、残った全員が死ぬことなく主催者のいう実験のモニターは終了しました。

後日談として各自が得た報酬額とともに、須和名の目的が暗鬼館同様の「実験」を行うことだったと理久彦に送られてきた招待状から判明しました。

 

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クローズドサークルでの殺人ゲームという手の込んだ仕掛けの中で話が進んでいく特殊設定でした。ところどころでミステリーの様式美に対する挑戦のようなものを感じる一冊でした。

少しずつ設定を変えて実写映画化されているのを、今更ながら知りました。