米澤穂信「小市民」シリーズ第3弾『秋期限定栗きんとん事件(下)』あらすじとネタバレ感想

米澤穂信「秋期限定栗きんとん事件(下)」のあらすじと感想をまとめました。

今回で一連の事件に決着が着くのですが、それと同時に復讐をこよなく愛する小佐内ゆきが今回何に対して復讐したのか明かされるのですが、初めて彼女の恐ろしさを実感しました。春、夏の事件ともに復讐理由には納得できるものがあったのですが、今回はちょっとかわいそうになりました。

上巻の感想はこちら。

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ミステリー小説、推理小説のあらすじや感想を中心に書いています。

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「秋期限定栗きんとん事件(下)」書籍概要

ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど…ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ―。「BOOK」データベースより

  • 秋期限定栗きんとん事件(下)(2009年3月/創元推理文庫)

第4章 うたがわしい夏

瓜野は2年生になり新聞部も新体制が整ってきた。コラムの影響で、毎月見向きもされず捨てられていた月報船戸を読む生徒もちらほらと増えている。瓜野は一連の放火事件の資料を部員全員に配ると、次の放火先と思われる場所を全員で見張ることにした。深夜の時間帯、巡回中の瓜野の元にゆきから電話がかかってくる。話をしている最中、突然雑音が入り会話が中断した。列車が立てる轟音だった。ゆきとの会話が終わった後、パトロール中の1年生から電話が入る。放火の知らせだった。1年生は犯人は見ていないという。犯人が残したと思われるあるサインを見つけた瓜野は、消防車がやってくる前に1年生を連れて現場を離れた。

常悟朗は健吾を介して新聞部の一人を紹介してもらう。五日市という瓜野と同学年の生徒だ。常悟朗は自分たちの知り合いが放火をしているかもしれない、犯人を止めて事件を終わらせたいと言い協力を求める。健吾の口添えもあり、瓜野のやり方に疑問を持っている五日市は了解した。常悟朗は瓜野の調べた情報から更に絞り込み、犯人は6年前の防災計画を知っている人間だと限定する。3年生になっても仲丸との付き合いは続いており、たぶん順調だった。

金曜日。10月から毎月1回起きた連続放火だったが、6月は大型台風に襲われ流石に犯人も諦めると思われる。見張りも中止して一人新聞部の部室へと向かった瓜野は、そこにゆきがいるのに驚く。ゆきは瓜野が書いたコラムのミスを指摘すると、新規にオープンしたスイーツ店に誘い部屋を出ていく。瓜野はゆきが忘れていった文庫本を手に取ると、何気なく栞代わりのレシートに目をやり驚く。次の放火現場と思われる地域の本屋のもので、会計日時が放火の前日の深夜になっていた。

常悟朗の計画では6月の放火で犯人をある程度絞り込み、7月の犯行当日に犯人を捕まえる予定だった。だが6月は台風で流れた。待ちの姿勢が気に入らないという常悟朗に、健吾はひそかに警察に事情を聞かれていたことを明かす。健吾は放火場所の予言のタネ明かしはしたもののそれ以外は全て噂で通したらしい。警察は健吾に接触したが記事を書いている瓜野に接触していなかった。つまり警察は瓜野を泳がせているのかもしれない。常悟朗の元に仲丸から呼び出しのメールが入った。仲丸は、常悟朗が1年近く付き合っても何も変わらない、自分が二股をかけていることを知っても何一つ態度が変わらずニコニコしていることを非難し、別れを告げた。常悟朗もあっさりと受け入れて2人の関係が終了すると、翌朝携帯から仲丸の連絡先を削除した。

第5章 真夏の夜

8月。新聞部部室に部員全員と協力者らが集まると、今度こそ放火犯を捕まえると気合を入れる。瓜野はすっかり変わっていた。1年生に仕事を覚えさせるために役割を多めに振ることはあるが、瓜野自身がコラムを書くこと以外の紙の調達、印刷や配布などの雑務をしなくなっていた。代わりにそれらの仕事を請け負ったのが五日市だった。

新聞部の面々らが次の放火予定地を手分けして巡回する一方、常悟朗と健吾もある場所にピンポイントに目星を付け張っていた。健吾との電話の最中、叫び声が上がった。予定より早い時間に放火犯が火をつけたらしい。逃げる犯人を健吾が追いかけていった。常悟朗が放火現場に駆け付けると、木造の小屋のそばにある古新聞が勢いよく燃えていた。119番通報する一方、火気厳禁のポリタンクが並んでいるのを見つけ、どうにかしなければと考える。だが小屋の持ち主は施錠をしっかりとしているらしくどうにもならない。その時、ハンマーを手にしたゆきが現れた。火にあぶられながらも協力して小屋を壊しポリタンクを避難させると、久しぶりに会話を交わす。サイレンの音が近づき解散しようとした時、背後に瓜野が立っているのに気が付いた。瓜野は悲痛な表情でゆきに向かい「やっぱりお前だったんだ」と呟いた。

逃げ出したゆきを追いかけた瓜野は、公園にゆきを追い詰めた。10月からの放火犯はゆきだと指摘すると、彼女の雰囲気が変わる。なぜそう思うのかと問うゆきに対し、瓜野は自分が今までに抱いた疑問の答えにゆきを当てはめると全てが解決することを、一つずつ説明していった。ゆきは瓜野のを説明を更に一つずつ反論し潰していく。最終的に瓜野は考えをひっくり返される。ゆきも放火魔を追っていたのかと問うと、いい答えよと彼女は優しく頷いた。それからゆきが滔々と説明を始めた瓜野の評価を聞き、瓜野は自分がゆきを失望させたことを知る。ゆきの元から去る際、瓜野は放火魔について尋ねる。狐がうろうろしていたから多分今頃捕まっているとゆきは答えた。

ゆきと瓜野の会話を木の陰でこっそり聞いていた常悟朗は、狐と評され姿を現した。瓜野はもういなかった。犯人は健吾が捕まえ、通りがかった人によって警察が呼ばれたようだ。常悟朗は船戸高校の生徒が放火犯だと考え、五日市の協力のもと2度に渡り月報船戸に罠を仕込んでいた。雑務を放棄した瓜野はその罠に気づかず、犯人はまんまと今晩あぶり出され健吾の見守る中放火を行い捕まった。ゆきはゆきで放火犯について考え動いた結果、今晩常悟朗と出会うことになったのだった。

2人はそれぞれの終わった交際について感想を述べあう。常悟朗は仲丸との日々を「糠に釘」といい、ゆきは瓜野のことを「他愛ない」と評した。互いが互いの必要性を感じた2人は、改めて残りの短い期間を一緒にいることを確認しあった。

第6章 ふたたびの秋

連続放火犯が捕まり新聞部の記事もひと段落した。ゆきに誘われ和風喫茶にやってきた常悟朗は、彼女と同じ秋期限定の栗きんとんを注文する。栗きんとんは絶品だった。常悟朗はゆきに栗きんとんとマロングラッセの作り方を教えてもらう。マロングラッセは何度も繰り返しシロップに漬けることで栗自体が甘くなるという。ゆきは瓜野という恋人と一緒にいることで自分も甘くなろうとした。だがマロングラッセ方式は失敗した。

常悟朗は5月を境にゆきの行動が変化し、瓜野にわざとゆきが犯人だと思わせるように動き出したと指摘する。それをゆきの瓜野に対する復讐だと言った常悟朗は、瓜野がゆきに復讐を決意させるような、どんな許せないことをしたのかと問う。ゆきは微笑みながら答えた。

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ラスト一行のゆきのセリフに、初めて怖い子だと思ってしまいました。瓜野にも多少の非がありますが復讐と称して完膚なきまでに叩きのめされるほど酷いことをしたとは思えないのですが……小佐内ゆきの復讐に対する執着心と行動力には目を見張るものがありますね。彼女と互恵関係を結べる常悟朗も只者ではありません。