米澤穂信「小市民」シリーズ第4弾『巴里マカロンの謎』あらすじとネタバレ感想

米澤穂信さんの「巴里マカロンの謎」のあらすじと感想をまとめました。

国名シリーズっぽい短編が集まった第4弾でした。どの話も結論に至るまでの推理が細かくて、短編なので軽く読めるかと思っていたら、結構頭を使う結果となりました。読みごたえは充分です。

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「巴里マカロンの謎」書籍概要

「わたしたちはこれから、新しくオープンしたお店に行ってマカロンを食べます」その店のティー&マカロンセットで注文できるマカロンは三種類。しかし小佐内さんの皿には、あるはずのない四つめのマカロンが乗っていた。誰がなぜ四つめのマカロンを置いたのか?小鳩君は早速思考を巡らし始める…心穏やかで無害で易きに流れる小市民を目指す、あのふたりが帰ってきました! 「BOOK」データベースより

  • 巴里マカロンの謎(2020年1月/創元推理文庫)
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巴里(パリ)マカロンの謎

小佐内ゆきに誘われ、常悟朗は放課後に名古屋へ向かう快速列車の中にいた。ゆきの目的は新規にオープンしたパティシエ・古城春臣の店「パティスリー・コギ・アネックス・ルリコ」の新作マカロン。中学卒業後フランスで修業をした古城は、名古屋市内のホテルで働いたのち家族を残し東京に店を開いた。東京の店は成功し古城の名は不動のものとなった。今回名古屋に新しく店を立ち上げるにあたり、女性的な感性を活かした店にしたいと店長である実力派のパティシエ・田坂瑠璃子の名前を取って店の名前を付けたという。

2人が頼んだのは3種類のマカロンを選ぶことができるティー&マカロンセット。すでに何を食べるのか決めているらしきゆきからパーシモンを頼まれたので、常悟朗は先にパーシモン、バナーヌ、カカオを選んだ。その後注文して席に戻ってきたゆきは、お手拭きがないのを気にして手を洗いに行った。一人で待っている間、先に常悟朗の注文したセットが届く。まもなくゆきの頼んだセットも届いた。ゆきの戻りを待っていると、突然金管楽器の甲高い音楽が鳴り始めた。何事かと振り返ると、向かいのビルの仕掛け時計の人形たちが午後5時を教える演奏を始めたのが分かった。その後手洗いから戻ってきたゆきが足を止める。自分のセットにマカロンが4つあると言った。

ゆきの皿にあるのは、ピスタチオ、マロン、ココナッツパパイヤ、コギ(店の特別フレーバー)の4つ。準備中とされていたコギが店頭に並んでいたことでゆきは注文を悩み、最終的に自分がどの味を頼んだか分からなくなってしまったらしい。増えてしまった4つ目のマカロンについて2人は議論を始めた。

皿自体のすり替えが難しいと考えた2人は、常悟朗が時報の音楽に気を取られた隙に何者かがゆきの皿にマカロンを置いたと考えた。すぐに増えたのがコギだと判明したが、そのコギの中には指輪が入れられていた。この指輪入りマカロンの出どころ、誰がマカロンに指輪の細工をしたのか、そしてなぜゆきの皿に置かれたのか、置いた犯人は誰か……次々に推理を展開していった2人は、容疑者を来店客の3人にまで絞っていった。更に消去法の条件を絞っていかなくてはと言う常悟朗に対し、ゆきはここまでくればもう十分だと言い犯人のいる席へと歩いていった。

 

やられたことに対しては倍以上の仕返しをするのがゆきですが、今回は穏便に済ませたようです。

紐育(ニューヨーク)チーズケーキの謎

常悟朗はゆきに誘われ、日曜日にある中学校の文化祭に付き合うことになった。彼女の目的はお菓子作り同好会のメニューの一つ、ニューヨークチーズケーキだった。パティシエを目指す秋桜(こすもす)が作るケーキで、水を張ったバットにケーキ型を入れて湯煎焼きすることで、しっとりと焼きあがるのが特徴だった。ケーキを堪能した後、2人で校内を回るというゆきと秋桜と別れ、常悟朗は一人で文化祭を見て回ることにする。貰ったパンフレットには様々なイベントが書かれていたが、その中の一つ、柔道部による公開練習試合は中止になっていた。立体迷路を堪能した常悟朗が廊下からグラウンドを見下ろすと、中心にはキャンプファイヤーの火が赤々と燃え、その火に近づいていくゆきと秋桜の姿があった。

何をしているのかと思った時、グラウンドの隅から飛び出してきた学生服の男子生徒が2人に気づかず突進していくのが見えた。衝突寸前お互いの存在に気づきとっさに避けようとしたものの、ゆきは男子生徒に弾き飛ばされ、ぶつかった方もゴロゴロとグラウンドに転がった。急いでキャンプファイヤーへと駆けつけた常悟朗だったが、そこには秋桜一人が茫然と立っていた。ゆきが拉致されたという。

ゆきの手土産のマシュマロをキャンプファイヤーの火であぶろうとした2人だったが、突然男子生徒にぶつかられた。すぐに3人組の男達(生徒)が追いかけてきてその男子生徒は逃げようとしたものの足を痛めたのかすぐに捕まり、殴る蹴るの暴行を受け始めた。逃げていたのは1年生、追いかけてきた3人組は3年生だろうと秋桜は言った。秋桜の制止で暴力は止まったものの、そのうち3人組がこちらにやってきて「CDを出せ」と言い始め、ゆきの鞄の中まで確かめたが見つからず、ゆきを連れて行ってしまったらしい。3人組の目的は秋桜も目撃している1年生が持っていたCDで、1年生はぶつかった時にゆきに預けたと3人組に白状したが、ゆきはCDを知らないと言い実際にどこからもCDは見つかっていない。秋桜は拉致されたと言ったが、実際はゆきは自分の意志で付いて行ったらしいと分かった。つまり、CDはどこに消えたのかというゆきからの謎に常悟朗は挑むことになった。

ゆきが1年生からCDを託され隠したと思われるまでの時間は2分程度。グラウンドには騒ぎのあった関係者以外の人物はおらず、キャンプファイヤーのそばに置かれていたプランターや水を張ったバケツにも隠されてはいなかった。常悟朗はCDが消える前と消えた後、ゆきが何を持っていて何がなくなったのかと問いかけ、ゆきが3人組に連れて行かれる際、常悟朗に充てたと思われるメッセージ「小鳩くんを呼んで」「ケーキがおいしかったか、訊いてね」という言葉をヒントにCDを見つけ出した。

 

CDには3人組が何としてでも隠し通したかったある映像がおさめられていました。

伯林(ベルリン)あげぱんの謎

新聞部のアンケートが集まり、代表で部室へと持っていくことになった常悟朗は、放課後の廊下の窓際に佇み涙をこぼすという小佐内ゆきの珍しい姿を見た。何でもないと去って行くゆきを見送り、新聞部の部室へと到着した常悟朗は、友人の堂島健吾が3人の部員とともに大テーブルを囲んで黙りこくっている場面に遭遇した。テーブルの上には空の白い皿が一つ、相談を持ち掛けてきた健吾によると、皿には元々ベルリーナー・プファンクーヘンというドイツ風のあげぱんが4つあった。あげぱんの中には通常ジャムが入っているが、いくつかにはマスタードを入れてみんなで一斉に食べ、誰にマスタード入りが当たるかを楽しむ遊びがあるという。今回新聞部では近所にオープンしたドイツパンの店に取材をし、実際にそのゲームをやってみて記事を書くことになった。そして4つのあげぱんを4人で一斉に食べ、一つだけ混じっているマスタード入りを引き当てた部員が記事を担当することにしたらしい。だが4人全員が美味しかったと証言した。マスタード入りのあげぱんを食べたのは誰なのか当てて欲しいと健吾は言った。

あげぱんを食べたのは、健吾、みどり、幸子、門地の4人。今回は店の試作品ということで一口大の小さなジャム入りあげぱんが用意され、そのうちの1つにマスタードを追加したらしい。店にあげぱんを受け取りに行きマスタードを入れたのは先輩部員で、パンを持って部室に来たあと帰って行った。あげぱんが用意され食べるまでの経緯を4人から詳しく聞き出した常悟朗は、あげぱんにマスタードを入れたのは家庭科部だと分かり話を聞きに行った。家庭科部員から、実際はマスタードではなく激辛のタバスコを入れたことを聞き出した常悟朗が4人にそのタバスコを一口舐めてもらって反応を確かめると、あまりの激辛ぶりにタバスコ入りあげぱんに当たった人間が食べてないフリをすることができないと知った。つまり4人全員がジャム入りしか食べていないことになる。

その後も推理を重ねた常悟朗たちは、最終的には最初に否定された「あげぱんを食べたのは外部の人間」説に辿り着く。無関係の生徒に激辛タバスコ入りあげぱんを食べさせてしまったと知った健吾たちは慌て始めたが、時すでに遅しだろうと常悟朗は思った。

 

最初から全てのヒントが目の前にあるわけではなく、一つ推理していくごとに新たなヒント(状況証拠)が現れるというパターンでした。犯人当てよりも推理の過程を楽しむ話だと思います。

花府(フィレンツェ)シュークリームの謎

年が明け、ゆきとともに甘味処でしるこを味わっていた常悟朗は、ゆきからパティスリー・コギ・アネックス・ルリコがスイーツに力を入れているミニコミ誌の年末ランキング1位になったことを教えられる。去年までは3年連続でマロニエ・シャンという店が1位だったので短期間での1位獲得は凄いことだった。そんな中、ゆきにパティスリー・コギのオーナー古城春臣の娘・古城秋桜から電話がかかってくる。無実なのに停学になったという内容だった。

年越しの時、クラスの何人かがパーティーをし盛り上がってシャンパンなどを飲んだのがバレて停学になった。そして何故かパーティーに参加しなかった秋桜も担任から停学を言い渡されてしまった。誰かが秋桜もパーティーに参加していたと言ったのだ。隠してあることを知ろうとすれば大抵代償を払うことになる。それでも何が何でも敵の正体を知りたいのかと問うゆきに対し、秋桜は知りたいと即答した。ゆきと常悟朗は秋桜を陥れた犯人を捜すことになった。

停学になったのは秋桜と同じクラスの4人、残る3人は茅津未月、佐多七子、栃野みおで、未月がリーダー格だという。秋桜と3人はほとんど交流がないが一度だけ文化祭の打ち上げでカラオケに行き、みおとはスイーツ作りという共通点があったので仲良くなろうとしたことがあったがうまくいかなかった。未月に話を聞きに行った2人は、秋桜がパーティーに参加していなかったことを確認した。その時に撮ったという写真の中にも秋桜は写っていなかったが、通報の写真にはなぜか秋桜の姿もあったという。

少々強引な手段を使ってゆきが中学校に乗り込み生徒指導の先生から話を聞き出している間、常悟朗は書店で待つことになり、未月の話で気になっていたことを調べるため国語辞典を手に取った。証拠の写真をカラーコピーしてもらったというゆきと合流した常悟朗は、秋桜宅で3人で検証した結果合成写真だと結論づける。合成に使われた秋桜の写真は、ミニコミ誌に掲載されたカウントダウンパーティーに参加していた時の秋桜の写真だと分かる。合成写真をでっちあげ秋桜を停学に追い込んだのは、ミニコミ誌の編集社から写真データを手に入れられる人物、つまりミニコミ誌の編集かカウントダウンパーティー参加者に絞られる。書店で調べた情報から犯人を特定した常悟朗は、秋桜にすぐに編集社に連絡して誰に写真データを送ったのか確認してみるよう言った。

 

カウントダウンパーティーで頬にシュークリームを付けていた秋桜の姿が決め手でした。また犯行の引き金になったのもシュークリームだったようです。

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主人公は一人称で話が進んでいく常悟朗だと思うのですが、今回は特にゆきの活躍が目立った一冊でした。