米澤穂信『リカーシブル』あらすじとネタバレ感想

米澤穂信さんの「リカーシブル」のあらすじと感想をまとめました。

複雑な家庭環境のハルカが、引っ越し先の町に伝わる「タマナヒメ」について調べるうちに町の秘密に迫っていく…という話です。

人の出入りがなくものすごく閉鎖的な街なら成立しそうな話でした。

「リカーシブル」書籍概要

父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る―。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて地方都市のミステリーに迫る。「BOOK」データベースより

  • リカーシブル(2013年1月/新潮社)
  • リカーシブル(2015年6月/新潮文庫)

あらすじ

母の故郷の坂牧市へと引っ越してきたハルカは、中学校の入学式の日に在原リンカと友達になり、自分が転校生であることを隠したかったものの一目でバレてしまい焦る。ハルカにとって、クラス内で浮かないよう、目立たないよう、いじめられないよう、上手に立ち回ることは重要な問題だった。だがハルカが気にするほどリンカは気にしていないらしく、気軽に町を案内してくれるという。

ハルカには血のつながらない小4の弟・サトルがいた。本当は嫌いなのに母親が仲良くしてねというので、ハルカはサトルの面倒をみる。ハルカは母親の言葉はすべて受け入れることに決めているからだ。

リンカによると坂牧市は3つの町が合併してできたもので、ハルカ達の住む常井町は過疎化が進み商店街から活気が失われつつある地方都市の一つだった。リンカと友人になったおかげでハルカの中学校生活は上々の滑り出しとなった。だが問題はサトルだ。小学校へ向かう道にある橋「報橋」が怖くて渡れないのだという。

また常井町に来たのは初めてだというのに、預言じみたことを口にし始める。ハルカとサトルが商店街のくじ引きにやってきた時だった。女性のバッグを盗んで逃げたバイクの男を追いかけるハルカとリンカ、商店街の会長に、サトルは犯人はパチンコ屋の中におりナイフを持っていると言い、実際そのとおりだった。報橋も太ったおじさんが落ちるのを見たと言っていた。

社会の先生で歴史部顧問の三浦に未来が見える子どもの話について尋ねると、「常井民話考」という本を貸してくれた。江戸時代、朝という少女が常井村の危機を救ったあと身を投げる。朝はこれから村に何が起きるのか、どう解決するのかを知っていて行動を起こしたのだ。村の人々は彼女をタマナヒメの生まれ変わりだと言い信仰した。形態は違うもののサトルもタマナヒメのようにこれから起こることを知っていた。

中学校で河川敷の清掃活動があった。そこで噂話を耳にしたハルカは、リンカに尋ねてみる。常井町に高速道路が通るという話が持ち上がり町が沸いた。だが道路は別のルートを通ることが有力になった。町の人々は水野という権威の先生を招き常井町に有利になるような報告書「水野報告」を完成させた。だが報告書を受け取る前に水野は報橋から落ちて死に、報告書の行方は分からなくなってしまった。町の大人たちは水野報告に賞金を懸けたというものだった。

「常井民話考」を返しにいったハルカは、三浦とタマナヒメについて話し合う。三浦によると朝以外に実在したタマナヒメの話はあるといい、三浦が独自に調べたプリントをくれる。中には朝を入れて4件のタマナヒメの話がまとめられており、直近の5年前のタマナヒメ以外詳細は明らかになっている。共通して常井町に何か大きな出来事が起きた時、タマナヒメが役人やそれに準ずる立場の人の元へお願いに行き、解決したあと自殺をしている。

リンカによると今でも町にタマナヒメはいるが、2か月ごとにある互助会の例会で乾杯の挨拶をする程度だという。リンカに誘われ現在のタマナヒメ役に会うため、ハルカは庚申堂という公民館のような建物へと行く。庚申堂は5年前に火事になり中にいたタマナヒメが焼死し、新しく建てられていた。タマナヒメのユウコもリンカ同様、挨拶くらいしか役目はないと話してくれた。庚申堂の前でリンカと別れて帰宅途中、ハルカはサトルを見つけた。母親と買い物にきたがフラフラとこの辺りまで来てしまったらしい。見覚えがある町並みらしく、このあたりでハルカと遊んだとサトルは言うがハルカにそんな記憶はない。森元という表札のある家に見覚えがあるらしく、サトルは自信がなさそうに、以前この家に住みハルカに似た女性と遊んだと口にした。

報橋から落ちて死んだ水野の事故を調べたハルカは、サトルが報橋で死んだという男の特徴と一致していることを知る。

三浦が報橋のそばで車の事故に遭い入院した。だがクラスメイト達は、三浦が外からきた人間だからとそっけなく代表者が見舞いに行く気配もない。こっそりと三浦の元を訪れたハルカは、三浦から自損事故ではなく誰かに追突されて起きたものだと聞く。追突してきた車にナンバープレートはなかった。また「常井民話考」が図書館などにも一切ないこと、「常井民話考」以降に出された常井の民話を収集した本からタマナヒメの話がなくなっていることなども聞く。

また失踪した父から母宛に手紙が届いた。中身は離婚届だった。母はそれを出すつもりだがハルカが中学を卒業するまでは面倒を見るという。今の家族はハルカの父とサトルの母が再婚して出来た。会社の金を横領して父は失踪し、母は連れ子のハルカも伴って故郷の坂牧市に越してきた。離婚届が出されたら、母とサトルは家族ではなくなってしまう。ヨシエさんとサトルくんの家にハルカが居候させてもらっているという形になる。アルバイトをして家にお金を入れてほしいという母の頼みをハルカは了承した。

翌日は最悪の一日だった。三浦の見舞いに行ったことが知られたのかクラスメイト達がよそよそしくなり、リンカもハルカを待たずさっさと帰宅していく。そしてサトルが帰宅しなかった。母が半狂乱になるかと思ったが、いつも通りのんびりと心配ないと言う。常井町で何が起こっているのか、薄々ハルカは察していた。そしてサトルに気を付けるよう言っておくべきなのに言わなかった。

サトルを取り戻すためハルカは家を出て寄り道をした。目的のものを手に入れると、それとサトルを交換するため、本当のタマナヒメが待つ庚申堂へと向かった。

まとめ

タマナヒメは普段は例会の挨拶をしている程度ですが、常井町に何かが起きた時、窓口役となって折衝する役目を負っていました。そして町は今、全力をあげて5年前に行方が分からなくなった水野報告を探していました。

そのためにハルカの家族は坂牧市で暮らし始め、サトルが利用されていました。三浦の事故も「よそ者」が高速道路に関して動いたと認定されてのものでした。

坂牧市は3つの町が合併されてできたそうですが、常井町のみが今でも閉鎖的な村社会の風習を持ち続けている感じです。町ぐるみで犯罪組織化? 怖いですね。

 

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最初は性格の悪い主人公だなとムカムカしながら読み進めていたのですが、ハルカを取り巻く環境が明らかになるにつれ、ハルカの考えも理解でき逆に応援したくなってきました。

タマナヒメの件は解決しましたが、ハルカ自身が見舞われている問題は問題として立ちはだかったままなので、サトルともども強く生きてほしいところです。