米澤穂信「古典部」シリーズ第1弾『氷菓』あらすじとネタバレ感想

米澤穂信さんのデビュー作でもある「氷菓」のあらすじと感想をまとめました。

古典部シリーズ第1弾となる一冊です。神山高校の古典部が出している文集のタイトルが何故「氷菓」なのかという疑問から33年前の事件の真相に辿り着くという少しせつなさの残るストーリーでした。

殺人事件などは起こらないので、そういったものが苦手な人でも手に取りやすくおすすめです。

「氷菓」書籍概要

神山高校古典部の4人を中心とした「古典部」シリーズ第1弾。

  • 氷菓(2001年11月/角川スニーカー文庫)
  • 氷菓(2006年/角川文庫)

 

「やらなくていいことならやらない、やらなければいけないことは手短に」がモットーの省エネを掲げている折木奉太郎は、文化部系の部活動がさかんな神山高校に入学後、姉の命令で廃部寸前の「古典部」に入部することになった。

たった一人の部員のつもりが、与えられた教室へ行ってみるとすでに人がいた。奉太郎と同じ新入生の千反田えるだった。彼女は一身上の都合で古典部に入ったのだという。

登場人物

  • 折木奉太郎(おれきほうたろう):何事にも積極的に関わらない省エネ。なりゆきで古典部に入る。
  • 千反田える(ちたんだえる):奉太郎の隣のクラス。名家のお嬢様。古典部部長。
  • 福部里志(ふくべさとし):奉太郎の親友。古典部に入部する。
  • 伊原摩耶花(いばらまやか):里志を追って古典部に入部する。図書委員でもある。
  • 関谷純(せきたにじゅん):えるの伯父。渡航して7年前から行方不明中。

いつの間にか密室になっていた謎

奉太郎が古典部の部室である特別棟4階の地学講義室へ行き、職員室で借りた鍵で入室するとそこには人がいた。同じ新入生の千反田えるだった。一身上の都合で古典部に入ったというえるは、自分が地学講義室に来た時には鍵は掛かっていなかったという。セキュリティーの関係で、鍵を持った人以外には部屋の内側からロックすることができず、えるは鍵を持っていなかった。えるのあとに奉太郎が来るまでの間には3分程度の差しかなく、その間に地学講義室は外から鍵を掛けられ密室になっていたのだ。

話を聞いていた里志が面白そうだと入部を決め古典部はいきなり3人になり、気になるというえるの疑問に応えるため、奉太郎は密室の謎を考えてみることになった。

足元でがたごと音がするのが気になったというえるの言葉で奉太郎はあることに気が付き、無事一件落着となった。

毎週必ず貸し出される本の謎

歴史のある古典部だが1年生ばかりでどういう活動をするのか誰も知らないなか、部長のえるの音頭で文化祭、通称「カンヤ祭」に文集を出すことになった。過去の文集を参考にするため図書室へと行った奉太郎たちは、図書委員の摩耶花から不思議な話を聞かされる。

毎週金曜日の昼休憩中に貸し出され、放課後に返却される本の謎だった。それは大判で厚み、幅ともに相当あり装丁も見事な重厚感あふれる本「神山高校五十年の歩み」だった。借主は毎週違う人間だが、とても数時間で読めるような代物ではない。

摩耶花はもちろん、える、里志も首をひねる中、本からシンナーのような刺激臭がするというえるの言葉によって、奉太郎は貸し出された本の使い道に思い当たった。答えは美術準備室にあった。

壁新聞部部長の謎

里志を追いかけて摩耶花も入部し、古典部は4人になった。古典部の文集が生物講義室の薬品金庫の中に保管されていることが分かりそこへと向かった4人だったが、生物講義室は現在壁新聞部の部室になっていた。

部屋には鍵が掛かっていたが声をかけると人が出てきた。壁新聞部部長の3年生だった。どうやら一人で部屋にいたらしく、文集を探させてほしいという奉太郎たちに難色を示すものの、あまり部屋を引っ掻き回さないことを条件に入室を許可してくれる。生物講義室、準備室ともに探すが文集は見つからない。廊下に置かれていた白い箱、閉め切った部屋、デオドラントに気を遣う部長……あることに気が付いた奉太郎がもっと念入りに探したいというと部長はいきなり怒り出した。

もし文集が見つかったら地学講義室まで持ってきてほしいと依頼した奉太郎に促されて部屋を出た古典部の面々は、数分後、古典部の部室には過去の文集が届いているのに驚く。部長の秘密を知った奉太郎が、少々強引な手を使って部長を動かしたのだった。

ようやく手に入れた文集は、一番古いものが「氷菓 第二号」というタイトルになっていた。古典部と氷菓の関連が見いだせないと首をかしげるなか、えるが33年前の「氷菓 第二号」に行方不明の伯父・関谷純のことが載っていると口にした。

33年前の文集「氷菓」の真実

奉太郎は、えるから古典部に入部した「一身上の都合」について話を聞いていた。彼女には行方不明中の伯父・関谷純がいること。10年前の幼稚園児だったころ、伯父から古典部について色々話を聞いたこと、ある日えるが古典部に関する「何か」を尋ね、その答えに大泣きをしてしまったこと。当時の自分が何にショックを受け泣いたのかを思い出したいというのが古典部に入った理由だということ、だった。

「氷菓 二号」には、33年前に何かが起き関谷が学校を去ったこと、争いや犠牲がありそれは英雄譚ではなかったこと、氷菓と命名したのは関谷だったことなどが読み取れるものの、詳細は一切不明だった。4人は33年前に何が起きたのかを調べ、それらを文集にまとめて発行することに決めた。

全員の意見を持ち寄って検証した結果、奉太郎によって事件は5W1Hにまとめられました。

  • いつ:33年前の6月と10月に
  • どこで:神山高校で
  • 誰が:関谷純をリーダーとした全校生徒が
  • なぜ:生徒活動よりも学力を重視すると校長が方針を変えたため
  • どのように:古典部部長関谷純の英雄的な指導に支えられ
  • 何を:非暴力的で他人数で行う抗議行動を行った

綺麗にまとまったかに見えるが、えるが泣いた理由までは説明できていなかった。その後、「氷菓 二号」で関谷のことを書いた人物が当時の神山高校生だった司書の糸魚川先生であることに気づき、話を聞きに行く。

その中で、古典部の出したまとめがほぼ的を射ていること、抗議活動中に学校の施設である格技場で火事が起き消防活動で半壊してしまったこと。10月の文化祭終了後、見せしめとして関谷が退学処分を受けた事などが語られた。カンヤ祭という名称は、神山高校文化祭が短縮されたものではなかった。

そして関谷の名付けた「氷菓」というタイトルは、アイスクリームのことだと奉太郎は気が付いた。

えるは、園児だった自分が文集を見て「氷菓とは何のことか」と伯父に尋ね、伯父からの解答に生きたまま死ぬのが怖くなって泣いたことを思い出した。

 

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33年前のあたりは、ちょうど学生運動がさかんな時代でした。アイスクリームは、アイス・クリームと読むのが普通ですが、別の文節で区切ることもでき、関谷はその中に自分の思いを込めたのでした。結構壮絶です。

代々古典部は「カンヤ祭」を禁句としてきたそうですが、これからもその伝統は受け継がれていきそうです。

 

ここから始まった奉太郎たちの古典部シリーズは、この後も学生らしい謎や騒動に遭遇しながらも活動を続けていきます。少しずつ関係性が変化したり、進級したりと本の中で時間が経っていきますので、ぜひ最初から順を追って読んでいっていただきたいシリーズです。